Nicotto Town


せんちゃん


黒いピアノと黒い猫 5

隣の国との戦争が続いていることは知っていたけれど、僕たちが住んでいる田舎には関係ないと思ってた。


学校では、いろんな噂がとびかっていた。
首都ではダヤン人がカフェで突然撃たれて殺されたとか。
逆にダヤン人が突然カフェで誰かを撃ち殺したとか。
悪いことをしてお金を貯め込んだダヤン人の店が襲われたとか。
ダヤン人を隔離保護する施設が出来て、列車でそこに大人も子供も運ばれてるとか。

でも、僕の家とは関係ないと思っていた。
母が祖父母のいる遠くの国に船で行ってしまうまでは。

「戦争が終わって落ち着いたら、すぐ帰ってくるわ」と母は笑って僕に言った。
母が僕を抱く手は冷たくて震えていて、僕は必死に涙をこらえていた。

随分後になって、父が持ち出した母の毛皮や高級品は母の船賃やパスポートの工面に充てられてたと知った。母は僕だけでも一緒に連れて行きたかったけれど祖父母がそれを許さなかったことも。だって父はダヤン人で僕は半分だけダヤン人だけれど祖父母にとっては同じことだったから。

そして、母の乗った船は沈んだ。
隣の国の攻撃だったというニュースも、事故だったというニュースもあった。

それから毎晩、僕は海の底に沈む夢を見た。母は僕よりずっと深い場所にいた。
手を伸ばすと母の髪がからみついた。引っ張り上げようとすると、母は怖ろしい化け物になっていて僕の手に嚙みついた。

エゼルがうなされる僕に噛みついて起こしてくれたらしい。

エゼルは温かくていい匂いがした。






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2023/09/23 09:40
ちくちくたん、多分このあたりが主人公の少年の一番辛かったところ。
次の次くらいから急展開します。
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2023/09/23 08:58
・・・(´;д;`)・・カワイソス・・
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2023/09/23 06:14
もふもふさん、大丈夫ですv

ダヤンはユダヤ人をモデルにしたので(;^_^A
でも、そちらを想像しちゃいますよね。まあ、カワイイからいいかなw
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2023/09/22 21:53
どんどん暗くなっていくじゃん!
ほんとに救いは訪れるの?

ダヤンって、わちふぃーるどのダヤンを想像しちゃうんだけど。
どこからきているのかな。



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