Nicotto Town



料理は愛情【3】ノエルのお弁当【終】

今日は学院内の中庭でお昼を食べることになっていた。

「ブランさん、こっちですぅ~」マリアが手を振っている。
「遅いぞ、ブラン。ん?その弁当箱は?」と、トリオン。
「教室から出てくるなり、ノエル姉さんが…」ブランの顔色を見てトリオンは察した。
「早く食べましょう。昼休み、終わっちゃいますぅ~」
「いただきます」と手を合わせて、自分の弁当箱を開けて食べ始めるマリア。
「そういえば、今日の弁当当番は誰だ?」トリオンはご飯を食べながら質問する。
「ティルトさんですぅ~。お母さんのトルテ学院長さんにもお弁当を作ったんですぅ~」
「ああ、だから今日は「後で学院に行く」って言ってたのか…」トリオンは納得した。
「ブランさん?どうしたんですかぁ?ノエルさんが作ったお弁当、食べないんですかぁ?」
ブランは弁当箱を開けるのが怖かった。またいつものように『ぐちゃぐちゃのカオス弁当』に違いない。
だが、いつまでも弁当箱を眺めていても埒が明かない。意を決して、ブランは弁当箱のフタを開けた!
ブランは目を見開いた。弁当箱に入っていたのは、いつものカオス弁当ではなかった。
見かけは多少悪いものの、至極全うな「ごく普通のお弁当」だった。
しかも、おかずは、ブランの好きな物ばかりである。ブランは、恐る恐る箸を伸ばし、卵焼きを一口食べた。
「うまい…」ブランは素直に感想を言う。自分の好みのだし巻き卵だった。
おかずに、ご飯に…。ブランはノエルの弁当を食べ進めていき、気がつけば弁当を食べ終えていた。

「ノエル姉さん。弁当、美味しかった。ありがとう」という言葉と共に返ってきた空の弁当箱。
ノエルはそれだけで十分嬉しかった。嬉しくて弟のブランを思わず抱きしめてしまうほど。
それから、ノエルはマリアたちと弁当を作りながら料理を学び、
フツツカ魔法学院のミツコ先生の料理教室に通うようになった。
ミツコ先生の所で習った料理は、習ったその日に作って復習した。
母のタバサが言っていた『料理は愛情』の意味がほんの少しだけ分かったような気がしたノエルだった。

ーおわりー




Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.