Nicotto Town


どんぐりやボタンとか


キラとニクラの大冒険 (54)

妖精たちのコンサートを聞いて、身体中に力がみなぎっていた3人は、その膨大な量の食べ物を全部ちゃんと処理することにした。

キラの仕事は、まずキノコを乾燥させることだった。
ぱっぱっぷすの投網を借りて、以前ニクラが作った木枠に貼り付けて、それに丁寧にキノコをひとつひとつ全部並べて、日干しにした。こうしておけば、あとでお茶やスープに使える。
それから、ベリーを全部ジャムにした。

ニクラは魚をぜんぶ捌いて、イカやタコやカニやエビや貝も全部干した。それから、「うみのいきもの」に載ってた作り方を思い出して、ハナ婆にもらった瓶を使ってイカとタコの塩辛も作った。

ぱっぱっぷすは、山菜を湯がいて、全部水にさらして保存できるように瓶につめた。それから、ハナ婆に教わった薬の作り方を思い出して、薬草をすり潰して乾燥させたり、薬草と蜂蜜をこねて団子を作ったりした。

どれもみんな重労働で、3人はしょっちゅう食材を焼いたり、生のままでも、口にいれて食べながら作業していた。

3人がすべての作業を終えたのは、もう夜だった。
最後に残った仕事はベリーのジャム作りで、焚き火の明かりの中で3人で協力して終わらせた。
作業を終わらせてから、3人はやっぱりまだおなかが減っていて、ニクラが並べたたくさんの魚の中から大きいのを3匹焼いて食べた。

食べながら、3人はたくさんの仕事を終えて満足していた。

こんなにたくさん働いたの生まれてはじめて!

とくにキラは自分でたくさんの仕事をやり遂げたことが嬉しかった。

うん、妖精たちのコンサートで力をもらったおかげだね!

ニクラも満足そうに笑って言った。

どうせなら酒もくれればよかったのになぁ!!

お酒好きのぱっぱっぷすはそう言って笑った。


次の日からも、干物をひとつひとつ裏返したり、ジャムを混ぜなおしたり、乾燥させた薬草を使って薬玉を作ったり、まだまだ仕事はたくさんあった。
全部の食べ物をちゃんと保存できるように処理が終わったのは、結局1週間かかった。

3人はそれからもよく妖精に会うようになった。

邪悪なものがいなくなって、呪いや憎しみが消え去り、この辺りの妖精たちは安心して外に出られるようになったのだ。

ある日、キラが蜂蜜取りから帰ってくると、テントの中に妖精がいた。
てんとう虫の妖精、テルチと、雨の妖精、カムリ、それから、虹の妖精のシューケリッヒポントゥだった。
カムリとシューケリッヒポントゥはいつも一緒にいて、テルチや他の昆虫の妖精とも仲が良いと図鑑にも書いてあった。
3人の妖精はたたんであるキラの寝袋の上に座りなにかを相談してるみたいに見えた。
妖精たちは言葉を持たず、音だけで会話をする。
シューケリッヒポントゥが、さらさらさらさら、と音を出すと、カムリが、じじじじじじじじじ、と、答えて、テルチが、とぅるとぅる、となにか言った。

キラは嬉しくなって、話しかけてみた。

ねえ、わたしもおしゃべりにまぜて。

でも、3人の妖精はキラのほうを見向きもせずに、話を続けている。
キラはもう一度言ってみる。

今、忙しいのかしら?
もしよかったら、わたしも少しだけお話したいの。

すると、カムリがキラのほうをほんの少しだけ振り向いて、シューケリッヒポントゥとテルチに言った。

じじじじじじじ、じー、じっ、じっ、、

すると、テルチが、

ぽんっ、ぽんっ、ぽんっ、と音を出しながら、身体を少し揺らした。

キラはそれを見て言った。

なによ、意地悪ね!少しくらいおしゃべりしてくれたっていいじゃない!

キラは言いながら、自分で驚いた。
妖精たちの会話が少しわかったからだ。
妖精たちは、あの女の子、なんか言ってるよ。もうちょっと無視してからかってやろうよ。
ふふふ、そうだね。
というような会話をしていたのだ。

キラが怒ったのを見て、妖精たちは、ぽんっ、ぽんっ、と音を出して跳ねながら、テントから逃げていった。

そのあと、キラは漁から戻ってきたニクラとぱっぱっぷすにそのことを話した。
ふたりも海に潜ったときに、たまに魚やイソギンチャクの妖精を見かけることがあったけど、もちろん、妖精たちと話をしたことなんか無かった。

すげえなあ!キラ!
妖精と話したのか!!

精霊だけじゃなくて、キラは妖精とも話せるんだね!

キラは不思議な女の子だった。
あめしらずを上手に慣らしたのも、土の精霊と話ができたのも、すばるからくりと力を共有したのも、キッチや他の妖精を最初に見つけたのもキラだった。

わたし、いつか妖精たちとともだちになりたいわ!

キラはそう言いながら、お昼のしたくをした。

3人でお刺身や貝のスープのお昼を食べているとき、また妖精が現れた。
はじめにぱっぱっぷすが見つけた。

おい!おめえ、なにしてんだ!

ニクラとキラも見ると、そこには毛むくじゃらの木の妖精、ドルドルがいた。
ドルドルは器の陰に隠れながら、ぱっぱっぷすの一番大きな魚の切り身にかぶりついて、盗もうとしている。
ドルドルは大きな切り身を口に入れながら手で持って、走って逃げていった。

あぁ!!おれの魚を持って行きやがった!!
まったく!妖精なんて泥棒じゃないか!そんなやつらとキラはともだちになりたいのかよ!おれはごめんだね!

と、プンプン怒りながらぱっぱっぷすが言うと、キラとニクラは大笑いした。

なにがおかしいんだよぅ!!

ぱっぱっぷすは顔を赤くして言った。

妖精たちはとても食いしん坊で、なんでも食べる。と、図鑑にも載っていた。

それからは妖精たちは毎日のように3人の前に現れた。
キラは妖精たちのためにお昼ごはんを余分に一人前作って別の器に分けておくようにした。
もっとも、ぱっぱっぷすは、泥棒のためなんかにごはんを作ってやらなくていいじゃないか!と、キラに反対したが。
妖精たちはキラのお昼ごはんをとても気に入ったようで、毎日違う妖精が来た。たまに家族なのか、10人くらいの大人数でくるときもあり、料理が足りなくなるとキラは自分のぶんをあげて、またあらたに料理を作った。ぱっぱっぷすははじめのほうはブツブツ文句を言ってたけれど、だんだんぱっぱっぷすも、今日はどんなやつが来るかなぁ?と、妖精が来るのを楽しみにするようになった。

はじめ、妖精たちはキラの用意した器の中の食べ物だけをこっそり盗むようにして持っていってたけれど、しだいにそこで3人と一緒に食べるようになっていった。
妖精たちは、ひそひそとなにかを話しながら、ちらちらとキラやニクラやぱっぱっぷすの顔を見た。
キラはいつもそんな妖精たちに、美味しい?とか、もっと食べる?とか、話しかけた。





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