秘密生地異時空間・日本 異時空間、変調す(後編)
- カテゴリ:日記
- 2022/02/08 15:03:24
「おふっ!」
|日野管理官《ひのかんりかん》は、両手を握り締め、腹に力をこめる。
「どうしたっすか?」
情報と広報を担当する|白崎報管理官《しらさきむくいかんりかん》が尋ねてくるが、日野管理官は返事をする余裕はなかった。
「な、なるほ……くぬっ!」
ドゴーン!
魔法を放って爆発させて
ぶおぉぉおん!
岩をぶん投げて
シュタタタタッ――
凄まじいスピードで走って蹴った。
ピッキーィン――
光り輝かせて
ずうううぅうぅんんん――
時空を振動させた。
「どうよっ!?」
四人は一瞬、様子を伺う。
ズバッシュっ!!
全てが跳ね返された、日野管理官によって。
「やっぱ、|国家公務員《プロ》だなっ。|異力《いりょく》上げていこか!」
|翼《つばさ》が叫んだ。日野管理官のラスボス感に四人のモチベぐぐっと上がる。
「前進、全身、ぜーん・しーんっ!!」
「どんどんどかどか、どんどんどんっとさ!」
四人の必殺技を一点集中した。
「コンタクト……コンタクト、繋がったよっ!」
|洋子《ようこ》がサムズアップして他の三人に成功を知らせる。日野管理官の防御が弱まった一瞬をついて、意志が異時空間の境界を突破した。
日野管理官の防御が再度覆ってくるまでの隙を狙い、四人は意志を一斉に、その『点』に集中させた。
「い、異時空間、|異常探知《いじょうたんち》! 緊急スタンバイを開始しまっ?」
白崎管理官にいつものチャラさはなかった。切迫した状態で、緊急スタンバイの手順を開始しようとする、それを
「駄目だっ」
日野管理官が、白崎管理官を鋭く制止した。
「か、管理官? いえっ、マニュアルに従えば、あなたにそんな権限はないです!」
白崎管理官は一瞬動きをとめたが、声を振り絞って抵抗した。
「オペレーション開……日野管理官っ!?」
驚きのあまり、再び白崎管理官が固まった。日野管理官が防御レベルを一段下げたからだ。
「大丈夫だっ! 現実世界の防衛は続行している」
「何を言っているんすかっ? 異時空間にいる子供たちを退避させるオペレーションを早くっ!!」
白崎管理官が、日野管理官に詰め寄ってきた。にらみ合うその行為の余裕などないと白崎管理官はいら立つ。同時に日野管理官に盾突く恐怖が渦巻いた。日野管理官が怖い? 白崎管理官の額に汗が滲んだ。
白崎管理官の緊張がピークに達したその時。日野管理官の顔に、ふいっと笑みがこぼれた。
「その子供たちが、ぶっ壊しにかかっているんだよ」
「ま、言うて壊せるとは、|端《はな》から思ってないけどさ」
|草平《そうへい》はドゴンドカンと連続して爆発させ続ける。もうちょいさ!
「まぁね、日野管理官だものね! それぇっ」
洋子がコンタクトを太く安定化させる光ビームを強めた。
「もしもし、もーしもーぉし?」
通信を担当するひまわりが呼びかけ始めた。が、あまりにも緩い呼びかけ方に、他の三人はつんのめりそうになったが、なんとか耐えた。日野管理官からのプレッシャーが再び強くなっていたからだ。
「ん? 日野管理官気づいたかもさ?」
草平は日野管理官からくる手ごたえの強弱に無言メッセージを感じ、読み取ろうと集中を高めた。白崎管理官を介していないゆえの方法なのかもしれない。
草平以外の三人は『向こう』へ対する作業を急いだ。
「コンタクト開始!」
翼が合図した。現実世界との境界からくる日野管理官の防衛力と、『向こう』からの反応を|俯瞰《ふかん》しつつの判断だ。
「きたよぉおっ」
ひまわりが、右手を振り回し、『向こう』に問うた。
「ずばり教えて、あなたは誰で目的は何?」
三人はひまわりの単刀直入さに大胆すぎる、と心でそれぞれ突っ込んだ。
――わたしはイーハン、いっしょに遊びたいかなと思って
『あたしは日本のひまわり。よろろ~。ちなイーハンって名前ってことはぁ、A国?』
――そそ、いろんな異時空間を覗いてみたくて
イーハンと名乗る子との見えない交信が続く。
『やっぱり私たちの予想どおりだったんだね、異時空間の端っこを、つついていたんだぁねぇ』
ひまわりはウンウンと大きくうなずき、他の三人もスッキリした顔になった。
「異時空間が日本にしかないって考える方がおかしいもの」
洋子が全員に聞こえる独り言をつぶやいた。また全員でウンウン頷く。
どうやら、イーハンはかまってちゃんをやっていた、それで全部合点がいく。
――あちゃあ! リウ異時空警察官から戻れって言われちゃった。行かなきゃだわ!
イーハンが息を吐き出したのが伝わってきた。同時に草平が日野管理官のメッセージの解読を終了した。草平は、みんなに伝える。
「日野管理官から伝言さ。帰ってこいってさ。各国の異時空間交流には、話し合いが必要なんだってさ~」
「ゲートアウト スペースタイムジャンパン シーユーアゲイン!」
最後に翼を自宅に見送った日野管理官は、さすがに疲れを隠せなかった。
「お疲れっす」
白崎管理官も、いつもの軽いノリに戻っていた。
「|小鳥遊管理官《たかなしかんりかん》が出勤してきたら、ありがとうって伝えて欲しいんだ」
「えっ? 小鳥遊管理官も知っていたんすか?」
「というより、彼女が最初に気が付いたんだ」
日野管理官は、小鳥遊管理官を想い顔を少し緩めた。しかし――
「退勤時間、十秒前! 報告書よろしくっ! ではお疲れさまっ」
白崎管理官がからかう隙はなく、あっという間に日野管理官は消えた。
「うえっ? 報告書、俺が書くの!? まじっすか~」
白崎管理官は、ぐったりとしてやる気メーターの底をさまよい始めたのであった。
(『異時空間、変調す』 おわり)
後編まで読んでくれてありがとうございます!
アニメのような映像をイメージいただけていたなら、嬉しいです!
>トシrotさん
異世界とか、世界線が違う、そういうのミックスしたイメージで書いています。
>>主人公の人生がリアリティ番組の登場人物っての。
「トルゥーマンショー」でしょうか? この作品が浮かんできました
ルビは手抜き転載ゆえ、です。そこ突っ込むんかーい、っては思ったです(笑)
アビィさんがお話書いてくれて、すごく嬉しいし、面白いですよね。
アニメ化希望します!!