Nicotto Town



台所夜話【3】修羅場【終】

マリアとココアは、息を整えていた。ロキの屋敷を脱出するまで、ずっと走り通しだったから。

「ココアさん、瞬間移動を使った方が 楽だったんじゃないですかぁ?」
「使えるならとっくに使ってたわよ。
ロキの奴、あなたを逃がさないために、
屋敷の中で瞬間移動の魔法を使えないように、魔法の結界を張って 屋敷にロックをかけてやがるのよ!」
「あ!いけない!屋敷の中に武器を全部置いてきてしまいましたぁ~!」
「バカ!何やってんのよ!? そんなの 後でいいでしょ!?」
「そういうワケには いかないですぅ~!せめて、教師専用武器の「ドリーミンキュアーロッド」だけでも…」
ロキに取り上げられた武器を取りに、マリアが屋敷へ戻ろうとしたその時…!
「おかえり、マリア…やっぱり、私の所がいいんだね」
突然、姿を現したロキに抱きしめられていた。
「あちゃ~」ココアは、バツが悪そうに額に手をあてる。
「あ、あの…私はただ、武器を取りに…ひゃんっ!?」
今度はロキに後ろから抱きしめられ、首筋に舌を這わされる。
「外でしたいなら そう言えばいいのに…」ロキがマリアの耳元で囁く。
『イザナミキーック!!』
掛け声と共に ライダーキックのような鋭い飛び蹴りが飛んできて、ロキは また ぶっ飛ばされた!
「フッ、相変わらず良い蹴りだな ユミコ…。お前が ハイエルフの弓使いであるのが 惜しいくらいだ」
「マリアちゃん、大丈夫?ごめんなさいね、うちの旦那が…」
黒髪ストレートロングのハイエルフの女「ユミコ」が、マリアに優しく声をかけた。
「どうして、私の名前を?…えっ?旦那?」
マリアの頭に?マークが3つほどついている。
「私は、ユミコ・ムラサメ。ロキくんは、私の夫なの」
「ロキさん、結婚してたんですかぁ?」
「そうよ!私というものがありながら、ロキくんったら浮気ばっかりするのよ!?」
『それは、あなたがロキ様を がんじがらめにするからじゃなくて!?』
モカベージュ ゆるふわロング髪のサキュバスが、ロキのそばに姿を現した。
「大丈夫ですか?ロキ様」「ありがとう、マリー」ユミコの前でわざとイチャつくロキとマリー。
「ちょっと!ロキくんから離れなさいよ!マリー・オハラ!」
「マリー・オハラさん…。ロキさんに夢の中に入る方法を教えたサキュバス…」
マリアの話を聞き、ロキがマリアの夢の中に入ったのを察したマリーは、ロキに目配せしてから話を始める。
「ウフフッ、ロキ様は 本当にイケナイことばかり 覚えが早くて…」
「もっと教えてほしいな、オハラ先生?」
「………」マリーとロキの大人な会話を聞いて、耳まで真っ赤になるマリア。
「オハラさん!! ロキくん家の家庭教師だかなんだか知らないけど、私がロキくんの妻である限り、
あなたなんてぜいぜい愛人止まりなんだから!!」
ユミコが 顔を真っ赤にして力説する。
「何よ!ムラサメさん!ロキ様の奥さんだからって偉そうに!そんなんだから、ロキ様に逃げられるのよ!?」
「ぬわんですって~!?」
一触即発。互いに睨み合って火花をバチバチ散らすユミコ・ムラサメとマリー・オハラ。
「ほら、マリア。今のうちに逃げるわよ」
マリアの肩を指でトントンしながら、小声で促すココア。
マリアの手を引いて駆け出すココアを、ロキは見逃さなかった。
(逃がさないよ…)ロキは、マリアとココアの後を追う。

