南の魔女クレア128
- カテゴリ:自作小説
- 2022/06/02 06:51:21
クレアがイドエル達のディナーの買い出しから帰って来て厨房からおいしそうな匂いが広くて大きな修道院館長の建物の中の一角にある1階のクレアの仕事部屋にも漂って来ました。
流石は其れまで在った家庭料理専門のぬいぐるみと違ってコックと言う名前が付いているぬいぐるみだけの事はあります。
クレアのパティシエのぬいぐるみは其れらしき服を着せられていたので解ったのですが普通のウサギのぬいぐるみにしか見えない其れは同じ城で同じ魔女に仕えていた使途の白猫にしか見わけがつかない物でした。
クレアも自分の部屋で其のディナーを食べられると言う事で使いパシリをさせられたクレアの機嫌も美味しそうな匂いで治ってきて鼻歌も出そうな気分でカーテン用に買って来た生地を広げてみたり建築会社からサービスで貰って来た色々な家具のレイアウトの絵が載ったパンフレットを広げてカーテン生地の見本を合わせたりしてました。
予定より早く帰って来たイドエル達の様子が何と無く険しく青ざめている様な雰囲気で流石のクレアも何かあったなと思いました。
マキバルは幽霊ですので村長の家で何があったのかは姿を消して見て居た様で知っていたようですがクレアは業と知らんぷりして何時もより遥かに豪華なコース料理を一人で食べてご満悦で其の日はぐっすり寝ました。
次の朝から朝食が済んで居間に集合した彼らは今後の方針についての話し合いをそれとなく聞き耳を立てていると村に行くのは出来ないので此れからどうするかとか言ってるのでクレアはマキバルに何があったのかを聞きました。
何と村長宅に村人が押しかけて何故ガス管をひく条件がそろっているのにガス管を引かないのかと言うとジルドから来た役人が税金を払ってないからだと言うので村人達がトウニの税務庁とジルドの税務庁に毎年収支申告書は出しているのに請求書を送って来ないので払いたくても払えない状態にしたと村人は迫って其れまでの不満をジルドから来た役人に詰め寄った様で地図を持って村を確認できる雰囲気で無く何とか村長宅に逃げ込んで村長や村長の息子達や村長の使用人達が説得して村人が解散した隙に修道院まで逃げ帰ったと言うことらしいのです。
居間の傍の廊下でマキバルがクレアにだからクレアがガス管を通さない事への裁判をもっと早くにすればこうはならなかったとひとこと言った言葉にクレアはカチンと来て怒鳴り返しました。
「何でクレアがしなければならないの?私は今のままで十分満足しているのに。其れに此のバカでかくて古くて黴臭くて辛気臭い修道士館長の建物をクレアの気に入った館に立て直す為に既に設計図も出来て資材も運び込まれて既にステンドグラスは着工しているのよ。
ここまで計画を立てて進んでいるのにまた一からやり直すと何時出来上がるか解らないわ。私はもう此のバカでかくて古くて黴臭くて辛気臭い建物にうんざりなのよ。工事は直ぐに始まる所なの。今更ガス管なんてせっかくできた床をはがして作り直すなんて嫌よ!私は此のままで良いのに何で私がガス管を引けと言う裁判をしなくちゃならないのよ!」と顔を真っ赤にして髪を振り乱してそこいらじゅうにある物を投げ始めて涙目になって大声で言いました。
ぞろぞろとイドエルを始め他の人も廊下に出て来たのでマキバルはクレアをなだめて取り合えず彼らは今は修道院から出れないので昼食の用意を手配するのでこちらでコックや執事と相談をしようとクレアを厨房の方に促しました。
イドエルが其れを引き留めて居間にクレアを入れてクレアの話を聞きたいと言いました。
クレアはイドエルに答える形で数か月前から村人の総意として村長が来てクレアにジルドの役場に何時までもガス管を引かない事への裁判をかけて欲しいと言って来たけど断ったと言った時にマキバルは村人の事と村の将来の事も考えようと静かにクレアをなだめる様に口をはさみました。
クレアは其れにカチンと来て「何でもクレアがすればよいと言って自分達で何とかしようとしてないじゃない。本当にガス管を引きたかったら裁判でお金を出す前に新聞にリークすれば良いでしょう。何年も申請を出しているのにジルドの役人は非情にも無視して村の老人は冬場の居て付く寒さの中遠い山に行って枝を切って寒さをしのいでいるとか幼い子供をお風呂に入れたくても薪が無い為に何日もお風呂に入れないで病気になる子も出ているとか。」マキバルがクレアの言葉を遮る様に言いました。「森や林がたくさんあって秋の内に沢山の薪が用意できるのでそんな事はないじゃないか嘘は行けないよ。」と言う言葉にクレアは「それだからいつまでたってもガス管が引けないのよ。本気で引く気が無いのよ。新聞社の誰がこんな田舎に本当かどうかを調べに来るのよ。新聞に出したもん勝ちなのよ。一旦出てジルドの役人が何て酷い奴だと思わせれば後で違ったと解っても『お涙頂戴の話』にみんなは飛びつくの!ジルドの役場は批判の的になって直ぐにガス管が引かれるわよ。」イドエルが二人に割って入りました。「クレア、其の話は村人にしたのかい?」するとクレアは肩をこくりと少しあげると「するわけないでしょう。そんな事をすると館ができあがってからガス管が引かれてせっかくできた館の床をはがしてガス管を通す事になるじゃない。」と言いました。
ジルドの役人たちが露骨にほっとした様子を見せました。
イドエルが「で、クレアは何時まで其の館の着工を待てるのかな?」聞くので「来月までにはほとんどの資材が運び込まれて着工する事になっている」とクレアは言いました。
其れまで黙っていたマキバルの傍に立っていた白猫の執事が「僭越ながらクレア様、其の件に関して私目がご意見を申し上げてよろしいでしょうか?」と言いました。クレアが目を吊り上げて白猫を見るとマキバルが「構わないよ。私が許すから言いなさい。」と言うと執事の姿の白猫が「其の館に関してですが此の館を此れからずっと守って行くマキバル様のご意見が反映されてない様に見受けられます。マキバル様のご意見もおとり入れになってはいかがでしょう。」と言いました。
クレアは大きく息を吸うと「あのねぇ、マキバルに任せるとあのイドエル位しか寝る事が出来ないとんでもない部屋が出来るのよ!あんなどこぞの王様の寝室様な部屋など誰が落ち着いて寝れると思ってるの!イドエルが良く平気でねれるなぁと感心してるぐらいよ!マキバルは現代のゲストルームが普通はどうなっているのかを知らないの。時代遅れなのよ。貴方達は知らないの。あのねぇ、他では蛇口をひねると直ぐにお湯が出るのが普通なの。
オープンも薪を使ってなくてスイッチ一つでガスの火で簡単に物が焼けるの。部屋も直ぐに温まるしオープンも直ぐに温まって直ぐに料理が出来るのよ。
今時薪で温めたお湯を運んで来るなんて此の村だけなの。
でも私はぬいぐるみたちが全部してくれるので何の不自由も無いので此のままで良いと思っているの。」と一気に言いました。
するとマキバルとイドエルと白猫が何か話始めてクレアは夕食の材料の龍を呼び出して買い出しにコックのぬいぐるみを持ってリュックを背負わされて行かされる事になり門の外に出されました。
クレアは憮然として門の前で突っ立てましたが仕方なしに買い出しに行く事にしました。