Nicotto Town


モリバランノスケ


雨にけむる

今朝は、ここ南房総の山並みも、雨に被われている。南東の空に、少し明るさがましたような気もするが、寒々しい感じは、体の中だけではなく、建物の中、そこかしこに在る。窓から望まれる庭の樹木達も、何時になく静かである。

その様な雰囲気の中、私達夫婦は、愛猫のチャムを交え、朝食を楽しんでいる。が、その時、ベランダに、リスのピョン太が現れ、窓越しにチャムに話し掛けてきた。
ピョン太 <タイヘンだ! タイヘンだ!>
チャム  (どうしたの?)
ピョン太 <お蝶が、楠葉の陰で、ブルブルと
     震えていたんだ。助けてあげて!>

良く見ると、ピョン太の背中に、一匹の蝶が、必死の形相をして、つかまって居る。毎年、春には南から北へ、秋には北から南への旅の途中ここのクスノキでの、羽休めを常としている。
だが、今年はマダ早いと油断(?)していた。

私は、即座に家のドアを開き、二人を中に招き入れる。食卓に、席を用意し、ピョン太には、大好物のナッツ、お蝶には、蜂蜜。それには、滋養強壮に良いだろうと、庭の楓から頂いた、メープルシロップを一滴垂らす。最初は、憔悴しきったようにうなだれ、下を向いて、黙り込んでいたお蝶の表情に、明るさが戻り始める。

だが、まだまだ言葉を発する元気には程遠いのだろう。ユッタリとした動きながら、さも美味しそうに蜂蜜をなめている。心なしか、体の震えが治まり、眼光も少しは明るくなった様子。
私は、誰に言うという訳ではなく、独り言を呟いていた。<シッカリと養生すれば良いんだ。
今から北国への旅は無理。うちの子に成れ!>





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