頑固老人の外食風景(フィクション)
- カテゴリ:日記
- 2022/09/30 17:50:17
〇月〇日 某ラーメンチェーン伝にて
オーダー品 時計台ラーメン(あっ、書いちゃった)
運ばれてきたラーメンを見るなり、頑固老人は声を張り上げた
「小皿ください!」
二度手間で来た小皿に、老人はラーメン丼ぶりに飾られた海苔数枚を
慎重に排除した
海苔がふやけてスープに流出する前に無事に回収できた
麺をすくって、一口食べた 固い
老人にはゴム紐のように感じられた
方針転換 上部のモヤシ炒めを食べ始める 薄いチャーシューを食べる
スープを飲む シナチクを食べる
数分後 器の中には ただただ麺だけが残された
最初の一口以外の全ての麺が残された
立ち上がり お勘定する
殆どの麺と海苔数枚を残したまま
一言も発さず 勿論全額を払う
店を出る 空腹感のままに
△月△日 某町中華店にて
オーダー品 唐揚げ定食
運ばれてきた料理を観るなり、頑固老人は隅のティッシュBOXから2枚取り出した
1枚は洋皿のすみに盛られたマスタードを丁寧に拭き取り
もう1枚は添えられたレモンをクルックルッと巻いて 視野の外に置いた
その日は充足感で店を出られた
×月×日 小料理屋にて
オーダー品 冷奴 その他
運ばれてきた料理を観るなり 頑固老人は二度とそれを見なかった
豆腐の上には葱と鰹節が乗っかっていたが
最悪なことに既に醤油がかけられていた
これは無視して 次の料理に期待しよう
そして事件が起こった
某月某日 カレーチェーン店にて
オーダー品 soko壱カレー(辛さ1)
運ばれてきた料理を観るなり 頑固老人はせわしなくスプーンを動かした
皿の端に置かれた毒々しい色の福神漬けの漬け汁が神聖な白米を犯そうとしていた
いつもならスプーンで選り分けたら まだ食べられる部分はある
ところが運の悪いことに その日の福神漬けは大量の漬け汁とともに提供された
老人の必死の作業にもかかわらず 清らかな白米の殆どが汚染されつつあった
器物破損と営業妨害で 駆けつけた警官により頑固老人は現行犯逮捕された
公衆の店舗でのちゃぶ台返しの罪の重みはどのくらいなんだろう
後日 会見に現れた公選弁護人は薄笑いを隠そうともせず
ローカル記者達の前でこう言った
「彼の主張は守られるべきです さて それでは 彼は容疑者なのでしょうか?
あなたも 私も 実は 彼自身なのではないでしょうか?」
札幌の片隅で ひとつの案件が不起訴処分になった
かって高倉健は云った
「頑固ですから」
老人は鼻息荒く、カメラのシャッター音のなか
喧騒に消えた
ああ
福神漬けは、いらないと、、オーダーする時に言えばいいですよ