サヨナラの前に、手を振ってくれ
- カテゴリ:日記
- 2024/09/06 17:44:08
14時ごろ。
仕事が一段落して。
横で寝ている犬くんを一瞥してから、スクーターの鍵を持って玄関へ向かう。
犬くんが、「えっ、どっかいっちゃうの?」と目を真ん丸くして、靴を履く私を見つめる。
すぐに戻るよ
でも、今のわたしには、その言葉の確からしさに、自身はないのかもしれない。
いまから1分後に、わたしはもう犬くんのいるこの場所に、戻ることが出来なくなっているのかもしれない。
スターターの壊れた原付スクーターをキックで始動し、そしていつもとは反対方向、家の前の坂道を下っていく。
時々、犬くんが夜の散歩コースに選ぶ道。
何度か道を折れ、そして細い下り坂の途中。
坂道ばかりのこのあたり。少し高いところに建つ青いアパートの擁壁の下。
ここに、いつもホンダのGB250が停まっていた。
見上げれば、擁壁の上にある柵には、バイクに掛けられていたカバーが揺れている。具体的にどの部屋なのかまで知らないけれど、洗濯物が干しっぱなしの、あの部屋なのだろうか。
しばし彼の残影を眺めてから、再びスクーターを走らせる。
そうだ。これじゃなくて、いつもの250㏄のバイクで来るべきだった。
とうとう乗せてやれなかった、あのバイクで。
少し広い道に出る。
幹線道路の、一本裏の通り。
彼が走って来た方は、おおよそ真っすぐの道が続き、そしてここで右に曲がっていく。彼の側からは、このカーブの先は必ずしも見通しの良い場所ではなく、そしてカーブの入り口の左側からは、幹線道路側からの車が意外と頻繁に合流してくる。以前に私も、車でヒヤリとしたことのある、あまり通りたくない場所。
しかし、こちら側から山を越えて我が家の方に向かう時に、一番よく使う抜け道ルートであり、そして我が家の近所に住む彼にとっても同様の道であったはず。
道路に残る、バイクが路上を滑って行った痕跡。
その跡を目で追うと、カーブのかなりイン側をかすめるように走ったことが想定できる。なぜそんなにカーブ内側に寄ったのか。
その時の時刻は、午前3時過ぎ。
ハードブレーキによるタイヤ痕は、見られない。
バイクが路面を削り取った擦れ傷も浅く少ない。
激しく転倒したというよりは、おそらくほぼブレーキもかけないままタイヤがスライドし、そのまま滑るように横倒しになったバイクと共に、その流れていく先にあった鉄柱に激突した、そんな感じだろうと思う。
眠気にまどろみながらの運転で、目の前のカーブに気がつくのが遅れ、あわてて右に回転しすぎて、バランスを崩して転倒したのか。しかし、タイヤが滑るほどのコーナーではない。
そして、コーナーが迫るその時に、ノーブレーキというのはあり得るのか。
冷静な状態であれば、ほぼノーブレーキでかわすことは、むしろあり得る。
しかし、唐突にコーナーが目の前に迫ったら、反射的にフルブレーキをかけるのではないか。
時間帯と場所を考えると、幹線道路側から突然に新聞配達のバイクか何かが飛び出してきて、それを避けるために転倒したという想像もした。
実際、左からの飛び出しに対してコーナー右内側に急転回し、しかし転回が急すぎて前輪が極度のセルフステア状態になり、それがつっかえ棒になり反対側に向かって振り出され、前につんのめるように転倒したバイクから放り出された状況も考えられる。路面の状況からすると、むしろその想定の方が自然かもしれない。
バイクと当人が激突したらしい鉄柱の傷は、250㏄のバイクがそれなりの速度で突っ込んだにしてはあっさりとしていて、バイク自体が高速で突っ込んだというようには感じない。そういう意味でも、この想定は現実味がある気がする。
しかし、現場の目の前の店舗の防犯カメラには、単独事故と思われる映像が映っていたという話もある。
なんだろう。
猫でも避けたのか。
あるいは、ただの居眠りなのか。
酒が入っていたのかもね。
まあ、いいさ。
理由や原因はどうであれ、もう彼があのアポートの部屋に戻ることはない。その事実は、変わらない。
再び、彼のアパートの前を通り、家に帰る。
ここ数日の雨天が嘘のように、真っ青に晴れ渡った空を背に、彼の生きていた部屋が、逆光の太陽で薄く影になりながら佇み、バイクのカバーが風に揺れている。
ここを、犬の散歩をしながら歩くたびに、君のことを思い出すことになる。
でも、路肩に停めてある君のバイクにこっそりと跨っていた、あの時間を、確かに思いだせるけれど、もう二度と感じることは出来ない。
もうそこに、君のGB250が戻ることは、二度とない。
今晩、近所のジムのプールに行く。
すぐそばだから、いつもは歩きか自転車だけど、今日は遠回りをしてバイクで行くよ。君の部屋の前を通って。
いちど停まって、一回だけエンジンを空ぶかしする。
夜だからね、何度もやったら近所迷惑だろ?
だから、すぐに窓から手を振ってくれよ。
そしたらそれで、さようなら。
そうですね。バイクも車も乗ったけど、やっぱり違いますね。
丸裸である危険とのトレードが賢いのかと言われれば、ものの道理としては馬鹿でしょうね。
まあ、明日は我が身です。
また気が向いたら、いらしてください。
稀に行き来をする、このやんわりとした関係を続けて頂ければ、幸いですw
バイク、一度タンデムで(←表現として正しいのか、分からないのですが)乗せて貰ったことがあるだけです^^。
路面の近さ、風を切る、なにより「エンジンにまたがる」感じ、車とは別モノだと五感で会得(←誤用)しました^^。
ニコタでは、「書きたいように or 書きたいことを」書いて良いのではないでしょうか^^。
まぁ、通告(?)されて運営さんから、最悪「ニコタ所払い」の刑を喰らうこともあるハズなので、何でもアリではないでしょうが^^。
私は「読み逃げ」が多いのですが、お許し頂けたら幸いです^^。
ブログ(日記)を介しての交流は個人的には(チャット等より)性に合っている気がするのですが、近年「キラキラ」を獲る為10分inするのも「しんどい」日が増えてきまして、アタマも回っていない、そんな時はアブなくて人様の「思い」にコンタクトは出来ないのです^^;
日記というより、自分の心の整理のための独り言でした。
なんか数日前も、仕事ネタでおんなじことを書いた気もするけど。。。
私の独り言につきあわせてしまい、申し訳ありません。
意識過剰なのかもしれません。
今日もなんだかんだで彼の最後の場所を4,5回くらい通りました。生活上の必須ルートなので。
でも、もう心も変にザワつかないでいられます。
そこまで深い親交があったわけではないけれど。
もしかしら、周囲も「あいつそこまで親しくなかったような気もするけど、なんであんなにこだわってるの?」と不信に思っているかもしれない。でも、それは私個人の思い入れの問題なので。
>みなさま
こんな感じですが、もしも気が向くのであれば、また来てください。
僕は、いつもこうやってくだらないことで周りから人がいなくなるんだ。