Nicotto Town


ガラクタ煎兵衛かく語りき


エナメル線



小学校3.4年の頃の話です
大会社の各地の社宅に(親が)連れまわされる時代です
1.2年ごとに変わる環境です
家も(子供の)学校も当然変わります

庭には先住者の好まれた植物や佇まいが残されています(いたはずです)
そんな趣なんかは鼻たれ小僧には関係ありません
「僕は池を造りたい」
「穴を掘って、ビニールシートをひいて、水を張って、(川)魚を飼いたい」


魚なんてどこでも近所から調達できる
現に父は釣の太公望だった(専門は海だったが)
様々な竿やリールを休日には玄関で手入れをしていた
息子の私にさえ竹竿の5連7連を与えてくれた(次⁽つぎ⁾竿のことである)
漆細工でしなやかで、さらには浮きの種類を教えてくれた
細い棒浮き、ダイヤモンドを細長くした形状の浮き(これが大好きだった)
丸い球浮き、それらを釣り糸に通したゴムで固定しながら漸次位置を調節をする
錘の鉛板、釣り針の大きさ、釣り糸の太さ(細さ)を伝授した後
父は最後に言った
《決め手は餌だ》
当時はルアーは一般的ではなかった


小学校6年の家の前に池があった
綺麗な池ではない
沼といっていいかもしれない
結構広かったが、何せ石炭を燃やした灰ガラを投棄する
御近所数件の御用達沼だったのだから生物学的には最悪である
でも、近所の子供達(私を含む)からはこう言われていた
<ここには主(ぬし)がいる>
要するに大ナマズである
これを釣り取ったら天地が引っ繰り返る




12,3年前に1度行った。往時は炭鉱の民家で栄えていたが
もはやその時は誰も住んでいず、沼の現況を調べるには
熊除けのラジオをがなりたてるしかなかった
かって人間の棲んでいた場所は自然に還っていた
家の端にあった梨の木は見失った




さて、エナメル線。
小学校3.4年生の頃に戻ります

エナメル線の説明です
銅線の被膜にエナメルを塗布した電線です
その被膜を削って、電球なり、モーターなり、を接続すれば
通電し、可動します


魚のほうにえらく引っ張られましたが
実はその当時の私の夢は
『庭が電球で煌めいて、池がキラキラしてたらいいな』


たったそれだけなんです
電池だとか、100Vなのかまるで知りません
ただ、居間の窓から電気の魔法を見たかっただけなのです

豆電球もそのソケットもエナメル線も絶縁ビニールテープも
そんなに高くなかったです

でも実現しなかった
私の最たる悪癖です
いつでもできると思っていた頃にいつものように転校です




北海道では恵庭が有名でしょうか
その季節になると各家庭が電飾で夕方からその庭を輝かす
いや、他のあらゆる各地でもお馴染みでしょう
そしてその導線は多分
エナメル線ではないでしょう

ホワイトイルミネーション、あと、詳しくないのですが
各地にその名を誇る様々な電飾の美はもはや定番です

あの頃、小学生だった私は日本中にいたんですね
電力の心配さえなければ、輝き続けて欲しい
カーボンフリーの呪縛を抜けて


あっちでエナメル線売ってるかな?
エナメルスカートも売ってるかな?
脚腰めっちゃ細いから似合うかな?



失礼しました





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