Nicotto Town


どんぐりやボタンとか


キラとニクラの大冒険 (55)

その日、お昼に来たのは、3人のヒキガエルの妖精だった。
ケップツップという名前で、ぷっくりとした黄色い団子のような形をしていて、みんな赤いポンチョのような服を着ていた。
3人の妖精はよっぽどおなかが減っていたようで、夢中でキラの作ったカニのスープと焼ききのこを食べていた。
いつものようにキラが、美味しい?と、聞くと、ケップツップのひとりがキラを見て、答えた。
ぷくーっと身体をふくらまして、ぺいぺい!と、音を出した。
すると、他の2人のケップツップたちもそれぞれ、ぺいぺい!!と、キラに向かって音を鳴らして、身体をふくらませた。
はじめて妖精がまともにキラに向かって応えてくれたので、キラはとっても嬉しくて、そう!美味しいのね!!たくさん食べて!!と言って、妖精たちの器にたっぷりのスープのおかわりをつぎ足した。
すると、3人のケップツップたちはまた、ちゃっぷちゃっぷ!!と、音を鳴らした。
キラに、感謝の気持ちをあらわす音だった。

その日から、キラはよく妖精たちと話した。それから、ニクラとぱっぱっぷすもキラの真似をして、話してみると、妖精たちが何を言ってるかわからないときもたくさんあったけど、少しづつみんなで話ができるようになっていった。

そんなふうに、3人は妖精たちと少しづつともだちになっていった。
しばらくすると、妖精たちはたまにお昼のとき以外にも浜辺に来て海に潜ってる3人についてきて一緒に泳いだりして遊ぶようになった。そのうちたまにキラのベリー摘みやジャム作り、ニクラやぱっぱっぷすの魚の罠作りや魚などを干すための木枠の修理のための木を運んでくれたりして、3人の仕事を手伝うようになった。
一月もすると、3人の住む浜辺に妖精たちがいるのが当たり前になってきた。

中でもとりわけよく遊びに来たのは、はじめてキラと話したあのヒキガエルの妖精、ケップツップたちだった。
3人のケップツップはキラのあとについて、藪や森の中に食べ物を探しに行った。
ポルコとも仲良くなったようで、よくポルコの背中でケップツップたちは昼寝をしていることもあった。ケップツップたちはキノコを見つけるのがうまくて、群生しているめちーるやしめじを見つけると、パチパチと手を叩くような音を出してキラを呼んだ。

ニクラの手伝いをよくしていたのは、ねずみの妖精だった。ねずみの妖精は他の妖精よりも少し身体が大きくて力持ちだった。
黒に近い青の毛皮に全身を覆われていて、2本足で立つ熊のような形をしていた。妖精の名前はゼルゼルだった。

ぱっぱっぷすになついて、いつもついてきていたのは、海蛇の妖精だった。ミミズのように小さくて、ふにゅふにゅと身体をくねらせて泳いだり歩いたりした。
体の色が透明で水のようだった。
海の中に入ると、銀色に輝いた。
ぱっぱっぷすははじめこの妖精をてっきりみみずの妖精だと思っていたけど、キラに海蛇の妖精というのを聞いて、

おい!おまえ!7つの頭の蛇の仲間じゃないのか!?

と言って、海蛇の妖精を追い払おうとした。
でも、しばらくすると、ぱっぱっぷすはずっとついてくる小さなみみずのような妖精のことが好きになっていた。
妖精はミューという名前だった。

それからキラは3人のケップツップひとりひとりに名前をつけた。
一番ふとっちょのケップツップはよくポコポコと音を出すので、ポコ。一番背の高いケップツップはキノコが大好きなので、ノコ。
一番小さなケップツップは昼寝のときにケチャケチャと寝言を言うので、ケチャに決めた。

