■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義(63)
- カテゴリ:その他
- 2009/10/20 19:31:48
■近代文藝之研究|研究|文藝上の自然主義|九 (3)
他の一方、印象派的自然主義の主張は、結局一旦斥けた作家の主觀を或る方式で再び挿入しやうといふのである、作家が一旦自然の事象を感受して、自分の印象に纏めてそつくり再現しやうといふに歸する。前に擧げたシュタイン氏の情趣説の如きが即ち此の論に該當する。また繪畫上の印象派が自然に忠ならんとするの極、自家の印銘を主とし漠然たる大體の自然を描いて、寫實的の細寫を避けるの意も是れに外ならぬ。ドイツでは更に之れを徹底主義(Konsequente Naturalismus)と呼び千八百八十七年頃から抒情詩人ホルツ(Arno Holz)氏等が首唱してハウプトマン氏の劇『日の出前』に實行せられたと稱する者である。
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*註1:他の一方、
原本ではこの文頭は前ページの文末より改行なしでつづいている。
*註2:自分の印象に纏めて
「分」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/hun_wakeru.jpg
*註3:シュタイン氏の情趣説
「情」の正字体。「月」は「円」。
「説」の旧字体。旁は「兌」。
*註4:細寫を避ける
「避」の旧字体。「シンニョウ」は「二点シンニョウ」。
*註5:ドイツでは更に
「更」の旧字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/sara.jpg
*註6:抒情詩人
「情」の正字体。「月」は「円」。
*註7:ホルツ(Arno Holz)
アルノー・ホルツ(1863年〜1929年)。ドイツの作家で評論家、詩人、戯曲家。『芸術、その本質と法則』(1891年)で“徹底自然主義”を提唱。また一瞬一瞬、秒刻みのように、細密に対象を描写していくという“秒刻体”を唱え、作品上でも実践している。
*註8:稱する者である
「者」の正字体。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/moji/mono.jpg
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■抱月『近代文藝之研究』を註記なしに通しで読みたいかたは、こちらをどうぞ。
http://www5e.biglobe.ne.jp/%7Ehanadada/tougetsu/kbk_tobira.html
お友だちらしいことはなにもできそうにありませんが、
どうぞよろしくお願いします。m(_ _)m
迷惑じゃなかったでしょうか?