Nicotto Town



台所夜話【1】恋する総集編

ここは、ウェルカム王国の城下町にある自警団兼何でも屋「メンドーサ隊」の事務所。

メンドーサ隊事務所は、元・老舗グランドホテルを居抜きで使っている。
メンドーサ隊の隊員は現在、18人と2匹+7人。事務所に住んでいて、共同生活をしている。

夕食が終わり、台所で後片付けをしていたマリアは、今さらながら「あること」に気がついた。
「あ!私、まだ夕食食べてなかったですぅ~!」
「やっぱりな。そんなことだろうと思ったから、賄い料理を二人分作っておいて正解だったな」
「シンジローさん!」
「冷めないうちに食べようぜ。食べ終わったら片付け再開な」
「はいっ!」

「ごちそうさまでしたぁ!美味しかったですぅ~!んにゅ?シンジローさん?」
「ほら、マリア。ま~た口の周り汚して…拭いてやるからじっとしてろ」
「ありがとうございますぅ~!何だか色んな人達からお口を拭いてもらった気がしますぅ~」
「マリア、アンタが眠くならねぇうちに、さっさと洗い物を済ませちまおうぜ」
「お腹いっぱいになったからって私がすぐ寝ちゃうとは限らないですぅ~…ちょっと眠いですぅ~」
「後でコーヒー淹れてやるからもう少し頑張れ」
幸い、洗い物や片付けはそんなに大量ではなかった。二人でやったら、あっという間に終わった。

「こうして、シンジローさんと二人でいる時は、たいてい台所で後片付けをしている時ですよね」
マリアはシンジローが淹れてくれたコーヒーを飲みながら話を切り出す。
「ああ、そうだな。それにしても、メンドーサ隊にまた新しく人が増えたよな…」
「まずは『クレア・ボヤージュ』さんですね」

マリアは、クレアがメンドーサ隊に来た日のことを思い出す。
「本日付けでメンドーサ隊に着任致しましたクレア・ボヤージュ少尉であります!」
白い軍服を着たクレアは、ビシッと敬礼してセルティック王国の軍人式に挨拶する。
「あなたが、トリオン・シニュフォード・メンドーサ大尉!!あなたが、マリア・アレックス二等兵でありますね!?
お会いできて恐悦至極!憧れのメンドーサ隊に入隊できて感謝感激!銃弾砲弾雨あられであります!
まだまだ至らぬ所はありますが、皆様、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたし候であります!」

「クレアさんは数字に強い方でして、経理方面で助けてもらってますぅ~」
「貸し部屋・宿泊業務や「バンブル&イナリ運送」の立ち上げもクレアのアイディアだったな」
「何せ、すでに隊員の人数が20人を越しちゃって…でも、その前から赤字続きですぅ~」
「クレアが来るまで、帳簿じゃなくて「お小遣い帳」で金勘定してたのはどうかと思うが…」

「チュニスさんの実家から定期的に大量に送られてくる野菜や果物を加工した物を売ってお金にしてますぅ~。
ティルトさんたちは、たまに「くまくまベーグル&ドーナツ」でバイトしてますぅ~。
お給料はもらえませんが、その代わりに果物やお菓子を持って帰ってきますねぇ~」
「マリアはフツツカ魔法学院の教師をしてるだろ?トリオン隊長とブランも」
「あ、そうでしたぁ~。教師の給料はそれぞれの懐で管理してるんですぅ~。
私は給料の半分くらいは生活費の方に入れてますけど…。
やっぱり、教師三人分の給料は大きいですねぇ~。全部、生活費に入れちゃった方がいいんでしょうかぁ?」
「…オレに聞くな。そういうことはクレアに聞け」

