夢のいろ

　昔、ちょうどいま、私の子供と私が同じ年の頃。三十年前くらい。その時は私は子供で、近所の友人に「夢をみる？」と質問した事がある。そしたら四人くらい全員が「みる」と答えた。中には、「夢ってモノクロ」という人もいた。不思議です。夢って、よく考えたら映像に移して比較するなんて一般人はとてもできないですから、他人と自分の夢の違いなんて、想像するしかなく、不思議で不思議で仕方ありません。一番身近にあるとても不思議な世界の入り口だと思います。

よく見る夢

　夫に「私は物心ついたころから、ずっと数か月に一度くらいの感覚で定期的に恐ろしい宇宙人とかお化けとか恐竜に追いかけられる夢を見る」と話したら、夫も「ゴジラに追いかけられる夢はよく見る」と言っていた。現代人は何かに追いかけられる夢をよく見るらしいです。夢くらい楽しい夢みたいですけどね。

夢のおわり

　それで、追いかけられる夢のパターンとして、いつも怖くて怖くて目が覚める。何の救いもなく、解決もなく、追いかけられ死の実感を感じて恐怖で全力で逃げ続け…というところで目が覚める。起きたら最悪な気分。という目覚め方をしていた。そういう夢を見たからといって、まぁ小さい頃からずっとそうだったので、私は特に何をするでもなく、ああまたか。という感じで生きてた。

ある日のお盆直後の夢

　そしたら、この前お盆があってお盆があると仏壇と親しくなる。仏壇やお坊様やらの事を考える。その直後の夜だった。その時私はまたいつものように、半身が獣という自分の想像力を呪いたい怖い何かに追いかけられる夢を見ていた。怖い怖いとなすすべなく逃げていたら、夢の中にお坊様の集団がやってきて「南無阿弥陀仏」と唱えながら、何かよくわからない怖いものをやっつけてくれるという夢を見た。夢の中で私は、えもいわれぬ安心感を感じて、目が覚めた。

目が覚めて、ビックリした。なぜかというと、なんだか自分のみた夢って、いかにも信仰心が高い人が、心の拠り所がある人がみる夢のようで。自分にはそんなもの全く無いぞ、と思っていたのに、私の夢の中にでてくるヒーローはお坊様でした。衝撃な体験で、特に何が驚きだったかというと、常に恐怖だった夢に、安心感というものが訪れたからですよ。

という感じの事を、夫に相談してみたら「まぁ、お盆直後だったから、影響受けたんでしょうね」と冷静に諭された。そうだよね、と思った。だって私に信仰心とか、怖いものをお坊様がやっつけてくれるというような概念は存在してないような気がしますから。でも面白いのは、信仰心が無いのに、信仰してないのに、まったくお経を心の拠り所にしてるでもなんでもないのに、自分は夢で、とても「よきもの」の象徴として、お坊様が怖い何か「あしきもの」と戦っているという構図を脳で構築したんだ、と考えました。そう考えると、何だかとても不思議で仕方ありません。これはいったいどういう事なんだろう？と。そういう構図を私は無意識に脳で整理整頓しているという事なんでしょうか…？なんでしょうか。まったくわかりません。でも、一つ確かなことは、私はその夢の中で、今まで三四十年生きてて一度も体感できなかった、「怖いお化けから逃げきれた安心感」というものを初めて体験できたんです。そこに私の一番の驚きポイントがあって、私はようやく安心した夢をみる体質になってきたのかな～と、なんだか何か病的な自分のどこか病巣的なものが、癒えているようなのかもしれない、という気がしてきたんですね。それがいいなと思いました。でもそのキッカケというか、その「よいもの」の象徴として脳が夢でみせたものが、「南無阿弥陀仏」と唱えるお坊様だったんですよね…。なんの…信仰心も…無い人が見る夢としては、理想的な宗教家の見る夢みたいです。なんの修行とかもしてないのに。

夢は、日常生活の影響を受けて

　仕事ばかりしている人が、「夢の中でも仕事する夢みてた～」とかよく聞きます。日常の生活で体験した事が、何か影響して夢って見るのだと私はそう感じます。私の場合は、お盆直後だったから、仏教家が登場する夢をみたんだと思いました。夫にそういうと、夫も「そうだろうね」と言ってました。とても「お前は仏心があるからね」とか「信仰心があるからね」とは言いませんでした(笑)単純に、お盆直後だったから、です。

子供が夜中に

　子供に「夢ってみる？」と聞いたら、「わかんない」と言っていた。まぁそうだよね。と思った。この前、深夜に目が覚めて、眠る子供の隣でうとうとしていたら、真夜中に子供がいきなり「フハハハっ」と笑って心臓止まるかとびっくりした。たぶん、とてつもなく楽しい夢を見て、夢の中で笑っていたんだと思う。そういう夢って、子供の時よく私も見たような気がする。そして自分の声で起きるとかいうやつ。子供のそういうのを見て、なんだかほほえましかった。楽しい夢が続くといいねと思いました。大人になって、夢にお坊様集団がやってきてくれないと安心感を得られない体質の私みたいに、ならないで欲しいと思います。どうか健やかに。