1498番:復活版「アルルの女(3)」
- カテゴリ:日記
- 2022/01/05 20:13:47
アルルの女(3)
L'ARLÉSIENNE
アルルの女
—————————【3】———————————————————————
Pourquoi cette maison m'avait-elle frappé ? Pourquoi
ce portail fermé me serrait-il* le cœur ? Je n'aurais pas
pu le dire, et pourtant ce logis me faisait froid. Il y
avait trop de silence autour... Quand on passait, les chiens
n'aboyaient pas, les pintades s'enfuyaient sans crier... A
l'intérieur, pas une voix *!
————————— (訳)———————————————————————
なぜこの家が私の心を打ったのか?なぜこの家の閉ざ
された門が私の心を締め付けたのか?それは
(たとえ聞かれても)言うことはできなかったであろう。
しかしこの建物は私をぞっとさせたのだった。
周囲はあまりにも静かだった・・・ここを通ると、犬も
吠えないし、ほろほろ鳥も鳴かずに逃げて行った。
(屋敷の)中は、まるで声がなかった。
—————————《語彙と文法》——————————————————————
frappé <frapper(他) 打つ、たたく、
(心を)打つ、強烈な印象を与える
portail (m)正面入口、正門
aboyaient 半過去 <aboyer (自)(犬が)吠える
pintades (複数形)<pintade (f) ほろほろ鳥
(食用として家禽化もされている)
s'enfuyaient< enfuyuir (s') 逃げる、逃げ去る
* serrait-il pourquoi のあとでは、複合倒置。
一般に、疑問副詞では動詞が直接補語を伴う場合には
複合倒置(代名詞に置き換えて倒置)が行われる.
直接補語を伴わない場合、
pourquoi 以外の疑問副詞のときは主語が名詞でもこの倒置は
行ないません.
Où vont ces gens-là ? (あの人たちはどこへ行くのですか?)
Où vont-ils ces gens-là ? とは言わない.
pourquoi のあとでは、主語が名詞なら複合倒置します.
Pourqui Jeanne est-elle si triste ?
(なぜジャンヌはそんなに悲しんでいるのですか)
* pas une voix Il n'y a を補って
Il n'y a pas une voix. として解釈する。
普通は不定冠詞が直接補語で否定形になると de に変わるが
ここではun, une は冠詞ではなく、数詞として扱われる。
そしてこの数詞が否定形の中では強い否定の形容詞の機能が
生じ、aucan, aucune より強い働きを持つようになる。
—————————≪語法≫——————————————————————
Ce portail fermé me serrait-il le cœur.
この閉まった門扉は(いつも)私の心を締めつけた.
身体の部分をあらわす名詞には定冠詞をつけるのがふつうです.
そしてこの場合所有者(この例では心の所有者)は間接補語,
(ここではme) で表されます.
英語既習者はThis closed gate always wringed me by the heart.
は了解だと思います.
うっかりCe portail fermé me serrait-il mon cœur.
としないよう注意しましょう.
これも間違いではないのですが、「他人とは違う風変わりな
私の心を痛めた」みたいなニュアンスがmon で生じてくる
かと思われます.
—————————≪文法≫——————————————————————
本文2行目、Je n'aurais pas pu le dire... は条件法になっています.
しかしこれは帰結節だけで、セットになる条件節(~ならば)が
みあたりません.とりあえず、これは条件法過去なので、ここだけ
で訳すとなると、「私はそれを言うことはできなかっただろう」ですね.
では、どうだったとしたら、なのでしょうか?
おそらく「聞かれたとしても」という文を補えば、しっくりくると
思います.条件節が省かれるケースは多いので、読み手の方で補う
練習も大切だと思います.
尚 Je n'aurais pas pu le dire. のle は中性代名詞です.これは名詞を
指すのではなく、事柄を指します.「なぜ心が締めつけられたのか
というそのこと」を指します.