ロキの屋敷の前で、ユミコとマリーは、言葉を交えながら一戦交える。
ユミコは弓矢と魔法を使って、マリーは爪と魔法を使って戦っている。
「ロキ様とは前世から夫婦の関係だったとか「女神転生」とか、そんなの どうだっていいじゃないの!
ムラサメさん、最初はロキ様のこと「あんな奴」って言ってたくせに!」
「ロキくんの浮気性は 昔からだし、そりゃあ 結婚して間もない頃は「あんな奴」って思ったわよ。
泣かせた女は 星の数ほどいるのに、アフターケアもフォローも一切やらないし、
私がいくら言っても、ロキくんは 浮気することをやめないし…。
本当にどうしようもない男だけど、でも…何だか ほっとけないのよ…」
「ムラサメさん…」
マリーは、ユミコの話を聞いてどこか思う所があったらしく、攻撃するのをやめた。
「オハラさん?」ユミコは、矢を射るのをやめた。
「…あら?ロキ様は、どこへ行ったのかしら?」「しまった!マリアちゃんのこと、すっかり忘れてた!」

一方その頃、メンドーサ隊では…。
「相手は、名門のエリート魔族で百戦錬磨の色事師なんだろ!? 早く行かないと、俺のマリアが…!」
ブランからロキのことを聞いたトリオンは、居ても立っても居られなくなっていた。
「でもよぉ、ロキがいるその「マカマカイ」って、どうやって行くんだ?」と、シンジロー。
「シーナガルドの村の森の奥にマカマカイへ通じる道がある。
だが、ここからシーナガルドまで行くのに陸路で3日、僕のセイレーンの翼で飛んでも半日かかる…。
あまりに時間がかかりすぎる!間に合う気がしない…!」
ブランは、打ちひしがれ、頭を抱えた。
「どうしたの?何?このお通夜みたいな空気…。大の男が3人も揃ってしょんぼりしちゃってさ~」
事情を知らないタヌキ族のバンブルが、軽口をたたく。
「んだんだ。そんなに落ち込んでたら、イイ男が台無しだよ~」と、キツネ族のイナリ。

「マカマカイに行きてぇだか?オラたちに乗って行けば、1時間もかからねぇで行けるだよ~」
「え~、マカマカイに行くの?しかも、ロキの所だろ?オイラ、あんまり行きたくないなぁ~」
「バンブル!行きたくないとか言ってる場合か!何でもいいから一番速い乗り物に化けろ!マカマカイに…!」
「その必要はないわ!」「ただいまですぅ~!」「マリア!?」
トリオンたちが行く行かないで揉めてる間に、マリアが帰ってきた。ココアと一緒に。
「ご心配をおかけしま…トリオンさん?」マリアは、トリオンに抱きしめられていた。
「まったく、心配かけやがって…!ウスラボケ~ッとしやがってよォ~」

「マリア。私、しばらく ここに居てもいい?」
「はいっ!いいですよぉ~!トリオンさん、ココアさんをお泊めしてもよろしいですかぁ?」
「お、おお…。いいぞ。それにしても、ココアは 本当にマリアにそっくりだなぁ~」
「そのおかげで マリアに会えたのよね。マリア、ロキには 本当に気をつけなさいよ? 
今回は、何とか逃げ切れたからいいけど…」
「そういえば、ロキさん こっちまで来ないですねぇ~」
「ピンキーが例の如く、あちこち触れ回って「お友達」をた~くさん呼んだからね」

「ロキ様…この魔法の紐「グレイプニル」で私を縛って 虐めて下さい…っ!」
ロキに拘束プレイを求めるド変態マゾ人狼娘『メロウ・フェンリル』。
「ロキ~!コヨリと遊ぼっ!ケルちゃんとオルちゃんもロキと遊びたいって!」
双子の兄弟魔獣「ケルベロス」と「オルトロス」を従えるホワイトライオン族の少女『コヨリ・ソルレオン』。
他にもマカマカイの人達が次々とやって来て、ロキは 追跡ができなくなった。
「見つけたわよ!ロキくん!/ロキ様!」
ユミコとマリーも合流して、さらにややこしい事態になった。

後日、メンドーサ隊事務所に ロキに取り上げられたマリアの武器が、
ユミコ・ムラサメ名義のヘモグロ便で届いた。
そのヘモグロ便と一緒に一人の女がメンドーサ隊を訪ねてきた。彼女は一体、何者なのだろうか…?

ー台所夜話・おわり。次の話へつづく。ー




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