Nicotto Town


せんちゃん


細いナイフのような月の夜(黒いピアノと黒い猫1)

細いナイフのような月の夜。

金色の瞳の猫が僕に「あそぼう」と語りかけた。

僕は驚いて足がすくんでしまった。
夜に溶けていたその黒猫はゆっくり僕に近づいて、「グァウ」と鳴いた。

あたりは暗い森で僕とその猫以外には動物の気配はなかった。
もちろん人間の気配も。

森の奥には三日月の形の湖があって、壊れて朽ちかけたボートや屋根に穴のあいた小屋があった。昔は誰かがそこで釣りをしていたのかもしれない。
僕は、嫌なことがあるとその小屋やボートの残骸で遊んでいた。

でも、今日は父に殴られて泣きそうになり泣き顔を父に見られたくなくて
ここに逃げ込んだ。そして泣き疲れていつの間にか眠ってしまった。
気が付いたら夜になっていて空腹で家に帰ろうとしたところに猫が現れたのだ。

猫は家に帰ろうとする僕の後を当然のようについてきた。

「おまえ、僕についてきてもダメだよ。
お父さんは僕をキライだからおまえも蹴られたりするかもしれない」
「…いっそ、家に帰るのはやめてあの小屋で暮らそうか。
うまくいったら魚が釣れるかもしれない」
でも、そんなことできっこないこともわかっていた。

すると、猫は僕を追い越し駆けて行った。
何の迷いもなく、僕の家の方向へ。
そして振り向いて僕をじっと見た。
なぜか、僕はその猫は僕のことも父のことも天国の母のことも何もかも知り抜いているような気がした。

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2023/09/18 20:59
もふもふさん、挿絵というか昔々若い頃に漫画描いてたのを思い出しましたw
今はもう描き方忘れて無理だけど。
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2023/09/18 20:57
ひろあきさん、こんばんは。
松尾由美さんは知らないのですが、ミステリー系の作家さんなのですね。
わたしが書いてるのは多分ファンタジーですw
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2023/09/18 20:56
鳩羽さん、ありがとうです。
書いてると自分が少年になったように感じますww
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2023/09/18 20:41
挿絵もかいて欲しいな。
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2023/09/18 18:24
こんばんは。
松尾由美さんの小説がなんとなく浮かんできて、神秘的の絵が浮かびました。
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2023/09/18 17:02
「僕」の使い方に、違和感がないのがすごいです。
猫は「僕」に対して、何を示そうとしているのでしょう。
どきどきします。



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