Nicotto Town



仮想劇場『Jiro's恋歌』


 その部屋の押し入れが僕のお気に入りの居場所で
 誰に媚びることなくいつも当たり前の顔で居座り侍り
 ときにはブツブツと想い患いのような詩を宣い
 ときにはワオワオと流行らない歌を掻き鳴らし過ごした
 
 キミに呼ばれれば尻尾を立ててたちまちに返事をする
 キミが許せば押し入れの戸を開け放ち、そこでとりとめのない談笑をする
 それが当たり前の事とは言わない
 これはとてもとても贅沢な日常だ

 たまに気脈を重ねてはお互いの憂いを一つずつ持ち寄り
 そして何事もなかったような顔で手を握り交わし過ごした日々
 ひどく甘い時間、ともに懸命な時間、のぞんで退屈な時間、
 全部が当たり前で贅沢な日常

 その部屋の押し入れに僕はどれほど救われたろうか
 言葉に置き換えることが困難なほど僕はすでに
 君の懐深くにこの四つ足の全てをすっぽりと納めてしまった

 
 




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