Nicotto Town



南の魔女クレア145


ハタルが馬車を操りマキバルはクレアが居ないと村の外に出れないので仕方なしに其の馬車にクレアも乗せて小さな港町の金貸し業の親方達がたむろしている宿屋に其の男を返して貰う交渉に行きました。
どうせ後数日で死ぬので其の前に船から海に落とすつもりだった業者は元の条件に戻すならとあっさりと虚ろな目と碌に一人で歩けもしないもしない男をつれてきました。
クレアは此の男が働きに来なかった日数は払わないと其の業者の首根っこを摑まえて怒鳴りました。
クレアを取り囲んだ荒くれ男達をバシッ!バシュッ!と風の魔力で吹っ飛ばすと「私が納得したとでも思ってんのかい!おらぁ~あ!クレアが喜んでこんな使いもんにならないヘタレを納得して連れ戻しに来たとでもおもってんのかぁあ、ごらぁ~あ!クレアは機嫌が悪いんだよ。此れ以上ごたごた抜かすとごたごたぬかすとよくわかんない竜巻に飛ばされて二度と土をおがめなくしてやんぞ!」と怒鳴りました。

クレアがモゾリアナ国とキリシマリ国との戦争で船を何艘も沈めた話はもともとモゾリアナの首都から来ていた此の業者は知っていました。
真っ青になった彼は直ぐにクレアの言う事を聞いて此の港町に連れてきていた分は差し引く事に承知しました。

クレアは「お互いにまっとうな商売をしようじゃないか。此れからも長い付き合いにしたいんだろう?」と其の親方を顔をしたからにらみつけると吐き捨てる様に言いました。
マキバルは余りのクレアの変貌にガタガタとおびえて声も出ません。とりあえず其の男に毛布をかぶせると馬車に其の場に居た男に手伝わせて乗せました。
其れを見たクレアは其の毛布が来客用のふかふかの毛布だったのにきがつくと「マ~キ~バ~ルゥ、其れは客用の毛布でしょうがぁ、よごれるじゃないかぁ、そいつに毛布なんぞひつようないわぁ!」と怒鳴りました。
マキバルは震えながら「僕が新しい毛布を弁償するから」とかぼそい声で言いました。「きっとだからなぁ、必ず弁償しろよ。」と言うとクレアが馬車に乗るとハタルが馬に鞭を打って走り去りました。

其の場に居た人達はボーゼンと立ち尽くしてからしばらくして、あれが船を何艘も沈めた魔女の傍で見た普段の様子なのか「恐ろしい女じゃ」と噂し合いました。

マキバルは取り合えず彼を死ぬ前に取り戻せた事と彼を此れからどうしようかと考えてクレアが口汚いののしり言葉を使った事にも気が回りませんでした。
ハタルはやっと自分が前に仕えていた魔女が時々怒り狂って放つ言葉が聞けて懐かしくまだ興奮冷めやらぬクレアを横目に見て馬を走らせていました。

修道院に付いて季節労働者の宿舎になっている修道士館の一室に彼を運ぶとベットに寝かせても骨に皮が付いたような体とあちこちの傷が化膿して膿をながしている姿にオロオロするばかりです。
マキバルは意を決してクレアに「魔女の回復薬」を彼に飲ませてくれる様に頼みました。

クレアは冷たく意地悪な目でちらとマキバルを見ると「良いわよ~ぉマキバル売ってあげる。」とほうがいな値段を言いました。
そんな高額な値段で売ってない事を知っているマキバルは「もういいよ。バロルド先生に見て貰う。」と言うと人形の人型使用人にバロルド先生を呼ばせに行きました。

