Nicotto Town


ガラクタ煎兵衛かく語りき


悔恨





10年以上前にここで書いた記述
音楽の三つの要素
メロディー、リズム、ハーモニー

だって、そう教えられてきたから
そう思い込んできたんだ


ホントは気付いていたのに
今この段階で認識できた
(いや、単に迂闊だったのですが)
今日初めて言語化できることを慶事としましょう


音楽に欠かせない要素の四つ目を認識(発見)しました
これを書く時点で検索しましたが、既にもうありました
恥ずかしい
一番近くの存在だったはずなのに


それでは発表します
それは

音色
tone color
timbre

当たり前ですよね
万人が納得します
これはメロディー、リズム、ハーモニーの範疇には入りません
(ハーモニーにはギリひっかかるかもなんだけど、
単音、復音の行使力で却下できます)



実は落ち込んでいます
そんな認識など持ち合わせず
それでも、ひたすら新しい音、面白い音、綺麗な音、突飛な音を
当時に出始めた、それも安価なシンセサイザーで
(安価でも20万円以上)
追い求めた若き自身が愚かに思えてきたからです


そうか、人よりも早くシンセサイザーに飛びついたつもりが
その可能性、いや、存在性に気付いていなかったというヲチなのか



音色
tone colorというのは多分直訳でしょう
timbreという単語は私には未知でした
ググって発音してもらうと、『タンバ』としか聴こえません
そんなの知りません
聞いたことありません


そうだよね
好きな曲、好きなフレーズのあちこちに素敵な音色があるはず
印象的な声(声も音色です)、スラップベース音、エフェクター音
ギターには大抵 tone というつまみがある
ま、レスポールとストラトでは数が違うし

テレキャスターはよう知らん
でも、(入手して)その魅力を知ることができたら最高だね
間に合うかな



音色かあ
そう、シンセって、たくさんスライダーとかつまみとかスイッチがあって
たとえば松本零士描く船内には計器や操作ボタンやモニターがあったよね

シンセを操作している(いじってる)感覚は航宙飛行感に満ちている
ここをこうしたらこんな音が出て
ここをこうしたら全ておしまい(キャンセル)になって
ここをこうしたら元に戻ったり
ここをこうしたら戻らなかったり
ここをこうしたら全く別の音が出たり
ここをこうしたら、そうして新しい旅が始まる

ここをこうしたら、こんな訳のわかんない銀河系に来ちゃった
ここはどこ?
ここは音があるの?
ここは声が出せるの?
ここは歌えるの?

音を発する
周波数は限られている
相手に通じない
仕方なく周波数を拡げる
少し反応があった
今度はその周波数で低域、高域のレンジを出来る限り解放する
反応度が前より上昇した



「歌ったらどうかしら」
透明な存在になりつつある愛子が業を煮やして船長に進言した



愛子!
ここにいたのか!


「演奏はお願いするわ。私は声を出す」

すべての沈黙の後
すべての瞬間の後
船長は覚悟を決めて自室に戻り
幼少の頃から肌身離さず手許に置いていた
古き時代のトランペットを携い、艦艇室に彼の位置を決めた
「全員、聴いてくれ」
船長のアナウンスが艦内に届いた

「我々のあのタリアンへの調査任務から、そしてその後から
新しく着任した、全ての艦員に告ぐ」

すべての搭乗員、検査員も、戦闘予備軍も、医務員も、供給員も
船長の次の言葉を理解していた

<ああ、とうとうきた> <使命を果たすわ> <さようなら>


その瞬間、愛子の思考波が艦内を巡りまわった
それは電流の1億倍の速さで伝えきった







結局その船は安定的な星域の、ある星に辿り着き
その後、プランテーションを果たした
船長のトランペットは一度も奏でられないまま
その星のミュージアムの最上階に飾られた

愛子の存在は忘れられていた
彼らの記憶から消されていた
誰に?
愛子の存在はそもそも認識されていなかった
ミュージアムの説明文にはこう記載されている
『地球(マザー)からの唯一の遺物』





多くの艦員を安定した地に導いた船長は
その功績を認められ平和にその後の時を過ごした
そしてやがて死期が訪れるときを迎えていた


穏やかな朝
お迎えが来た、と思ったらそこに愛子がいた
「ああ、そういうことだったのか」
船長は声を出す力は無かったが、納得し、自分の中で呟いた


「お久しぶりです」愛子は、かって遠くの星域まで
自らを運んでくれた責任者に、最大の敬意を込めて
頭を垂れた


お迎えならしょうがない。でも、生涯最大の
疑問には答えて欲しいな

なんでしょう?

俺のトランペットの音色、聴いてないだろう?

そういえば

音を出せるってのは生きてるからさ
だから生きてる限り出し続けるんだ

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血圧が下がった
計器など必要ない
ナースコールはもう間に合わないだろう
だから最後の言葉を伝えてあげる

《私はギリギリだったの。透明のままじゃあそこには行けない
そこにあなたが拾ってくれたの。おまけにあの船は大成功よ
私は容易に存在を消せたわ。そして今の私がいれるの》


船長は(お約束通り)眼を開けた。

最期の一言

「音楽に欠かせない要素の四つ目を認識(発見)しました
これを書く時点で検索しましたが、既にもうありました
恥ずかしい
一番近くの存在だったはずなのに」


そして息を閉じた



無理やりだな
まあそれはおいといて







愛子はよりエーテル体に近づき
何よりも彼女の生存が確認できて
片や音楽の新しい要素を自分なりに提示できて
よろしかったのではないでしょうか





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