Nicotto Town


モリバランノスケ


日田の小蝶

小蝶とクモ吉は、天ヶ瀬温泉のHotelと宿が立ち並ぶ、球磨川の縁にいる。このところの雨で、水量は多い。ゆったりと流れる川面を見下ろすように、クスノキの枯木が息づく。二人はその枝上で、一休みている所だ。

実は、彼等は、今朝早くに、銀河Expressに乗って
、日田市にやって来た。枯木クスノキの、この場所が、日田駅である。

蝶 (おはよう御座います。お世話になります。
  今朝着いた時、まだお休みかなと?)
楠 (おはよう!。いかにも、今起きた所だ)
蝶 (良い所ですね!。吹き抜ける川風が素敵)
楠 (やっとこさ、梅雨が明けたのだろうか?)
蝶 (私は小蝶、こちらはクモ吉と申します)

少し、昇りかけた太陽が、球磨川の川面をキラキラと照り返す。そこから、朝霧がモヤの如くにゆらゆらと揺れながら、川の流れに逆らうかの様に湧いてくる。小蝶とクモ吉は、規則的に響く水の音に耳を傾けながら、身も心も風景と一体となったかのような自分を感じている。
それは、没我の状態の様な感覚であろうか?。

二人は、あたりの雰囲気を深く味わいなから、何やら言葉を交わしている。

吉 (何処で、Breakfastを取りましょうか?)
蝶 (そう言えば、先日、この街の古民家カフェ
  が、夢に出て来たの。そこで食べない?)
吉 (夢の話しですか!。本当に実在するの?)

枯木クスノキは、二人の話を聴いていたのか、
会話に割って入った。 

楠 (そのカフェなら、日田の旧市街に在るよ。
  常連客に案内させようか?)

と、いうが早いか、自分の若葉を使い、ピーと口笛を吹いた。それを合図に現れたのは、土佐犬の(トサオ)である。

枯木クスノキは、トサオに、(この二人を、古民家カフェにお連れしなさい)と、話す。

ト (クモ吉さんは、私の背中に乗って下さい。
  小蝶さんは、空中を飛ぶか、背中に乗るか
  お好きな様に。ゆっくりと、歩きますから)

川沿いの道を、周りの風景を楽しみながら、歩みを進める。トサオは、とある場所で、足を止めた。天ヶ瀬の源泉を利用した、足湯が在る。

ト (此処で小休止し。足湯を楽しみましょう)

三人は、夫々の方法で、足を中に入れて温泉の感触を楽しむ。頭上の木の葉を、サラサラと音を響かせながら、微風が通り過ぎる。小蝶は、
(気持ちが良いですね)と、呟く。クモ吉も、(今まで味わった中で最高ランク。泉質が実に良い)
と、満足げな様子。トサオも、(二人を誘った甲斐がありました)と、彼等に、語り掛けている。

明治大正の古い街並みが保存された旧市街、蔵を利用した古民家カフェに辿り着く。トサオが、目で二人に合図して、静かにドアを開く。
小蝶は驚く。中の造作が、夢の中とソックリ。
カウンター.、椅子、テーブル、・・・・・・。

店内に流れる程良い音量のBGM。メロディーは夢の中と異なり、Classic(モーッアルトのクラリネット協奏曲)。客は誰もいない。小蝶は、カウンターのほぼ真ん中に座った。左にクモ吉。右にトサオ。店主は、(ようこそ!)と明るい声で三人を迎えた。それから、トサオに向かって、(今日は、お友達も一緒?)と、言葉を掛ける。

トサオは、(先程、枯木クスノキさんに言われ、お客さんを案内して来たのです)と、彼等を紹介する。小蝶はメニユーに目を通す。マダムは、(この店のオススメは、私の主人が栽培している、国産コーヒー、と関連する品々)と説明。

