第22話 青空の行方~ゆくえ~
- カテゴリ:自作小説
- 2022/07/17 23:11:45
拓海は、暮れきった夜の道を、ゆっくりと歩いていった。
朝からの雨はすっかりあがって、天空には三日月。触れば指が切れてしまいそうなくらいの、尖った月だけが、その淡い光を投げかけている。
ほんの少し前のようでもあるが、実は時間はかなり経過している。そして楓との会話が頭の中でずっとぐるぐる回っている。
拓海は、ところどころ街灯がぼんやりと照らすアスファルトの舗道を歩きながら思い出していた。
「やあ、どうしたんだ?」
女子寮の個室にはさすがに入ることができないので、拓海と楓は共有スペースでもあるラウンジで待ち合わせってことになっていた。
ラウンジに入ると、所在なさげにスマホを手にした楓がベンチに座っていたのが見える。
心なしか、少し憔悴しているように見えた。
「あ、拓海クン ごめんね…」
「いやいいんだけど…何があったんだい?
拓海は楓の前にあったスチール椅子に腰かけてみる。
「あ、うんえっとね…」
「うん」
楓は少しだけ微笑むと、意を決したように
「あのさ… わたし好きな人がいるんだ」
「…」
楓の言葉は、拓海が全く予期しないものではなかった。
好きになった女の子のことだ。その反応や一挙手一投足を見つめていたのだから、それくらいのことは分かっていた。
「でね、思い切って、彼に電話したんだ。昨日の夜なんだけどさ…」
「… うん…」
楓が好きなのは涼だろうな…と心の奥でぼんやり考えながら話の続きを待つ拓海。
「でね…振られちゃった…」
「えっ 振られた…?」
楓は少し寂しそうに微笑むと、両手をテーブルの上に伸ばして顔を突っ伏すように
「そんな気持ちになれないんだって。涼クンは…」
そこからどれだけの会話が紡がれたのだろう。
拓海は、一生懸命慰めの言葉や、楓に寄り添うような発言をしていたはずだ。
それも、かなり長い時間。
うっすらと自意識が戻ったのが、夕方だったのでそれは何となくわかって。
いつ楓と別れて一人になったんだろう?
覚えてないな~…
しかし、なぜ楓が、涼に振られた話を拓海に話したのかはわからなかった。というかわかりたくなかった。
そんな話をするってことは、楓の心がこれっぽっちも拓海に向いていないという、そんな悲しい真実に目を背けたのかもしれない。
街灯を無意識にひとつひとつ目で追いかけつつ、その足は自室に向かっていた。
やはり自分が好きなのは楓だったんだな…と今更のように思いが胸を駆け巡る。
そんな時だった。
「拓海…?」
彼の背後から名前を呼ぶ声が聞こえた。
(続く
脳は不思議
断片的なアナログ世界を繋ぎデジタルに変えて物語りとして再現する。
けーたん!
わたしに才能をくださいなのですw