Nicotto Town


おまわりさんコッチです!


【無題】 第5回


 僕の家は学校と魔導研究所のちょうど中間くらいにある。
 街中といえば街中だけど高級な住宅街から見れば離れていて、庶民的な簡素な家が立ち並ぶ一角に家を構えている。
 木造二階建てでそっくりな家が二軒並んでいる、道路からみて右が僕の家で、左がシシルの家だ。

 父さんと母さんが結婚する時に、父さんの親友でありシシルの父親であるドイルさんが2軒まとめて建てたらしく、シシルの両親も同じ時期に結婚している。
 土地はもともと僕のご先祖様からずっと受け継いできた土地をそのまま使い、建物は木材加工卸しをしているドイルさんの手で建てられた。
 木材に関しては一流であり自分の手で家を建ててしまうとか、ホントにドイルさんは凄い人だ。
 幼馴染でありお隣さんでもあり、そういった家族ぐるみでの付き合いから、僕とシシルは兄弟のように育てられた。
 だからお互いの家を行き来するのも当たり前だし、二家族で食事を一緒にするなんてこともしばしばあるくらいだ。

 その僕の家の二階にある両親の書斎で、僕は今書類を読み漁っている。

「ねえ、おじさんとおばさんは、無事、なのかな」

 一緒についてきたシシルが力なくつぶやいた。

「わからない。
わからないからこそここにヒントがあるんじゃないかって思ってさ。
僕は父さんや母さんが最近何を研究していたか知らないからね」

「うん」

「シシルは一旦家に帰ったら?」

「やだ、ここにいる」

「でもどのぐらい時間かかるかわからないし、居てもつまらないだけだと思うよ」

「やだ」

 短くだけどやだと言ったシシルの目は力強く、そして少し怒っているようにも見えた。
 ダメだ、シシルがこうなったらテコでも動かないだろう。
 長年の付き合いでお互いの性格を熟知しているからこそ、短い会話でもわかる。

 どうやらシシルは両親が大変なことになっている僕を心配して1人にしたくないようだ。

「そうかい、でも夕方になったら一旦家に戻ってシシルの両親に今日のこと伝えておいてよ。
あー、そうなるとドイルさんが大変なことになりそうだけど……」

「それね、お父さんかなり取り乱すと思うよ。
まあ、あまり酷かったら杉の原木で一太刀浴びせて大人しくさせるけど」

 研究所に居たときは混乱して震えていたけど、今のシシルは冗談が言えるくらいには落ち着いているようだ。

「原木で一太刀とかそれ死んじゃうから」

「とにかく私はここいるから」

「わかったよ、シシルは優しいね」

「ふんっ」

 誉めると照れてそっぽ向く癖は昔から変わらないな。


 普段から父さんと母さんは休みの日ですら書斎にこもって、あーでもないこーでもないと色々紙に書き殴っている。
 最近書かれたものはだいたい机の上に散乱している。
 ある程度溜まってきたらそれは捨てられずに、綺麗にファイリングされて本棚に並べられていく。
 だから古いのを見たかったら本棚を見ればいいし、新しいのを見たければ机の上を見れば済む。
 書類の大半は魔方陣の殴り書きだ、あとは設計図とも呼べる機能を記した立面図があったりと、煩雑な散らかり具合だ。

 魔方陣の書かれた紙には記号がふられていて、それと同じ記号が立面図の中に書かれている。
 つまり2つを合わせると、立体のどの位置にこの魔方陣を書け、と指示がわかる設計図になっている。
 こうして立体的に組み合わさった複数の魔方陣を魔導回路と呼んでいる。

 亜人達が使用しているのは単一の魔方陣で、その効果は単一で限定的だけど、そこに科学の知識を練りこんで魔導回路に組み上げたものは複雑な仕事や処理を可能にしてくれる。
 魔導技師とは言ってみれば魔導回路の設計をするのを得意としている。
 さらには新しい魔方陣の開発も同時に研究されていて、完成された魔方陣の数だけでも数百種になる。
 
 僕は両親からその魔方陣の読み取り方から、魔導回路の設計方法まで全て叩き込まれている。
 だからここに散乱している書類も、時間をかけて見ればちゃんと内容が把握できる。

 読み進めること2時間くらい、机の上全部のいくつかの魔導回路の全貌を把握できた。
 改めて思うけど、両親は凄い魔導技師だ、数十にも及ぶ魔方陣を立体的に繋げ複雑な機能を構築していく。
 その全てに無駄がなく、そして斬新だ。
 さらには必要とあらば自分で新しい魔方陣を作ってしまっている。
 けどそのそこに記されていた内容のものは、今回の事件には結びつかないようなものばかりだった。

「う~ん」

 僕が唸っていると。

「ねえ、何かわかったの?」

 書斎のソファーに座っていたシシルが聞いてきた。

「わかったけど、まったくわからない」

「なにそれ、他に手がかりはないわけ?」

「あとは机の中とか」

 そう言いながら机の引き出しを開けて言葉が止まった。

 一番上の引き出しから出てきたのは大きな封筒で、そこには「ライアスへ」と書かれていたからだ。

 それは紛れも無く父さんの字で、僕がこの引き出しを開けることを前提で書かれていたものだった。

 息を飲みその封筒の中身を確認する。

 すると出てきたのは短い手紙と、魔導回路の設計図だった。 





まなにくです
ニコタの日記だと3000文字制限があって
どこで区切ってよいやらとても悩ましいです
いつもだと一話あたりが3000~5000字程度で書いているので
1話としてはちょっと短いかなと思ってしまいます
かといってしっかり書くと文字数オーバーは確実なので
なかなか思うようにいきません

コメントに作品にタイトルがないと勿体無い
みたいなお言葉をいただきましたが
実はタイトルはもうすでに決めてあって
でもそれ書いちゃうと壮絶なネタバレになってしまって
「ああ、なんだ、結局なろう系かよwwwwww」
となってしまうので今は無題にしています

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2022/01/10 19:28
何が書いてあったのかな(,,◕ ▿ ◕,,)!!気になる!
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2022/01/10 17:40
お兄様こんばんは^^
なるほど~、題名でネタバレになっちゃうから書けないと・・・。
文字制限もうっとうしいですよね~。
長編小説だと数万字いっちゃいますものね・・・。
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2022/01/09 23:41
お話面白かったです。
題名はもう決まっているとのことですが、小説を書いている途中にストーリーの大筋や結末が変更になることはあるのですか?
週間漫画とかで何十巻も続くものなどを読んで、最後漫画が終わる時にこの結末はいつ考えられたのかな〜と思ったことがあります。
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2022/01/09 23:28
じゃんじゃん書いて~~っ(^^)/




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