彼は「魔女の回復薬」を薄めたのを飲ませると傷の手当てをして彼を使っていた男達も骨を折ったりして使い物にせずに抵抗力を無くす程度に痛めつけていたので此れで治るだろうと治療をしました。
マキバルはバロルド診療所が村人が彼が人が良いのを良い事に治療費を農作物で払ったり酷い時は踏み倒しているのを知っていて父親の後を継ぐと言う彼に付いて来た奥さんはそんな生活に耐えられずに離婚して帰るほどお金に苦労しているのを知っていたので請求された治療費の倍の金額を往診代もあるからと払いました。

其の姿にケチなマキバルが何をやっているのかと驚いてクレアは見てました。

薄めても「魔女の回復薬」ですので其の男は次の日にはみんなと同じ食事を取ってマキバルが体を洗ってあげながら「こんな所に来る生活を何時までもしていては行けない。借金を返し終わったら真面目に働くんだよ」と言って新しい作業服を着せてやると昼過ぎからよたよたとしていますが農場に働きに出ました。

マキバルがクレアにお金を持って来て新しい来客用毛布を買ってきて欲しいと頼むと「どうせイドエルが使うのだから洗濯すれば良いんじゃないの」と言いました。

マキバルはお金を引っ込めながら「ありがとう」と言うとクレアは黙って翻訳の仕事をし始めました。

其の男は次の年は借金の方に此の農場に来る事は無く真面目に木工場の仕事をしているそうでマキバルに言わせると「悔い改めた」と言うのですが子供の時からクレアはお母様が行かなかったので教会に行く習慣がありませんでしたので良く解らないのですが其れまでの事を反省して真面目に働く事にしたんだと何となく解釈をしました。

彼を変えたのはマキバルの事だけではありませんでした。長い事クレア農場が金額が良いので定期的に来ている季節労働者にとっては当たり前の光景でしたがクレアが柴を刈ったり薪割をしている事でした。
庭師を雇わないのはクレアが伸び切った柴や余計な木が生えて来るとイライラして鎌と斧で切り倒して薪にしてしまうのです。

他の季節労働者に自分達の食事の厨房の薪は総てクレアが作っていると言われて黙々と薪を作っていて柴をまとめている自分達と同じ農作業服を来て女ながらも黙々と誰もしたがらない一番下っ端がする様な作業をしているのを通りすがりに見て何か思う所が在った様です。

此れだけ広い農場の農場主で魔女としての力もあるのなら豪華な服を来て優雅な食事をして大勢の使用人達をはべらかせてふんぞり返っていても良いはずですがクレアには彼が見たクレアはそんなそぶりは在りませんでした。
更に食事の内容が来客が無い時は殆ど自分達と同じのを食べていると聞かされて更に彼は驚きました。
長い事此処に季節労働者として通っている彼が言うにはクレアは魔女としての姿と本来の姿があってあの汗をかいて薪割をしているのが本当のクレアの姿で其れを見れるのは塀の中に入れる俺達だけだと教えられました。
彼は色々とひがむ生活をして世の中を恨んで自分だけ不幸だと自暴自棄になっていたのがクレアの裏の姿を見て人前では魔女として虚勢をはっているが実は黙々と誰もしたがらない仕事を一人でしている姿に何かを感じた様でした。

クレアにとってはじっと机に向かっている翻訳の仕事にイライラしてそう言う時は無心に柴を刈ったり薪を割って心のバランスを保つと庭師のモーグに教えられたのを未だにやっているだけで此の修道院の生活はクレアにはストレスが貯まるのです。


彼が此の農場で働いている間はクッキーが出るようになったクレアは其の間に此れまで翻訳したページに書いてあった魔法の事を実行してみる事にしました。

書いてあった恐らく呪文であろう言葉をかけると突然花が大きくなって慌てて「止まれ」と念じましたがとんでもなく大きくなった花を前に唖然としました。

どうやらあの魔法の本は使い方を間違うと大変な事になりそうな気がしました。

取り合えず此の大きくなった花は誰かに見つかる前に処分しないと行けない様な気がしてクレアは其れを「魔女の城」の庭に捨てに行きました。






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