Nicotto Town


モリバランノスケ


墓標

今朝も、気持ちの良い、天に抜けるような青空が拡がる。雲一つない。しかも、風も無く穏やかな日和である。私共夫婦は、いつもの様に、お蝶、チャム、カクタス、と一緒に、語らいながら、楽しいBreakfastの時間を過ごしている。

お蝶は、昨日の私との問答に満足したのか、大の仲良し、サボテンのカクタス君と、何やら、ヒソヒソと、話をしている。その表情は、明るく屈託ない。彼女に対する、私の返答が、ひょっとしたら心を傷つけたのではないだろうか、との心配は、杞憂に終わったようである。私はヨカッタヨカッタと、胸を、撫で下ろした。

そういえば、と、私は自問自答している。あれはいつの事だったろうか?。お蝶と、この初夏(五月)に、彼女の命が尽きたあとについて、話した事がある。お蝶は、(私のお墓は、どのように、お考えですか?)と、聞いてきたのである。

私は、(お蝶が、尊敬して止まない、老クスノキの下が、良いのではないだろうか)と、述べた。
それに対し、お蝶は、さも真剣な眼差しを私に向けると、(私の最後のお願いと思召し聞き届けていただけますか?。私の亡骸は、サボテンのカクタス君の側、鉢の土を少しホッテ、そこに埋めていただけますか?)、と、懇願したのだ。

私は、あの会話、一部始終を思い返している。
今、お蝶とカクタスの、仲睦まじい光景を目にして、あの望みは、彼女の心からの願いだったのだな、と、合点がいった。私は、(必ずそうするからね)と、心に誓ったのである。お蝶は、今私が、そのことを思っているとは知らずに、私の方を見る。私は、目で、<OK>と合図した。




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.