Nicotto Town


せんちゃん


ハデスとクワール3

わたしの一番古い記憶は少女の頃、家に時々遊びに来るリスに木の実が入ったクッキーをあげたこと。


5歳頃だったと思う。両親は二人とも科学者で、わたしは巨大な研究施設に隣接した小さな家で暮らしていた。周囲に民家はなく、1年の半分は雪に覆われる土地で友達はリスやウサギ、小鳥たちだった。

寂しいとは思わなかった。他に子供のいる世界を知っていたなら寂しかったかもしれないが。様々な映像記録と小動物たちを相手にしていると瞬く間に時間が過ぎていった。

日々忙しそうな大人たち(皆科学者だった)の中で暮らしながら自然と様々な知識を得ることができた。

研究施設は遺伝子工学とAI技術を発展させたもので、「生きた脳細胞とAIの融合」を目指していた。

ごく近い将来、気候は激変し人類が生存可能な環境は失われることが予測されていた。研究施設は氷河期と食糧難、疫病、高い放射線にも耐え得るアンドロイドに人間の脳を移植する実験を繰り返していた。

わたしもその実験の被験体だった。

ある日、目覚めると実験施設は破壊されわたし以外の被験者は全て残骸になり果てていた。食料その他を求めた暴徒が手当たり次第に施設を破壊し、研究者たちも惨殺したのだ。

わたしだけは研究施設に隣接した家の地下に隠されていたので助かった。両親のおかげだろう。両親の遺体は施設の片隅で見つかり、わたしは他のたくさんの遺体と共に長い時間をかけて埋葬した。

涙は出なかった。わたしはすでに人間ではなくなっていたからかもしれない。

食事も睡眠も不要となった身体で、わたしは世界を彷徨った。
どこかに生きて救いを求めている人がいるかもしれないから。

けれど、飢餓や病に苛まれるか怪我で治療の術もなく苦痛の中に生きている人々にたいしてわたしに何が出来るだろう?
家から持ち出したわずかばかりの食料も薬品もすぐになくなった。

ある老人がわたしに求めたのはただ1つ。苦痛のない死だった。
それだけが希望だと。

わたしは逡巡しながらも、苦痛がないように細心の注意をはらいながら彼の中枢神経を破壊した。
その時、わたしは自分で気付かないうちに涙を流していた。

自分が死神にしかなり得ないことへの悲しさと絶望からの涙だった。

わたしは「ハデス」となった。



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2023/10/13 10:10
ちくちくたん、そうだよね~。
でも、自分が人類滅亡の時に生き残ってしまったらそう願う気がするわ。
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2023/10/13 09:53
苦痛のない死が望みって・・・なんて切ない・・・
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2023/10/13 06:34
もふもふさん、ありがとうです!!

お店イベントは欲しいアイテムがなければ、今回は見送ろうかなと思ってます(;^ω^)。
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2023/10/13 01:15
期待してます。
そして今日の正午、店イベメニューが発表になるはずなので注意してみてね~。
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2023/10/12 21:45
もふもふさん、ハデスは施設で充電が出来なくなってるので活動期間には限りがある設定です^^
ラストは救いがある感じにしたいですv
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2023/10/12 21:35
何をエネルギーに動くんだろう。
ずっと一人じゃさみしいね。
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2023/10/12 21:34
亀さん、コメありがとう!!
次回ではっきりしますが、前回までの「わたし」は今回の「わたし」とは別です。
この回の主人公はハデス。
次回、「ハデス」と「クワール」(前回までのわたし)の出会いとなります。
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2023/10/12 21:30
なんと、「わたし」は元人間、しかも女性だったとは!!
勝手になにか宇宙人か機械のようなものだと思ってたわ~。
予想外の展開に、目が離せませんッ!(≧▽≦)



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