Nicotto Town



満月の夜に【2】フルムーントーク【終】

夜空に浮かぶ白銀の満月。ウェルカム平原にて。今、そこに居るのは マリアとミカルの二人だけ。

「マリア、これから私の身に『あること』が起きる。あなたにも、それに立ち会ってほしいの…」
そう言ってるミカルの姿は、苦しそうであり どこか悩ましくもあった。
「ミカルさん、大丈夫ですかぁ?どこか痛いんですかぁ?」
「そろそろ始まるわ…!マリア、少し離れてて…!」
ミカルが腕を交差してうずくまると、月の光が降り注ぎ スポットライトのようにミカルを照らした。
ミカルの身体が 宙に浮き始める。ミカルは 目を閉じながら、大きく背中を反らす。
その光景は、まるでバレリーナのように美しく幻想的だった。
「ああっ!」
ミカルの呻き声と共に、ミカルの背中に 夢魔の翼が生えた!
それと同時に、ミカルの衣服が 黒皮ボンデージでハイレグのセクシーな衣装に 様変わりした!
月の光が ゆっくりと消えていく…。ミカルが 人間からサキュバスに変身したのを 見届けたかのように。
サキュバスになったミカルは ふわりと地面に舞い降りた。

「いつ見ても 美しく扇情的な光景だね…、ミカルがサキュバスになるのは…。
キミもそう思うだろ?マリア…」
「ロキさん!?」
気がつくと、ロキがすぐ横にいたので マリアは ビックリした。
「ロ…キ…!」ミカルは、その場にへたりこんで 苦しそうに息をしている。
「ミカルさん!? 待って!今、気付け薬を…!」
マリアは、エプロンドレスの下から救急箱を取り出そうとした。
「気付け薬よりもっといいものがあるぞ。それは「私」だ。私は そのために来た」
「どういうことですかぁ?」
「我慢することないんだぞ?ミカル…自分の中から湧き出る欲求に 素直に従うだけでいいんだ…」
「いや…っ!来ないで…っ!」
涙目だが色っぽい表情をしているミカルは、首を横に振るので精一杯だった。
「ほら、欲しいんだろ?男が…!欲しくて欲しくて たまらないんだろ?」
ロキは、色気をありったけ 声に乗せて ミカルの耳元で甘く囁いた。
「っ!!」
ミカルは、ロキの甘い囁きに敏感に反応して ビクンッと身を震わせた。
サキュバス特有の欲求に じっと耐え続けているミカルの健気な姿が、ロキには たまらないようだ。
「男を知らない純真なサキュバス…。満月の夜限定なのが また そそられるじゃないか…」
「それじゃあ、ミカルさんがサキュバスになるのは、満月の夜だけってことですかぁ?」
「だから…っ、満月の夜になると…っ 必ず…っ ロキが…来るの…っ」
ミカルは、自身の内側から湧き上がってくる快楽に 抗いながら喘ぎながら 懸命に言葉を紡ぐ。
「私はただ ミカルを慰めてやりたいだけなのに…いつも いい所でユミコに邪魔されるんだよな」
「ロキさん、もっと奥さんを ユミコさんを大事にした方がいいですよぉ~」
「そうだよ…っ、言われているうちが花…だよ…っ」
「そんな生意気なこと言われると、ますますなだめてやりたくなるなぁ…ミカル」
「ロキさん、ダメですぅ~!ミカルさん、嫌がってるじゃないですか!」
マリアが、ミカルとロキの間に 割って入った!
「嫌がってる?ミカルが今どんな状態なのか キミはまだ分かってないようだな、マリア…!」
「マリア!! ロキの目を見ちゃダメ…っ!」
時すでに遅し。ロキの瞳術にかかったマリアの瞳が、情欲のピンク色に染まる。
「何だか…すごく ヘンな気持ち、ですぅ~。モヤモヤしてムラムラしますぅ~」
マリアは、ロキの瞳の魔力で 強制的にその気にさせられていた。

