Nicotto Town


ガラクタ煎兵衛かく語りき


サイエンスじゃないフィクション②





風が吹いている
日ごとに強くなっているような気がする
もちろんたまには無風の日もあるけど
でも、私が幼かったときにはもっと穏やかだったはず


風が吹き続いている
日ごとに強くなっているような気がする
もう気のせいだとは誤魔化せない


いつも昼過ぎにはあそこの切り株で煙草をくゆらしていた
イリャードフは今日はいない
真っ赤に目を泣きはらした彼のお母さまにお逢いしたときは
私から言葉を濁しその場を離れた

駅員がみんな年寄りになっていた
ゲオルギーも幼馴染のイリヤもロジオンも駅舎にはいなかった


村から若い男性がいなくなっていった


風が吹いている
日ごとに強くなっているような気がする


来週モスクワに行く用事がある
そこで私は何をするんだろう
いったい何ができるんだろう
世界は何処へいくんだろう




イリヤ 待ってます
お願い 生きて帰って





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