刻の流れー30
- カテゴリ:自作小説
- 2023/01/26 08:00:00
次の日から、要は働き口を探しに、新開地の繁華街まで足を伸ばした。新開地は、アキラの住む町から地下鉄で西に数駅のところにある。三宮でうろついては店の誰かに見つかるかもしれないと考えたのだ。元町、三宮に比べて、新開地はどことなく寂れた町という感があった。治安もあまりよくない。痛い足を引きずりながら何軒か店を回ったが、どう見ても家出して来た高校生丸出しの要に店主達は首を横に振る。問題には係わりたくないのだろう。雇ってもいいような事を言う店でも、足が不自由だと判ると治ってから出直して来いと言う。毎朝、今日こそは、とアキラのアパートを出て、繁華街を一日中歩き、しおしおと夕方には戻ってくる。そんな毎日が続いた。
いつまでもアキラの世話になっているのが心苦しい。いずれは出ないといけない、その焦りが日に日に強くなっていく。足はと言うと、ここに来てそろそろ2週間が経とうというのに、あまり状況は変わっていなかった。日にち薬なのだ。一枚ずつ薄紙を剥がすようにしか治らない。それに加えて、本来なら、医者の言うように、ゆっくりリハビリをしながら筋肉をつけていかなければならないところを、お構いなく酷使するので、遅々として回復しない。それどころか、ある朝、はれ上がった関節が痛くてまた動けなくなってしまった。不安と焦り、何も出来ないふがいなさ。要は八方塞がりとなってきたのだ。
2週間行方の知れない要の消息を知る為、原田は峠に毎日のように足を運んだ。ギャラリーを捕まえては、要の写真を見せて話を聞く。幸運な事に、要が結構目立っていたおかげで、簡単に要を見た事がある人間が何人か見つかった。その結果、原田は最近つるんでいるアキラ達にたどり着く事が出来た。
アキラ達の働く店は、高架下の大衆食堂だと言う。上を線路が走っていて、何分か毎に、店全体が揺れる。昼間の客が大方去った午後2時過ぎ、アキラが一人でテーブルを拭いているところに、ヘルメットを脱ぎながら原田が入ってきた。
「すみません、お昼は終わりました・・・」
そう言いかけたアキラはヘルメットの下の客の顔を見て手に持った布巾を取り落としてしまった。
「ああ、すまん。ちょっと人を探してるんだが。」
原田は、かまわず店を見回しながら、言った。
「ここで、石上アキラって子が働いてるって聞いたんだ。」
憧れの原田から自分の名前を聞いて、アキラはますます驚いた。
「ア.アキラは、俺ですが。」
アキラがどもりながら答える。原田は、初めて目をアキラに向け、「おっ」言う顔をした。
「確か・・・病院で会ったな。」
そう言ってから、原田はこの青年に会ったのは、病院が初めてでなかったことに気が付いた。ギャラリーにはいつもいやと言うほど騒がれる原田だが、センスの良いやつの事は結構覚えているものだ。病院でこの青年に会った時も、その顔に見覚えがあると思っていた。それを今、思い出したのだ。確か2年ほど前に表六甲から丁字まで走ったとき後ろにぴったり付いてきた青年だ。
「ああ、あの時の・・・」
原田が懐かしそうな顔をした。
「仕事中で悪いんだが、要を探しているんだ。」
思い出したように、原田が言った。
「退院してから、あいつに会ってないか?」
憧れの原田に話しかけられて嬉しそうだったアキラの表情が急に強張った。
「あ・・・あの、親父さんに時間貰ってきます。」
そう言って一旦奥に消えたアキラは数分で戻ってきた。
「要とは、しばらく会っていません。」
アキラは、原田と目を合わせないようにしながらそう嘘をついた。
原田はしばらくアキラをじっと見ていたが、
「そうか。」
と、ため息をついた。
「俺は走ること以外はまるっきり不器用な人間だ、単刀直入に云う。」
そう切り出した原田は要のことを話しだした。頷いているアキラを環とハルが奥から羨ましそうに見ていた。
しばらくして原田は帰っていった。環とハルがニヤニヤしながら寄ってきたが、アキラはしきりになにか考え込んで、遠くを見ていた
今日ラスボスの一気入力して ちょっと時間ができてきてん^^
原田さん心配して探しに来てくれたみたいですね。
要くんについてどんな話をしたのかな(´ω`*)