Nicotto Town


どんぐりやボタンとか


キラとニクラの大冒険 (18)

結局、ふたりが眠れたのは明け方に空が明るくなってきた頃だった。

ぴー、ぴー、ぴー、ぴー。。。

と、やまからすの赤ちゃんの鳴いてる声が聞こえて、ニクラはテントの中で目を覚ました。

横を見るとキラはもう起きてテントから出ていた。
外に出ると、キラは朝食を作っていた。
キラが持ってきていたりんごを切って、おおきな葉っぱのお皿にきれいに並んでた。
それから、セイゲンさんが持たせてくれたプカ(飛べない鳥)の燻製、パン、チーズ、ベーコン、キラが摘んできた木の実がみんな葉っぱのお皿に乗せて並べてあった。
キラは、卵をひとり二つづつ焼いてるところだった。

ニクラ、おはよう!

キラは明るい笑顔でニクラに言った。

ニクラも笑顔でキラに言った。

おはよう、キラ!
朝ごはんを作ってくれたんだね!
おなかがペコペコだよ!!

ふたりとも、昨日は朝にパンをひとつ食べただけで、ほんとうにおなかがへっていた。
そして、キラはひいおばあちゃんの言ってたことを思い出していた。
ひいおばあちゃんが若いころ自分の国で起きた戦争のことを話してくれたとき、

人間、心がつらくなると生きれなくなるんだよ。そうゆうときはできるだけたくさん、とびきり美味しくて健康なものをおなかいっぱいに食べるんだ。
大きなことは変えられないときがあるけど、人間、食べたら、元気になるんだよ。
大切なことなんだよ。

ニクラにはキラのその思いがわかって、嬉しかった。

ふたりともおなかいっぱいになるまで、朝ごはんを食べた。

ふたりはテントを片付けて、また海に向かって出発した。


ふたりは荷台にゆられながら、やっぱり昨日のことを考えていた。
でも、キラの朝ごはんのおかげでそれはもう後悔や迷いだけの気持ちではなかった。
12歳の彼らにとって、それはあまりにも大きなことだったけど、でも、キラもニクラも、ぼくたちはこれから逃げてはいけないんだ。という気持ちになっていた。


ニクラはキラに言った。

キラ、ぼくはやっぱりまだぼくたちが正しいことをしたのか、わからない。
でもぼくはもう一度同じことが起きたら、やっぱりもう一度ふうせんばくだんを止めに行くと思うよ。

キラは言った。

うん、わたしもそうすると思う。
わたしたちが間違っているなら、きっとわたしたちもあのいきものたちと同じようなことになると思う。でも、わたしは逃げないわ。

キラの言ってるわたしたちというのは人間すべてのことを言っていた。

ニクラも言った。

うん、ぼくも逃げない。

ポルコはぶるっと身震いをして、くしゃんとひとつくしゃみをした。

ふたりはそれを見て、笑った。




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