Nicotto Town


モリバランノスケ


飛翔

クスノキの下に、しばし、静寂が拡がる。そこに居る皆は、お蝶の告白に、少なからず衝撃を受けたようで、沈黙の世界に引き込まれてしまった。皆の気持ちが、この静かさを呼んだのだろう。全員、押し黙ったまま動こうとしない。

楠木の左側には、仲良く並らんだ樹木たちが。すもも、グミ(ビックリグミ)、ナシ、ビワ、
夏みかん、・・・・・・。辺りの草むらから、兎のウサコが、ピョコンと顔を出す。私も聞いていたノ、ビックリですよ、という表情で。

押し黙ったままの、皆んなの気持を押し図り、お蝶は、静かに、自らに言い聞かせるように、言葉を紡ぎ始める。(私の、極めて個人的な話を、聞いていただきありがとう。お陰さまで、何か、胸のつかえが下りたような気がします)
と呟き、一瞬、空を見上げる仕草を。そして
(久しぶりに、大空を舞ってみたい)と叫ぶ。

ウサコは、(大丈夫!!)と、心配そうに声を掛ける。ピョン太も、内心では、心配だなア、と、思っているのだろう。が、しばらく、大空の飛翔が出来なかったお蝶の気持が、痛いほど分かるので、表面では努めて明るく、<疲れたら、直ぐに戻ってくるんだ。しばらくは、ログハウスでの静養が肝心>と、労るように言う。

お蝶は、(有難う。モチロン、そうします)とうなずき、微笑みながら、ユックリと静かに、羽を開いてゆく。

一羽、二羽・・・。暫く動かさなかった為だろう。筋肉が少し重い。が、やんわりと、元に、戻っていく感覚が、蘇ってくるようだ。

そして、いよいよ、空に向かって、上昇する。

お蝶は、全身を躍動させて、大空に舞い上がる。彼女の気持ちは、こんな感じだろうか?。

(今、再び、大気を、青空を、飛翔している。私は、とても、とても、幸せです・・・・・)





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