Nicotto Town



ナナイロ村に里帰り【3】ヤツハシくん

ナナイロ村に帰ってきたトリオン・ビリオン兄妹と看護兵のマリアは、実家(村長の家)に泊まる。

夕食時に父のマンサクに「それで、マリアさんとはどこまでいったんだ?」
と、根掘り葉掘り聞かれて戸惑うトリオン。
「美味しい~、それにカラフルですぅ~!」マリアはセンリの手料理に舌鼓を打っていた。
「ナナイロ村の名前の由来になっている「七色」は、虹だけじゃないのよ。
この村の色鮮やかな野菜や鉱物から「色」が取れるの。色鉛筆や絵の具の顔料になるのよ。
ナナイロ村の「特色」をもっとたくさんの人に知ってほしいから、
うちの人(マンサク村長)は、画家を何人か呼んでアトリエ兼画材屋の『色工房』を立ち上げたの」
センリは、夫のマンサクの代わりに村おこしのことをマリアに話して聞かせた。
「ナナイロ村で採れた色は、食べ物にも使われているんだよ。
あ!そうだ!明日、ヤツハシくんの所に案内してあげるよ!」

次の日、ビリオンは、マリアをヤツハシくんのお店に連れて行った。
「ナナイロ村銘菓『ナナイロ生八つ橋』?」
「いらっしゃい~!何や、ビリオンちゃんやないどすか!いつ帰ってきはったんどす?」
京都弁を話す店員らしき女性が声をかけてきた。
「昨日、帰って来たの」
「そうどすか…ケイタはん!ケイタはん!」
「マイコはん?どないしはったん?」店から男性が出てきた。
「ビリオンはんとお客の看護兵はんにお茶とお菓子を早うお出ししなはれ!」
「はい、ただいま!」ケイタは完全にマイコの尻に敷かれているようだ。
「あの人が例の「ヤツハシくん」ですかぁ?」
「そう、ケイタ・ヤツハシ。皆は「ヤツハシくん」って呼んでるわ。そして、こっちが…」
「マイコ・ヤツハシどす。ケイタとは夫婦(めおと)なんどす」
「マリア・アレックスですぅ~」
「ビリオンちゃん、この娘がアンタのお兄はんの「ええ人」なんどすか?」
「そうだよ。と~っても仲良しなんだよ!ね、マリアさん!」
「はいっ!トリオンさんにはいつもお世話になってますぅ~!」
「おまっとうさん。抹茶とナナイロ生八つ橋や。おたべやす~」
ケイタが抹茶とナナイロ生八つ橋をお盆で持ってきた。
「赤・橙・黄・青・緑・藍・紫…本当に「七色の虹の生八つ橋」なんですねぇ~」

一方その頃、フツツカ魔法学院では…。
「ブラン・ヨーク、あなたを学院に呼び戻したのは他でもありません。
あなたには「吟遊詩人クラス」の担当教師になってもらいたいのです」
「僕が教師に?僕を退学にした学院長が…一体、どういう風の吹き回しだい?」
「理由は…私の武具工房に行ってから説明します」

「あなたが学院を去ってから、楽器になりたがる子(武装原石)が急増したの。
ナローケイ現象の影響で異世界クラスが新設される前から吟遊詩人クラスの人数が増えたわ。
例の事件が一人歩きしてあなたに憧れる生徒たちが出始めたからよ。
あなたが在学中の時は、吟遊詩人クラスすらなかったというのにね。
それに、創成された楽器たちがあなたの笛の音を聞きたいって言うのよ。聞かせてあげて」
「分かりました…」ブランはフルートを吹いて音色を奏でる。
楽器たちは嬉しそうに光り、ブランの周囲をグルグル回り始めた。
「いいよ、吟遊詩人クラスの担当教師になっても構わないよ。ただし、ひとつ条件がある」
「条件?」
「今、学院に残っている生徒さんたちを何人か貸してもらえないか?
ゴールドピーマンに囲まれて難儀しているメンドーサ隊に人を回したいんだ」
「ゴールドピーマン…ああ、もうそんな時期なのね。分かったわ、許可します。
ただし、生徒に声掛けるのは自分でやってね」
「ありがとうございます。では、さっそく…」
「待ちなさい、ブラン!声掛けついでに生徒を口説かないように。
あと、娘のティルトに手を出したら承知しませんよ?」
トルテ学院長は、ブランにきっちり釘を刺した。

ーつづくー




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