「バンブル&イナリ運送は、幸先良さそうだな」
「タヌキ族の「バンブル・ムジーナ」さんとキツネ族の「イナリ・コンボーイ」さんは、いいコンビですぅ~」
「何がいいコンビだよ。あいつら、マリアとブランの替え玉すらまともに出来なかったじゃねぇか」
「ああ、リュウキューン休暇の話ですね。一足先にブランさんが私をリュウキューンに連れてってくれて…」
「あれは単なる「抜け駆け休暇」だっての!」
「?、そうなんですかぁ?そういえば、トリオンさんが物凄く怒っててブランさんに銃を向けてましたぁ~。
でも、私の水着姿を見たら、トリオンさんが鼻血吹いちゃいましたぁ~」
「たしか、あの時マリアが着ていた水着って、スクール水着だったよな?」
「はい、士官学校時代に海岸演習の授業で使ってた水着ですけど…。
他の皆さんの水着に比べたら、全然刺激的じゃなかったのに…」
「トリオン隊長にとっては、マリアがどんな水着を着てようが、それだけで十分刺激的だったんじゃねぇか?」
「そういうものなんですかぁ?う~ん、よく分からないですぅ~」

「そういや、マリアとトリオン隊長は、セルティック王国から来たんだったな」
「はいっ、ドン・ブリカン・ジョーさんと無理やり結婚させられそうになった所を
トリオンさんに助けて頂いたんですぅ~!」
「教会のチャペルから花嫁のマリアをかっさらってそのままウェルカム王国へ国境越えとはな…」
「あの時のトリオンさんは、本当にカッコ良かったですぅ~」思い出して頬を赤らめるマリア。
「ったく、ノロケてんじゃねぇよ…」シンジローはトリオンにちょっと嫉妬した。

「ノロケで思い出したが、マリア…新しく入隊してきた双子のトライド兄弟には注意した方がいいぞ?」
「双子のトライド兄弟…虎人族の「ラシード・トライド」さんと「バトラー・トライド」さんのことですかぁ?
バトラーさんの方がお兄さんでしたっけ?」
「ああ、そうだ。トライド兄弟は、フツツカ魔法学院のモンククラスの卒業生でゲンサイの弟子だ」
「シッソナ姫の話によると、
トライド兄弟は、同じく双子の兄弟のカノンさんとソナタさんと同室のチームメイトだったって…」
「カノンとソナタってウェルカム王国騎士団の団長だよな」
「双子の兄弟同士でチームを組むなんて不思議な巡り合わせですねぇ~。
それで…どうして、ラシードさんとバトラーさんに気をつけた方がいいんですかぁ?」
「お、お前なぁ…」シンジローは、バツが悪そうに額に手をあてた。

「マリア、『ビアン・ヨーク』と『ロゼ・ベルサイユ』にも気をつけた方がいいぞ?」
「え?ビアンさんとロゼさんにも?どうしてですかぁ?」
「アンタ、百合って知ってるか?」
「百合?きれいな花ですよねぇ~。どうしたんですかぁ?シンジローさん?」
「…いや、何でもねぇ」
「ビアンさんとロゼさんも新しく入隊してきた人達ですよねぇ~。
ビアン・ヨークさんは、ブランさんとノエルさんの従妹で、お父さんが猫人族だから、猫耳セイレーンですぅ~。
ロゼ・ベルサイユさんは、男装の麗人で宝塚に居そうな煌びやかで凛々しい女の人ですぅ~。
ビアンさんとロゼさんは、いつも一緒にいて、とっても仲良しさんですよねぇ~」
「あいつら、アンタともとっても仲良くしたがってたぞ?大丈夫か?ロゼに口説かれてなかったか?」
「え?あれって口説いてたんですかぁ?」
「キャハハハッ、マリアちゃんってば超ニブイ~!マジウケル~!」
「誰だっ!?」警戒するシンジロー。ポケ~ッとしているマリア。
「こ~んばんわっ♪話はぜ~んぶ聞かせてもらったよ♪
あたしは「ピンキー・ポワゾン」♪マカマカイから来た魔族だよん♪」
背中にコウモリの翼に生やした小悪魔ロリータ少女が突然、二人の前に姿を現した!
「つーか、マリアちゃんって「ココア・ダークスター」とマジで瓜二つじゃん!ていうか、双子の姉妹?」
「え?私、そんなに似てるんですかぁ?その、ココアさんって方と…」
「マリア、そんなにココアに会いたいか?」
どこからか男の声がする…。

ーつづくー




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