そして、小蝶には、(コーヒーの花から採れた蜂蜜はいかが!)と。又、クモ吉には、(コーヒーの皮の粉末と日田天然水のブレンドはいかが!)と勧める。トサオには、(貴方は、何時ものコーヒーの皮のスナックで良いのね)と、話し掛ける。

3人は、進められをBreakfastを、たのしんでいると、マダムが、(この後、私の自宅に来ませんか?)と、誘う。クモ吉が、(お店はどうするのです?)と、心配そうに、話し掛ける。それに対し、マダムは心配なし、と言う表情で説明。

○元々、今日は定休日。先程、枯木クスノキさんから連絡が入り、店を開けて、貴方がたを待っていたの○ 

マダムの愛車、クライスラーのJEEPが走り出す。
球磨川を挟んで、天ヶ瀬温泉の反対側は、丘陵地帯に成っている。車は、曲線カーブを描く様に、丘を登り始めた。丘の上は、平地に成っており、耕作地が拡がる。農業ハウスが点在・。

マダムは、あるハウスの前に車を止めると、彼等に語り掛ける。

○ここは、主人が、国産コー匕ーを栽培しているハウス。もともとは、薔薇を育て出荷するHOUSEでした。五年ほど前から始めているの○

車は、それから、Familyの生活するログハウスの前に進み、止まる。

先ず、マダムは、自慢の庭を案内する。南側の端には、岩壁から僅かな湧き水が染み出している。それが溜まり、小さな池が。そこからは、庭の端に在る、水路を流れる構造だ。庭の広さは、約三百坪程。様々な樹木達、桜、栗、柿、コブシ、ザクロ、楓、イチョウ、等などが息づいている。マダムは、彼等と、親しげに言葉を。

それから、ログハウスのドアを開き、小蝶、クモ吉を、招き入れた。トサオは、Familyの一員。竹製椅子に、ユッタリと座っている人物がいる。一心不乱に文章を書いていた彼は、顔を上げた。マダムは、(主人は、文章を書くのが趣味なの)と言い、彼等に光様を。そして、(読谷村から来た、小蝶さんとクモ吉さん)と、紹介した。

小蝶の光様への質問を皮切りに、二人の会話が始まった。

蝶 (書いておられるのは、小説ですか?)
光 (そうですよ。時代小説です)
蝶 (それは、いつ頃の話ですか?)
光 (戦国時代の終わり頃の話です)
蝶 (テーマは、なんですか?)

それに対し、光様は、次の様に返答する。

○テーマは、ズバリ、言葉。時代は、問題ではなく、何時でも良い。たまたま、今書いているのが、戦国時代だが。

私は、子供の頃から、感動を、文章にする事が、好きだった。しかし、偶然(?)そうなった訳で、その方法は、絵、詩、歌、でも良かった。

所で、我々は何に付いて、感動しているのだろうか?。美、風景、音、響き、香り・・・・。

更に言えば、我々の中の、どの自分が、そう感じているのだろうか?。

私は、心の深い処で、確りと感じたい。それは
、本当の自分自身が、感じている事を、意味する。それを表現するのに、一番適切な言葉。その巡り合いは、真実の自分自身と、コトバの合体を意味する。生きているのはコトバなのだ○

光様は、ここまで話すと、しばし黙り込んだ。そして、(話が、クドくなってしまったようだ。申し訳ない)と、独り言を呟いた。

小蝶は、(私には、難しくて良く分からない。でも、貴方が、今書いてる、歴史小説の触りの部分だけでも聞きたいですね)と。切り出す。

光様は、話し始める。

○時は、戦国時代末期。所は、ここ豊後の国。風雲急を告げる時代の変革期。この地から、メキシコに渡らざるを得なかった少年がいた。現地の公文書館の古文書には、その記録が残されている。彼は、奴隷として連れてこられたと○

小蝶は、その先も聞きたそう。が、コトバが大事、との光様の考えを想い、押し黙った。




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