Nicotto Town


昼行灯の雑記帳


カミュの「ペスト」を読んで思うこと

カミュの「ペスト」を読んだ。ざっくり言うと1940年代終盤(古書のように思っていたが約75年前)の小都市にペスト(腺ペスト)がひっそりと侵入する。
一人の医師がペストではと気づき、市政に訴える。しかし「上部」はそれを認めない。
やがて病気は蔓延し始め、ロックダウンを受ける。

誠実に生きてきた人も、悪人も死ぬ。
必死で治療に尽くす医師たち。
最初のうちは薬も届かずなくなる人々も出る。
そんな中でこれは民衆の過ちに対する宗教上の試練であると説き、なくなる神父。
ロックダウンから裏の手段を通して脱出を図る人。
ペストなんかないと思おうとする人々。
ラジオ、新聞はもうある時代で、ペストは菌であるため、抗生物質は効き目がある。どうにか薬が得られるが、手遅れになる人も出る。
やがて病は唐突に終息するが、作者は「決して消滅することはなく生き延び、いつか人間に不幸と教訓をもたらすために、どこかの幸福な都市に彼らを死なせに現れるだろう」と締めくくる。

この作品へのリスペクトを持って描かれたのであろうコミック1917年の作品(三巻完結)「リウーを待ちながら」では日本の神奈川らしきエリアでの劇症型であろう肺ペストのパンデミックを描いている。こちらは海外から持ち込まれ、当初病自体の存在が隠されており、一気に感染が広がる。作中の肺ペストは罹患から死亡までが24-48時間と非常に短い。

上記は菌でありウイルスではない。現在流行しているCOVID-19(現在流行中の新型コロナ)と決定的に違う点として「治療薬が存在すること」だろう。

ウイルスは生物と無生物の中間的存在で、同種ウイルスが複数同じ場にいても、それら単体での繁殖はできない。核酸(DNAかRNA)を包んだ薄い膜を持つ。ウイルスは自分の増殖に適合する何かの細胞(ウイルスの種により決まっている)に侵入し、細胞内に入るとDNAを無限に作成し、近隣の細胞を侵し、どんどんそれらを餌として破壊しつつ自己増殖するという存在だ。
植物や動物、ヒト、おおよそすべての細胞から構成された生き物に固有の感染症を引き起こす。
ウイルスの繁殖はDNAでのコピーを細胞内でただただ繰り返すため、変異も起きやすい。
また、ウイルスだけを殺せる薬剤はない。効果のある薬剤は正常な細胞も殺してしまう。ひとたびウイルス性の疾患が流行してしまうと終息が難しくなるのはこういったわけだ。
そのためワクチンや衛生管理といった防御がメインとなる。

防御の際もウイルスの種類により、対策は変わる。
COVID-19はアルコールによって破壊可能な膜を持つため、アルコール消毒が有効というわけだ。唾液や糞便が感染源なため、マスク、手洗いが有効。

凄まじい致死率を持つ強毒型トリインフルエンザウイルスH5N1も今年春から野鳥に流行が拡大し始めており、その弱った鳥や死亡した鳥を食した海獣が初春に相当数死亡が確認されていた。
その後夏にはポーランドの3都市で外猫や野良猫、散歩中のイヌなどがこういった鳥を捕食あるいはちょっかいを出したことで感染し、死亡が急拡大したため3都市でネコを屋外に出さないことなどの対策が取られている。このウイルスは渡り鳥によって運ばれるため、この冬の流行が懸念されている。(すでに北海道でこの秋、罹患して死亡したカラスが発見されているからだ)

さて、ここ数年の未曾有のウイルスのパンデミックで、現代の人類はどうかというと、人類が一丸となって感染と戦うのではなく、カミュの描いた時代と変わらないどころか、科学を否定しその存在はないものとし、医師や医療を敵としてみなす人々も出てきている。また世界各地で戦争が起き始めている…

人類は自ら存在の幕を閉じようとしているのだろうか。

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2023/10/26 13:26
>>nekoyamaさん

陰謀論に走る人はおそらく2パターンあって、科学知識の欠如や思考をしたくなく、なおかつ正常バイアスが異常に強い方。もう一方はそれをそういった人をカモにして自己顕示欲や商人欲求を満たしたり、偽医療で儲けることのみ考えている人ではと…
特に前者は「病気の流行も戦争も嘘で本当はそんなことは起きていない」という彼らにとっての『事実』が何よりも大事なので、はじめは同調していた人が「コロナにかかった、治療しているけれど今までかかった病気とは全然違う ワクチンを打てばよかった」とか重症化すると「あってはならないもの」なので「離反者だった」として簡単に見捨てています。砂に頭を埋めているダチョウですね。それも防衛反応ではあるのですが、行き過ぎれば危険になることはわかっていないのがね…
イベルメクチンを異常に信奉しているあたりは、重篤な副反応であとでひどいことにならないか懸念しています。長期連用で肝毒性のある薬品ですし、個人輸入品などは何が入っているかさえわかりませんしね。

DNAもRNAも、遺伝や突然変異についても、すでに50年前の中学理科の教科書に載っている内容なのですよね…。

細菌が顕微鏡で見られなかった古の時代にも「菌はいない、不敬により病になるのだ」と、宗教的圧力をかけたりやっかみから実験の邪魔をしたりというのはあったようです。
種痘の時も何年後かに牛になる(牛痘をもとに作ったワクチンだったため)という陰謀論がありました。
多様性ではあるのですが、人間は同じパターンを文明や科学が進歩しても繰り返していく生き物なのでしょうね…
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2023/10/26 01:26
過去の記録があっても顧みない、反省から学ばない、
理解し易い嘘を信じようとする。

当時の恐怖を味わったひとならば、同じ過ちを繰り返さない、
とも言えないのが情けない。

それこそ、学校教育のカリキュラムにも組み込まれてる内容を
憶えているかどーかが、思考の仕方を変えてる気がする。

かんたんな嘘を信じちゃうひとたちって、
ひとが解いた宿題のノートをなんにも考えずに写して提出してることに
罪悪感を感じなかったひとたちじゃないかと思う。

ほら、リツイートしてるひとたちのやってることは、
宿題ノートの中身を理解せずに丸写ししてるのと似てないですか?




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