「この世界に生きとし生ける者は、誰しも 多かれ少なかれ 月の影響を受けている。
特に、マカマカイの者は 月の影響を とても強く受ける。月齢に左右されやすい。この私も例外ではない。
最も危険なのは、そう ちょうど今。満月の時でな。興奮しやすくなったり、自我を失って暴れたり…。
サキュバスの場合は、少し特殊でな…ものすごく 男が欲しくなるのさ。
ミカルは、満月と新月の夜以外は 人間だ。
だからかな?満月の影響が 母親のサキュバスの血の影響が 特別強く出る…!
講義はこれで終わりだ。今は時間が惜しい。さっそく、キミたち二人で楽しむとしよう…!
夜が明けるまで、何度でも…!」
ロキは ひとしきり話した後、されるがままの状態待ちのマリアとミカルの方へと歩を進める。
その時だった!どこからともなく、フルートの音色が聞こえる…!
「!?、…ブラン、さん…?」
マリアは、ロキの瞳術から解放されたが、今度はブランの魅惑の笛の音の虜になり、瞳の色が薄紫色になった。
ブランは、笛の音でマリアとミカルを自分の方へと引き寄せ、ロキから二人を引き離した。

「大丈夫か?マリア、ミカル」
「はいっ、ブランさん!ありがとうございますぅ~!」「ブラン…っ、どうして、ここに…っ!?」
「何だか寝付けなくて 夜風に当たろうとしたら、キミたち二人を事務所の外で見かけてね…。
なるほどな。満月の夜 サキュバスになるたびに、ロキに迫られちゃあ マカマカイに居たくないよな」
ブランは、サキュバスになったミカルの姿を見て 大体の察しがついたようだ。
「複数の女を一度に虜に出来る笛の音、羨ましい限りだよ ブラン・ヨーク」
「キミは、相変わらず強引な手段を使っては 女を泣かせているみたいだな ロキ・ミザール・アルコル」
「知り合い…?」
「マカマカイの名門のお家同士で お付き合いがあったみたいですぅ~。
それと、ブランさんとロキさんは ナンパ師仲間らしいですぅ~」
「しばらく見ないうちに、お前も随分 軟弱になったよなぁ~ ブラン。
マリアにかけられた言葉ひとつで ナンパをやめるなどと…」
「マリアのおかげで 目が覚めただけのことだ。それに…」
ブランは マリアを見やる。
(あの時、浜辺でマリアに助けてもらった時。体だけでなく、心も救われたんだよ…)
「ブランさん?」
ブランは、マリアの頭を優しく撫でて 笑顔を送る。マリアも 笑顔で返す。
「何 ちょっといい雰囲気 醸し出してるんだ!? 腹立つなぁ~!」
ロキは ちょっと ムッとした。

「キャーッ!?」
突然、ミカルが叫び声を上げる!
「ミカル・ヒダカ!あなたさえ いなければ…!」
「マリーさん!? ミカルさんに何するんですかぁ!?」
ロキの愛人のサキュバス「マリー・オハラ」の攻撃を マリアは ドリーミンキュアーロッドで受け止めた。
「邪魔しないで!あなたたち 揃いも揃って ロキ様の寵愛を拒むなんて…!
特に、ミカルさん!満月の夜にだけ サキュバスになるあなたを 私は決して認めない!
許せないわ!満月の夜にロキ様を独り占めできるのに、あなたは必死に拒み続けて…!」
「そこまでだ!」「ロキ様!?」
ロキは マリーを後ろから抱きしめるようにして 攻撃するのをやめさせた。
「マリー、いくら ミカルが憎いからって殺そうとするなんて、ちょっとおイタが過ぎるんじゃないか?」
「で、でも…ロキ様…!あ…っ!」
マリーは、ロキに耳を甘噛みされて 少し感じている。
「私の屋敷で たっぷり お仕置きしてやるから 覚悟しろよ?マリー?」
「ああ…っ、ロキ様♡」
ロキは マリーをお姫様抱っこしたまま 空高く舞い上がり 一瞬にして姿を消した!

夜が明ける。空が白み始める。
日の光と共に、ミカルのサキュバスの翼も消え、衣服も元に戻っていた。
「…帰ろう」
ミカルの笑顔が 朝日に映えていた。 

ーおわりー




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.