Nicotto Town


ガラクタ煎兵衛かく語りき


金具師




僕の父親は金具師だ
立派な仕事をしていると思う
僕もその跡を継ごうと生まれた時から思っていた
うちには古い旋盤しかないので
勉強して進学して その専門校でもっとすごい技術を得たいと思った

父親の賛同で進んだ学校で
1mmの1000分の1のサイズを研鑽しなければいけない環境で
ひたすら学んで 手に技を覚えて そして誉められたら素直に嬉しかった


それから数十年後 事実を知った
私は武器の一部品を作っていたのだ
私の作った砲身は いったい何人の人を殺めたのだろう
1000分の2だったら どれだけ人を殺さずにすんだのだろう
1000分の3だったら そもそも今頃畑を耕しているのだろう

不毛の地となったロシア南部で何かを呪いながら鍬を振るっているだろう



僕の父親は金具師だ
立派な仕事をしていたと思う
僕もその跡を継いだ


今これを読んでいるあなた
あなたは結果を知っているんでしょう?

いや 教えて下さらなくて結構です
どうしてって?
今 私は愛するロシアの大地に横たわり
来春の(放射能まみれの)小麦の養分になるべく 父の夢を見ています

立派だった父 手先の器用な父 こんな近くで
父と一緒にいられるのが とてつもなく嬉しいのです
パカパカ





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