Nicotto Town



シオ、再入学【3】なりたい勇者【終】

今日は勇者クラスの最初の授業だ。勇者クラス教師「アデリー・アデライン」が教壇に立って講義を始める。
「勇者って何だろうね?勇気ある者、勇敢な者。人々の前に立ち、導く者…。
何も魔王を倒すだけが勇者じゃないよ?
ていうか『竜退治は、もう飽きた』?だったら、戦車に乗り換えなきゃだねっ☆」
ゴーグル付きのハンター帽子を被ってメタルマックスするアデリー先生。見事にスベったので咳払いする。

「まだ誰も成し遂げてないことに挑む、困難に躊躇せず立ち向かう…。それもまた『勇者』だねっ♪
冒険者クラス、看護兵クラス担当のマリア・アレックス先生もある意味『勇者』だよね☆彡」
「クシュン!」アデリーに噂されて、くしゃみをするマリア。

「と、まぁ…勇者について色々と語ってきたけど…みんなは、どんな勇者になりたいのかな?
「なりたい勇者」についてレポートを書いて提出してねっ☆」
そう、勇者クラスの一番最初の授業は「なりたい勇者」についてのレポートを書くことだ。
前の時は、いの一番にレポートを提出したのにも関わらず、アデリー先生に職員室に呼び出された。
「シオ・タイオーくん?」アデリー先生は眼鏡を外し、髪をほどいた。
その途端、先生たちが職員室から逃げ出した。
「何じゃあこりゃあああーーーッッ!!!」アデリー先生は、シオの書いたレポートをビリビリに破いた。
「てめー、勇者なめとんのか?ああ?!
強引ング・マイウェイで「黙って俺についてこい」な勇者なんて流行らんし、誰もついてこねーよッ!!
勇者履き違えてんと違うかぁ?もういっぺん書き直せ!書き終わるまではここから出さんからそのつもりでな!」
何度もリテイクを喰らってやっとレポートを書き上げたが、アデリー先生からの評価は最悪のままだった。
座学や実技の成績がどんなに良くても、勇者クラスの評価は「可」だったほど。
再入学した今、また同じ課題を突き付けられているシオ・タイオー。

「勇者2年生!キラホシ・スペックで~す☆」
「同じく勇者2年生!キラヤバ・スペックで~す☆」
『私たち、歌って踊れる『アイドル勇者』を目指してま~すっ☆彡』
双子の勇者女子「キラホシ・スペック」と「キラヤバ・スペック」は、軽く自己紹介をした後、
レポートをアデリー先生に提出して、アイドルクラスの教室に走って行った。

背の低い小さな少年が教壇に上がって話し始めた。
「僕はモモタ・ラッカ。勇者2年生です。勇者としてはまだ駆け出しです。
僕は仲間のことを気遣い思いやる「優しい勇者」になりたいです。
僕はチームメイトのバン・ケン君、エテ・フエテ君、キジ・ムウナ君と、
学院を卒業した後も、パーティーを組みたいと思っています」
ひとしきり話したモモタは教壇から降り、レポートをアデリー先生に提出した。

シオ・タイオーは「なりたい勇者」についてのレポートを書き上げ、アデリー先生に提出した。
今回はニッコリ笑って「後で職員室に来なさい♡」とは言われなかった。

「再入学したシオ・タイオーの様子は、どうなの?」トルテ学院長はアデリー先生に聞いた。
「自分のなりたい勇者がまだ見つからない…レポートにそう書いてあったわ。
まぁ、焦る必要はないわね。ゆっくり時間をかけて「なりたい勇者」を探していけばいいと思うよ。
今のシオ・タイオーくんなら大丈夫ねっ☆彡」
アデリーがニッコリ微笑んだ先には、
チームメイトのシッソナ姫、ジミナ、タイラーと仲良くお昼を食べながら、
年相応の笑顔を覗かせているシオ・タイオーの姿があった。

ーおわりー




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