秘密生地異時空間・日本 イベント企画(前編)
- カテゴリ:自作小説
- 2022/02/03 13:22:32
秘密掲示板《ひみつけいじばん》に掲示板管理人《けいじばんかんりにん》の白崎《しらさき》報《むくい》管理官《かんりかん》の書き込みが載った。
「イベント大会を開催します。名付けて『遊びまくって管理官を泣かせたら優勝』イベントです。奮《ふる》って遊びまくってください!」
子供たちはイベントが大好きだ。しかし、今回のイベントには|戸惑い《とまどい》の声があがった。
「あたしたち、いいだけ遊びまくってるけど、管理官、全然こたえてなさそうな顔してるよね?」
「大概《たいがい》の大暴れは、すでにやってしまってる感があるし、うーん」
「どれだけ暴れたら、泣くんだろう?」
ヒソヒソ、話し合って判明《はんめい》したのは、このイベントの難易度《なんいど》の異様《いよう》な高さであった。不思議《ふしぎ》なもので、難易度が高いとわかればわかるほど、話し合いに参加するメンバーが増えていった。
「北風《きたかぜ》でなくて太陽作戦《たいようさくせん》はどうよ」
「うん?」
「あっ|察し《さっし》」
「その発想《はっそう》はなかったな」
「なーるほどぉ。じゃあさっそく作戦の具体的《ぐたいてき》な内容を詰《つ》めていこうよ」
更にヒソヒソ。
「あ~らら、掲示板の中の人もシャットアウトしちゃうんすか」
秘密掲示板の管理をしている白崎管理官は、苦笑しつつこぼした。白崎管理官から作戦が流出《りゅうしゅつ》する可能性《かのうせい》を危惧《きぐ》した子供たちが、管理人を閲覧《えつらん》除外者《じょがいしゃ》に設定《せってい》しちゃったのだ。
「ん? どうかした?」
日野広樹《ひの ひろき》管理官《かんりかん》の問いに、白崎管理官は頭を振った。
「なんでもないっすよ~」
イベントの標的が日野管理官であるゆえ白崎管理官は、ニコニコと|誤魔化す《ごまかす》。危険なら話は別だが楽しく話し合いが続くなら介入《かいにゅう》しない。おそらく話がでっかくなってきたのだろう、とワクワクしながら見守るのみ。
入異時空《にゅういじくう》|手続き《てつづき》がたてこんで日野管理官と小鳥遊《たかなし》永遠《とわ》管理官は、時間に追われていた。
「今日は忙しいね、子供たちの待ち時間は極力《きょくりょく》少なくなるよう|頑張ろう《がんばろう》!」
手続きをテキパキ進めながら日野管理官は、小鳥遊管理官にも声をかけることを忘れない。
「はいっ」
返事だけは威勢《いせい》がいいものの、小鳥遊管理官の方は、少々てんぱってた。日野管理官と勤務時間《きんむじかん》が重なって良かった、と心の中でこっそり安堵《あんど》していたし、声をかけてもらって頼もしかった。
入異時空した子供たちがいつも以上に活発だった。子供たちの力が現実世界に干渉《かんしょう》しないように受け止めながら、入異時空手続きも併行《へいこう》して行わなくてはならない。小鳥遊管理官は、いつにない疲労《ひろう》を感《かん》じ始《はじ》めていた。
ぐらり。一瞬《いっしゅん》意識《いしき》が飛びそうになって小鳥遊管理官がよろめいた。
「大丈夫《だいじょうぶ》か!?」
小鳥遊管理官がはっと気づいた時には、背中を支えられ、日野管理官の顔がどあっぷになっていた。
「……っ」
小鳥遊管理官は、背中に感じる力強い温もりで顔が赤くなっていくのを抑《おさ》えられなかった。小鳥遊管理官の顔が赤くのぼせていくので、日野管理官がオロオロと慌《あわ》てだした。
「体調《たいちょう》、落ち着かないのか。医官《いかん》を呼んだほうが……」
小鳥遊管理官は、日野管理官が底抜《そこぬ》けの鈍感人間《どんかんにんげん》であることに、安堵《あんど》して顔の火照《ほて》りそのままに、日野管理官の声にかぶせて言った。
「いえ、いえ、大丈夫です。申し訳ありません」
「いや、しかし……」
心配されていると思うと、小鳥遊管理官は少し嬉《うれ》しくなって、しかし言う。
「少し休めば大丈夫です。日野管理官は任務《にんむ》を続行してください」
小鳥遊管理官は努《つと》めて大きな声を出した。日野管理官の顔のどあっぷに声が震《ふる》える。でもそんなこと構《かま》っていられない。再度《さいど》、言う。
「日野管理官、任務を!」
(『イベント企画』つづく)
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- トシrot
- 2022/02/06 01:12
- 3日も見逃していた、ロマンスですなっ!
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