そうして、3人は妖精たちとしばらくの間、この浜辺で楽しく暮らしていた。

ある日のお昼過ぎ、キラはいつものようにポルコと3人のケップツップと一緒に森へ行ってた。
昨日の夜からぱっぱっぷすの具合が悪くなってしまっていたので、そのための薬草を探しに来たのだ。
ニクラはぱっぱっぷすの好物のやこ貝を獲りに海へ潜っていた。
ぱっぱっぷすはからだにじんましんが出てて熱もあった。
ニクラはじんましんによく効くハンシンという木の実のことを本で読んだことがあった。緑色の苦い木の実だった。
ニクラに教わってキラはそのハンシンの実を探しにきていたのだ。
キラはしばらく森の中を探しまわってようやく、ぐねぐねと曲がったハンシンの木を見つけた。
いつもキノコを取りに行く森とは反対側の森の中だった。
キラは持ってきた袋にハンシンの実を摘んで入れた。
これの皮を剥くと、白い中身が出てきて、それを湯がいて食べさせるとじんましんに効くらしい。
キラはたくさん取ろうと思って、一生懸命ハンシンの実を積んでいた。
すると、森の奥の道で馬の蹄の歩く音が聞こえた。
キラはどきっとして、ハンシンの木の陰に身を潜め、道のほうをうかがった。
すると、道には大人の男たちが馬に乗って、ニクラたちのテントがある浜辺に向かっていた。
ニクラとぱっぱぷす、ハナ婆以外の人間を見るのはもう3ヶ月ぶりだった。
6人の男たちで、そのうちの何人かはキラの知ってる顔だった。
口髭を生やした太った男は、教育委員長のキラの父親によく媚を売っていた警察署長で、他の警官や町の自警団の大人たちもいた。
キラはポルコと3人のケップツップたちに森の中に隠れているようにと言うと、大慌てで浜辺へ走った。
浜辺へ戻ると、ニクラがテントの近くの岩場でやこ貝を水につけているところだった。
キラはニクラに駆け寄って言った。

大変!!町から警察たちがわたしたちを探しに来たわ!!
あっちの森の道からこっちに来るわ!!

キラとニクラは急いでぱっぱっぷすをテントから連れ出そうとした。
テントや馬車を隠してる暇なんて無かった。
ぱっぱっぷすは関係なかったけど、テントの中にあるキラやニクラの持ち物を見たら、ふたりがいることを感づかれて、きっとぱっぱっぷすはひどい目にあってしまうかもしれない。
しかし、ぱっぱっぷすはじんましんの熱で朦朧として、立つこともままならなかった。
仕方ないので、ニクラがぱっぱっぷすを背負って、ふたりはテントから出て彼らが来てるのと反対方向の森に向かって走った。
しかし、ニクラが突然立ち止まって言った。

キラ!海だ!

ニクラはそう言うと、ぱっぱっぷすを砂浜に下ろして、馬車の荷台に駆けていった。
キラはすぐにその意味をわかって、走った。
ふたりは荷台からすばるからくりを降ろして、波打ち際に置いた。
3つのすばるからくりを降ろして、急いでぱっぱっぷすをこすもすに乗せて海へ入った。
ぱっぱっぷすはこすもすの上にうつ伏せにぐんにゃりと横たわった。
こすもすとイルカとツキはすぐに泳ぎ出して、3人は潜って沖へ逃げた。
ニクラとキラはぱっぱっぷすがこすもすから落ちないように両側からぱっぱっぷすの身体を支えた。
沖まで来ると、ニクラとキラは海面からほんの少しだけ顔を出して、浜辺を見た。
やはりもうすでに警察たちは浜辺に着いていて、テントの中を探っていた。
6人の大人たちは、警官たちと自警団員たち、それから、見たことのないひげを生やした背の高い軍人のような男もいた。
全員、火薬銃を肩にかけて、2頭の大きな馬が後ろに大砲を引いていた。
大砲は鈍く狂暴に黒光りしていた。きっと7つの頭を持つ蛇を警戒して持ってきたのだろう。




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