Nicotto Town


ガラクタ煎兵衛かく語りき


吸血鬼に輸血を




その吸血鬼は、主人公である”れい子さん”に敗北した
(要するに血を吸わせてもらえなかった)

吸血鬼は血に飢えてフラフラになりながら夜の街にさ迷い出た
『血が欲しい! 血が足りない! 時間が無い!』

その時だった
霞みゆく彼の眼の片隅に こんな大看板の文字が写り込んだ




【ち】


『助かった! あそこまで行ければ私の身に新たな血を供給できるかもしれない』
でも遠かった ギリギリの最後の体力を振り絞りながら
吸血鬼はその大看板を高い屋根の上に冠している
何かの病院と思われる建物の前までなんとか辿り着き 
希望の眼差しで再びその大看板を見上げた
だが無情にもそこにはこう書かれていた











【ぢ】

絶望の中で吸血鬼は夜のとばりの中に雲散し霧のように消えさった
(実際にはコケていた)




以上が 武石りえこ著 「れい子さんが行く」の第11章のシノプシスである
1980年前後 小学館発行の〈プチコミック〉誌で 全45話にわたり連載され
それらはすぐさまコミクス2巻にまとめられ 今も私の書庫の一角で鈍く光っている



以上の文章を書いたのは 今日帰り際の車窓から見た風景の中で

【ち】

の大看板が一瞬見えたからである
れい子さんの愛らしいカールした前髪が偶然脳裏に呼び覚まされた
ああ あの建物の近くで 一体どれだけの吸血鬼が
自らの最期のときを遂げたことだろう
いや 今でも




チサン(地産)マンション
今はもう外資の会社
倒産した後でも残っているあの【ち】の大看板
昔の佳き読書体験を思い出させてくれて本当にありがとう

アバター
2022/10/27 19:19


なるほど、、、




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