Nicotto Town



仮想劇場『clouded moon』


 あの夜、空は突然モノクロームになって、僕の眼球から色彩の全てを奪ってしまった。それを境にあらゆる権利を剥奪され、この星の住人であることさえ赦されなくなる。

 昨日まで同じスローガンを抱いて酌み交わした友も、今ではすっかり他人様となりはて、住み慣れたあの家も今ではもう知らない誰かの宿り木。

 それでも憐れとは思われたくはないから、僕は赤い首輪を口にくわえたまま野良犬を気取り過ごした。

 moon、言い訳にしか見えない強がりの夜を背負って、星の見えない大地に吠えるしかない。


 あの日、小さく芽生えた感情を大事にしたいと、咥え続けた首輪さえもポトリと落とした。それは色のない世界に自分を棄てるような速度だ。

 何も見えないから僕は常に考える。何もわからない以上そうするしか手段がないから、今日見た太陽の破片と同じ数だけの言葉を綴り、明日あるべき自分の姿を創造して生きていくので精一杯。
 弱気を理由に舌をだしたらそこであっさりと終る。そんな恐怖だ。

 moon、痛みを口にしてもこの牙がある限り結局、全ては台無しになってしまうよね。

 それでもいまだに僕は信じている。
 いつかこの瞳にまた色彩が戻ることと、
 キミを覆うその暗雲はちゃんと必ず晴れるということ。







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