Nicotto Town


モリバランノスケ


恋路そのⅢ

お蝶は、疲れたのか、一時の沈黙。
待っていたかの様に、ウサコが話し出した。
(素敵なお話。私も、こんな恋をしてみたい!)
ピョン太が、冷やかすように言葉を掛ける。
(貴方には、ウサオが居るじゃないか!)

温かい空気のなかで、お蝶が、話しはじめた。
(ここまで、聞いて頂き有難う。でも、先があるのです。重要な、大事な話が、残っているの)

お蝶は、奥に秘められた強い気持を落ち着かせるかのように、静かな語り口で、語り出した。

翌朝も、晴天でした。しかも無風。私達蝶には絶好の移動日和。行く目的地。それは、札幌。
それ迄の私、日本海沿岸ルート。でも、光様は太平洋(内浦湾)ルートを、使われていたの。私は迷うことなく、彼に従いました。

札幌へは7日程の旅。見るもの、聞くものが、初めて。長万部迄は、同じルート。そこからは、本当に新鮮なtravelになった。伊達、稀府、室蘭、白老、苫小牧、沼ノ端、遠浅、千歳・・
色々。特に、沼ノ端遠浅間、ウトナイ湖!!。

札幌到着は、お昼前後に。私は、光様に従い、彼の、お気に入り、円山公園へ。北海道の春、本州に比べると、訪れが遅い。その為、一挙に来る。樹木達の葉と花は、ほぼ同時に、開く。
エゾ彼岸桜、又、街の花、ライラックが満開。
私達は、心ゆくまで、彼等の蜜を頂きました。
そして、素敵な香りに包まれて昼寝しました。

私達の行きたい場所。ほぼ共通していました。
植物園、大通公園、ポプラ並木、羊ケ丘公園、藻岩山公園、等など。共に、花と緑が豊かな場所で、共に、懐かしい思い出が詰まっていた。
でも、その夜、泊まる場所だけは、私の希望で決めさせていただきした。それは、光様なら、必ずや、満足して下さると、信じていたから。

そこは、私が、札幌に来て滞在する時、必ず、訪れる人物の夫妻が住んでいる、ログハウス。
場所は、札幌奥座敷、定山渓温泉のすこし先。
彼等はそこに定住して、今風(IT関連)の仕事を。
趣味に、温泉熱を利用して、農業用ハウスで、コーヒー、バナナ、薔薇等などを育てている。

私は、去年も、訪れていた。しかも、今年は、彼と一緒だったので、私達の訪問を、大歓迎。
光様も、夫妻の人柄にスッカリ魅入られ、結局夏の間、そこで過ごしてしまったの。それは、とても意味のある、正に夢の様な一時でした。

ログハウスの周り。森の中には、エゾ彼岸桜、ライラックが満開。この時とばかりに、咲き誇っていた。だから、私達の、蜜を頂く食事は、毎日が、贅沢三昧。赤、白、橙色の花で溢れた薔薇ハウス。私達は、その中を踊り明かした。

私達は、バラハウスの中でも蜜を頂きました。
ある時、光様が、その中で、私に、うたを歌ってくださいました。それは、(百万本のバラ)。

歌のモデル。ジョ-ージアに実在した画家。描けども描けども売れない。一枚の絵と引き換えに、食事をさせてもらう様な、貧乏画家。ある時、窓から見かけた、旅の踊り娘に一目惚れ。
なけなしのお金で、百万本のバラを買って、贈ろうとする。が、彼女は、既にその街を去っていた。彼は、総てを失う。ホントに悲しい話。

だけど、私にも、とても悲しい事が起きたの。
(光様)が、私にその歌をプレゼントして下さった直後に、私の目の前で、(急死)なさったのです。

何故、どうしてって、キカナイデ!。

二度と思い出したくない。
だから、心の底深く、封印しているのです。


ここまでを、聞いていた者たちは、一言も声を発せずに、押し黙ったままだ。重苦しく哀しい沈黙が、周りを雰囲気を支配している。グットこらえて、苦しい胸の内を話してくれたお蝶。その瞳から大粒の涙がハラハラと流れていた。




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