さっき「海の見える町」という小説の続きは、もう本当にないかな？と、パソコン内の小説のフォルダを見ていたら、また、昔に書いた短いお話を見つけたので、載せるね。

とっても短いけど、ちゃんと終わってるので、安心して読んでくださいな。

「晴れた日のぽんちゃん」

今日はとってもいい天気。
ぽんちゃんのうちの庭には、おかあさんが植えたお花のいいにおいがして、
おかあさんが干したせんたくもののシーツや、ぽんちゃんのシャツや、
おとうさんのパンツがひらひら気持ちよさそうにそよ風にゆれています。

ぽんちゃんはプラスチックの黄色いバケツと、緑色の小さなスコップを
使って庭のまんなかに穴を掘っています。
ちかごろぽんちゃんはいつもそこの穴を掘るのに夢中です。
ぽんちゃんは、さくさく、さくさく、スコップで土を掘り出していきます。
ぽんちゃんのよこには小さな土の山ができています。

さくさく、さくさく、さくさく、さくさく、

さくさく、さくさく、さくさく、さくさく、

こつん。

スコップは何かに当たり音を立てました。
ぽんちゃんは手で土を払って見てみると、大きな石が出てきました。
石があってはそこから掘り進めることができません。
ぽんちゃんは両手で一生懸命石を持ち上げようとがんばりました。
石はすこし横に動くだけで、持ち上げることができません。
そこでぽんちゃんは石を両手でつかんで、よいしょう、っとひっぱってみると、
ごろり。石は穴の中でころがりました。

ぽんちゃんも一緒に後ろにころがってしまいました。

穴の中を見ると、石の下にはこげ茶色の大きながまがえるがいました。
がまがえるは体を丸めて、眠っているようです。
ぽんちゃんははじめて見るがまがえるにびっくりしました。
がまがえるの背中には大きないぼいぼがあって、顔はうずくまっているから
よく見えません。
すこしはみでているおなかはぷっくりとしています。
ぽんちゃんは指でおながをつんつんしてみました。
おなかはぷよぷよしています。
もういちどおなかをつんつんしてみると、がまがえるは後ろ足をめんどうくさそうに
動かして、ぽんちゃんの指をどかします。
がまがえるが動いたことがうれしくて、ぽんちゃんはまたつんつんしてみます。
がまがえるはまためんどうくさそうに後ろ足を動かし、ぽんちゃんの指をどかします。
ぽんちゃんは、うふふふふと笑うと、こんどは指であたまをなでてみました。
すると、がまがえるのまぶたが上から下にゆっくりと動いて目を開けました。

がまがえるはぽんちゃんに顔を向けると、おい、きみ。と言いました。
ぽんちゃんはにこにこしてがまがえるを見ています。
もうすっかりがまがえるを好きになったようです。

ぼくはもっと寝ていたいんだ、邪魔しないでくれよ。
がまがえるは言いました。
わかったかい？

うん。
ぽんちゃんは言いました。

じゃあ、ぼくの上に石を戻して、土をかけてくれよ。
がまがえるは言いました。

うん、わかった！
ぽんちゃんは言いました。

するとがまがえるはまた体を丸めて、ゆっくりと下から上にまぶたを閉じました。

ぽんちゃんは大きな石に指を全部ひっかけると、がまがえるが痛くないように
ゆっくりと石をずらしました。
がまがえるの体が全部石の下にかくれると、こんどは掘り出した土を穴に
戻しました。
全部の土を穴にもどして、さいごに地面をスコップでぺたぺたと平らにしました。

これでがまがえるはまたゆっくりとあたたかく眠ることができます。

ぽんちゃん、庭にいるの？
おかあさんが縁側からのぞいて、ぽんちゃんを呼びました。

ぽんちゃんは庭のまんなかでうずくまって、にこにこしながら
地面を見ています。

ぽんちゃん、お昼ごはんだから、手を洗ってらっしゃい。
お母さんは言いました。

ぽんちゃんはやっと顔をあげておかあさんを見ました。

おかあさん、つちのしたでおおきなかえるがねているんだよ。
ぽんちゃんは言いました。

ぽんちゃんとおかあさんはふたりでおいしいそうめんを食べました。
つるつるのそうめんはぽんちゃんの大好物です。
ぽんちゃんはたくさん食べて、おかあさんにがまがえるのことを教えてあげました。
おかあさんはぽんちゃんの話を聞いて、とても感心していました。

それから、ぽんちゃんはまた庭に出ていこうとしましたが、おかあさんが
お昼寝のじかんですよ。と言うので、つまらないなあ、と思いながら、タオルケット
の中で眠りました。

ねむっているぽんちゃんは口をすぼめたり、にこにこ笑ったりしています。

ぽんちゃんは夢のなかでどんな冒険をしているのでしょうか。