Nicotto Town


ガラクタ煎兵衛かく語りき


yei


 若い時から極度の写真嫌いで
できるだけそんな機会を避けてきた
年齢を経てもその指向は変わらずにきたが
それでもやっとこの年になって不意に、急に、不安になった


 マダガスカル(に行ったことのある)姉が数年前に私に告げた
「お前の写真で使えそうなものは無い。何とかしろ」


 私の父の遺影は母との旅行の中でのスナップ写真を拡大したものだった
候補は数枚あったが、その中で穏やかな笑顔が選択された
だが、いかんせんそれはピントが甘かった
遺された者は苦渋の決断で幾分ぼやけた我らが家長のプリントを写真店に依頼した

 そういうわけで母の場合は彼女自身が用意周到に身を処した
お気に入りのネックレスを身に着け
艶然と微笑み、絶好の角度でカメラの前に身を置き我が身を撮らせた
そしてどこに出しても文句のつけようのない遺影を遺した


 時代は遡る
爺ちゃんが逝去したとき、私は小1だった
どんな風に遺影が作成されたのかは子供だったのでよく分からないが
見慣れた爺ちゃんの顔の下の首がほんのちょっと不自然に長めで
その下に紋付を着ているという
普段ではあり得ない映像でのりきったんだと思う
昭和37年時点で既に写真加工技術は流布し始めていた
その技術は10数年後にはプリクラとしてゲームセンターの一角を占めることになる



 さて、どうしよう
写真を撮らねばなるまい
マダガスカルの姉は云う
自分のスマホで撮っちゃいなさいよ
冗談じゃない
少なくとも数年の期間は極一部のファミリー間に伝わる私自身の画像を
生前の私が納得できない出来なら「へのへのもへじ」のほうがまだいい


 面倒くさい弟ということは自覚している
多分、どっかの写真館に行くんだろうな
立派な衣装も充分に用意されているだろうし
当然素敵なポーズもきめたい
今まで写真嫌いだったのは不用意な自分の姿を認めたくなかったんだろう


 撮り終えたネガ(今はデジタル?)を店主と囲み
ああだこうだ、ここは直せ、ここの色補正はできないか
挙句の果ては、「ここ(この店)じゃどうにもならない!もういい!」
産まれて初めての癇癪を起すのも許してくれるかしら


 二軒目の写真館だって、保証できないよね


 だって
写真嫌いは伊達じゃない
多分、この時まで残してきたある意味権利だと思う





 最高の決めポーズで、最高の笑顔で
(ウインクはまずいかな)
この世とおさらばさ
「あばよ、今度出会ったらお前を放っとかないぜ」


 こんな写真が目標です

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2022/02/08 07:11
おはようございます。
お久しぶりです。また、よろしくお願いします。

私も我楽多煎兵衛さんほどでなくても写真嫌いな方です。
自分に自信がないからかもしれません。
私は独り身で葬式も何もしないと思うので要らなくて済むのではと思っています。

葬式の写真も特に決まりはないですよね。良い写真撮れますように^^




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