秘密生地異時空間・日本 異時空間、変調す(前編)
- カテゴリ:自作小説
- 2022/02/08 15:01:54
「へーん身!」
掛け声とともにイメージする戦隊ヒーロー翼になるはずが。
「ぬぁ?」
変身できているところと、変身できていないところがあって|翼《つばさ》は困惑した。
「へーんっ! し! ん!!」
もう一度。二度目の掛け声で変身が完了した。が、爽快感はない。思ったイメージを一度で具現化できない、その違和感に翼はポツリ。
「ぬん?」
冒険ごっこの途中、ボス魔王と戦っていた|洋子《ようこ》と|草平《そうへい》は、ピキッと弾かれた剣を持つ手をそれぞれ信じられない気持ちで見た。洋子は魔王がその隙をついて襲い掛かってくるのに気が付き叫ぶ。
「草平! 魔王がくるっ!」
魔王の放った魔陣リングから身体を躱したものの、草平はまとっていたマントの端を切られ愕然とした。
異時空間の中で危険が迫ってくる感覚はかって経験したことがなかったからだ。
「あっぶねっ!」
草平が切れたマントを|翻《ひるがえ》し態勢を立て直す間に、洋子が魔王に一撃ブームを『三度』放出した。三度目のビームで魔王が消失したが、洋子はハァハァと肩で息をして言った。
「変ね?」
|日野《ひの》|広樹《ひろき》|管理官《かんりかん》が、|小鳥遊《たかなし》|永遠《とわ》|管理官《かんりかん》に引き継ぎをして、自宅への帰り道。大きく息をついた。
「疲れたな、きっちり睡眠をとろう」
「パワー ホールド ダウン」
屈みながら小鳥遊管理官が詠唱して、ひまわりの刻光を青色にした。
「封印完了しました。楽しかった?」
「う……ん」
ひまわりは言葉を濁した。小鳥遊管理官が様子を伺おうとしてくるので、ひまわりは気持ちを切り替えた。
「なんでもないよ。出間手続き、よろろ~」
ひまわりに促されて小鳥遊管理官は立ち上がった。
「ゲートアウト スペースタイムジャンパン シーユーアゲイン!」
ひまわりを送り出した小鳥遊管理官は、引き締めた顔から更に眉をしかめた。
翼は異時空間で前回の変身ごっこを再びやっていた。同じ遊びを繰り返すのは初めてだった。前回のモヤモヤを引きずっていたからだ。
「変身!」
変身できない部分が前回より増えた。更に二回変身を追加して、ようやく翼戦隊員が完成した。
翼戦隊員は、異時空間に様々な刺激を与え、検証を始めた。思ったより早く移動できない。思ったような瞬間移動もできない。ビームの威力が出ない。
何かに押さえつけられているような、はたまた能力を吸引されているような、形容しがたい窮屈さを感じた。
「変……か?」
翼戦隊員がポツリとこぼした。変身を解除して元の翼に戻って出異時空のため待つ。
日野管理官が現れた。
「もう帰るの?」
日野管理官の問いにうなづきながら、翼はじっと日野管理官を凝視した。
「何か言いたいことがあるんじゃ……?」
日野管理官の問いに翼は頭を振って、腕をだした。
「帰ります、手続きしてください」
「ゲートアウト スペースタイムジャンパン シーユーアゲイン!」
翼は玄関のドアを開けた。
「ただいま」
お帰りの言葉はない、両親はまだ帰宅していない。翼は自室に入ると「秘密掲示板」に書きこみをした。
――異時空間で『変』を探検する人、募集!
掲示板の翼の書きこみを見た洋子は、翼にダイレクトメールを送った。
――異時空間に変を研究したいので、応募します! 追伸 ため口でオッケーです』
すぐに翼から返信がきた。
――やっぱり変だよね? その謎をすっきりさせたいんだっ!
洋子もすぐ返信した。
――それな! こちら草平も連れていくね
――了解 異時空間で落ち合おう
異時空間で、翼、ひまわり、洋子と草平の合計四人が集まった。
「あたしも、翼っちの書きこみに単独応募したのだ、タメでよろろ~」
ノリノリのひまわりに、他の三人が引き気味になりかけた。が、翼は引きつった笑顔をなんとか、他の三人に振りまいた。
「多い方がいいんだ、戦う相手は日野管理官だから」
全員がびっくりしすぎて言葉を失った、タメよろひまわりも含めて。
(『異時空間、変調す』つづく)
読んでくれてありがとうございます!
アニメのように思い浮べていただけたなら、ほんとに嬉しいです!
文字の羅列から、映像のイメージを浮かべてもらえるって、書いている側からすると嬉しい言葉なんです
>トシrotさん
ニコットは日記なので、続けて読むにはちょっと面倒ですよね。
異時空間は、現代ファンタジーのジャンルで書いているので、ゲームっぽい読後感をもってもらえると
すごく嬉しいです!
面白いアニメを見た感じがしました。