【第20】青空の行方~ゆくえ~
- カテゴリ:自作小説
- 2022/02/03 21:25:55
「さて…そろそろ出かけるかあ」
ベッドから起き直った拓海は、んっと軽く伸びをする。
休日の朝、今日も沙也加と遊びに行く予定なので、拓海は手早くパジャマ代わりのジャージからコットンのシャツとブラックのジーンズに着替える。
昨夜、沙也加から届いたメッセージをスマホの画面で再度確認してみる。
「そういえば、拓海って私の告白にきちんと答えてくれてないよね?」
このフレーズが、棘のように拓海の心に突き刺さったままだった。
「今日こそちゃんと、沙也加に返事しなきゃな…」
頭を軽く振って、部屋のドアを開ければ外はあいにくの小雨模様。
「ありゃりゃ…」
慌てて傘を手にし、階段を駆け下りていく。
待ち合わせのカフェまであと少し。
水たまりを避けてジグザグに歩く。
その時だった。スマホが振動したのがポケットの中で分かった。
「ん… 沙也加かな…」
ポケットに手を突っ込み、スマホ取り出し画面を見ると、そこには意外な相手の名前が表示されていて。
「か…楓…?」
拓海は、胸の鼓動がはっきり高鳴るのを感じた。
諦めた筈なのに、この動揺するような、昂るような気持ちは何なんだろう…。
目を瞑り、小さく深呼吸をして通話ボタンを押した拓海。
「あ…拓海…?」
「うん 楓、久しぶりだなあ。どうしたん?」
冷静を装って相手に応えるが、手が少しだけ震えている。
「ごめんね。ちょっと…相談したいことがあるんだ。今日は忙しい…?」
電話の向こうの楓の声はかすれて小さく、やっと聞き取れるくらいのボリューム。
「ん…えっと…」
「あっ ごめん。ひょっとして沙也加と約束とか?」
何で女の子って、こんなに鋭いんだ? 拓海は一瞬声を失う。
「ごめんね、いいのいいの 大丈夫だからっ」
電話を切ろうとする楓に、慌てたように拓海は
「いやっ 大丈夫だよ。時間あるし!どっかで落ち合う?」
なんで俺こんなこと言ってるんだ? 沙也加と約束があるんじゃないか!
自問自答をする。しかし、なぜこう言ってしまったのか、それは本当は拓海にもはっきりとわかっていることだったのかもしれない。
「うん ホントにいいの?」
「ぜんぜんおっけだよ。今どこにいるんだ?」
「女子寮の部屋だけど…あたしが拓海のいるとこまで行こうか…?」
「いやっ いいよっ 俺がそっちへ行くからっ」
カフェで拓海を待つ沙也加。
頼んだアップルティー。テーブルの上で軽い湯気をあげている。その煙をぼんやり眺めていて。
「拓海の誕生日は来月だもんな… お返しに何かプレゼントあげないとなぁ…」
はっきりと自分の気持ちに応えてくれたとは言えない拓海に、やや不安を感じながらも、一緒に過ごす二人の時間が積み重なることに僅かな心の支えを求めている自分の気持ちに気が付いていた。
『ごめん!ちょっと急用ができて、今日は行けなくなっちゃった。この埋め合わせはちゃんとするから許して!』
何となくそんな予感はしていた。拓海からのメッセージを画面で読み取り、肩を竦めて、まだ口をつけていないカップをそのままに立ち上がった沙也加。
何でこの店を選んだんだろう?
店から出た沙也加は、小雨降る空を見上げながら自問自答する。
気持ちがふらふら動揺している。
何も考えられず、駅への道をゆっくり歩いて立ち止まり、そしてまた歩き始める。なんだかふわふわしてるみたいだ。
スマホが鳴った。
「もしもし… あ、…」
「もしもし 沙也加か? 今何してるんだ?」
電話の相手は一平だった。
「あー 拓海と待ち合わせしてたんだ」
「あっ そうかっ!悪かったな。お邪魔したか?」
沙也加は空いてに見えないのを承知で首を目いっぱい左右に振って
「ちがうちがう、ドタキャンされちゃったから今日はもうフリーなんだよね!」
「そうか… じゃ、時間あるって感じか?」
「…うん そりゃあるけど…」
「じゃあさ、俺今からそっち行くよ。ちょっと話さない?どこにいるんだ?」
沙也加の胸にさざ波が立った。
『ダメだよな… 他の男子と2人で会ったりしたら…拓海に悪いし』
暫くお互いが無言。その時間が思ったより長く続くような錯覚を覚える。
「うん…いいよ。駅前のカフェにいる」
『あれ?なんで私…??』
「わかった。今からすぐ行くから待ってろ」
沙也加の答えを待たずに電話が切れた。
(続く
けーすけさん、ちゃんとまとめられるかな・・?
楽しみにしてるね~(^^♪
楓から拓海への電話と関係あるのかな?
何かの伏線? ?だらけになっちゃったw