Nicotto Town


おまわりさんコッチです!


【無題】 第2回

 僕の両親は揃って研究職をしている。

 人類史の中で語ることが避けて通れないのが魔法との出会いだ。
 亜人に出会うまで人間は魔法と言うものを知らなかった。

 魔法とひと括りに言っても、色々と系統が分かれる。
 魔法の発動に詠唱を使用したり、魔方陣を利用したり。
 或いは簡略な魔方陣と詠唱を組み合わせたものだったり。
 果ては詠唱も魔方陣も使用しないものだったり。
 その系統は様々だけど、一つ言えるのは亜人の種族によって魔法の使用方法や系統が違うということだ。

 根本になる魔法の根幹は同じものらしく、種族によって違う発展を遂げた。
 というのが正確な表現なのかもしれない。

 ちなみに人類の滅亡を確定させた大規模呪術も魔法の一種で、悪い効果をもたらす魔法全般を呪術と呼んでいる。
 呪いとも呼ばれ、今の人間社会では対人に使用した場合、かなりの重い罪に問われる犯罪行為に認定されている。

 そんな魔法の存在を知らなかった人間は、様々な亜人に出会い魔法の知識と技術をすぐさまに吸収していった。

 魔法という便利な力がなかった人間は、魔法の代わりに科学という分野の学問を発展させていた。
 それは日々の暮らしを便利にし、より豊かにするものに利用され。
 人間の暮らしは科学無しには成り立たないくらいにまでに発展していった。
 魔法という科学とは正反対の現象に邂逅した科学者は、最初は難色をしめしたもののすぐさま魔法技術と科学技術を融合し、新しい技術が創り出せないかと模索するようになった。

 やがて魔法と出会って10年も経たないうちに、魔法と科学が融合した新しい技術が創り出され、それは魔導技術と呼ばれるようになった。

 魔導技術を扱い、そして研究する職種を魔導技師と呼び、僕の両親も2人揃って魔導技師として、国が管理する魔導研究所という施設に勤めている。
 教室に入ってきた教師の言う施設で大きな事故が起こったというのは、間違いなく両親が勤める魔導研究所のことだろう。

 少ない情報からわかることは、僕はすぐにこの教師と研究所に行かなければならないということだ。

「わかりました」

 とだけ短く返事をし鞄に荷物を詰め込んでいく。

「ねえ、おじさんとおばさんに何かあったの?」

 あせった様子でシシルが訊いてくるけど。

「わからない、だから確かめに行くんだよ」

 行くしかないということだけ伝えると、シシルも椅子から立ち上がって。

「私も行く!」

 と力強く宣言した。

「え? 来るの?」

「だっておじさんとおばさんの一大事でしょ、二人は私にとっても家族みたいなもんだし、心配だから行くよ」

 行くといったらきかないのはシシルの性格上僕もわかりきっていることだ。
 なので無駄に反対せずに教師に確認を取る。

「ということらしいのでシシルも一緒に行きます、いいですか?」

「ああ、その野生児の面倒をちゃんと見るのなら連れて行ってもいいぞ」

「誰が野生児だ! 私は恋に恋する花の乙女シシル17歳だ! 樫の原木ぶつけんぞ!」 

 教師の間ではシシルは野生児と呼ばれている、理由は……、察してほしい。
 ていうか樫の原木は普通に死ぬだろうが、木は立派な鈍器だよシシル。


 ササっと荷物を纏めた僕とシシルは教師先導のもと、教師の操縦する魔導車に乗り研究所へと向かった。
 この魔導車は馬車をシンプルにしたような格好で、4つの車輪と人が乗る椅子が中に4つある箱型の乗り物だ。
 動力は魔力を蓄積する装置があり、それが運転席の操作パネルを通して車輪に繋がっている構造だ。
 田舎に行けばまだ馬車を利用していると所もあるけど、この都市部では魔導車が一般的に普及している。

 その魔導車に揺られること30分くらい、目的の研究所施設に到着した。

 施設の入り口はすでに警察に封鎖されていて、門の前に3人の警官が立っていた。
 その脇を警察の魔導車が慌てたようにすり抜け中へとはいっていく。
 それに続き教師の運転する魔導車が警官の手前で止まると、教師が降りて警官に説明する。

「えーと、ここの施設からうちの学校に連絡がありまして、ここに勤めている魔導師リーエン夫婦のご家族の方を連れて来ました。
あ、これ、教職員証です」

 教師は胸元から教職員証のカードを取り出し警官に見せる。

「ご苦労様です、さ、中へ魔導車でお進み下さい」

 敬礼した警官に促され魔導車は施設の中へと進んだ。
 小さい頃に両親に連れられて何度か来たことのある施設。
 ここが両親の職場であり、僕もいつか立派な魔導師になって両親と一緒にここで働くのが夢だった。
 今でも魔導師になる気持ちは変わらず、そのためにちゃんと勉強もしている。
 とはいってもこれはズルかもしれないけど、僕は両親から魔導師としての英才教育を受けている。
 今の学校に入学する12歳の時にはすでに知識も技術も身に付けていた。
 
 余談だけど学校へ行くのは強制ではなく、働きたい子は12歳から社会に出て働いてもいいことになっている。
 だから僕もすぐに魔導師として働きたいと言ったら、両親に反対された。

「子供の時に学校で過ごす時間も大事だよ、働くなんて大人になってからいくらでも出来るんだから。
学校で幅広く知識を身に付けて、友達も沢山作って、それから働きに出ても遅くはないよ」

 と説得させられ、5年間通っている。来年に満6年で卒業の予定だ。

 学校に入る前に何度か来たことのある施設は、数年経っても昔もままのように僕の目には映った。
 ただあの頃と違うのは、僕の体も大きくなり、あの時とてつもなく大きく見えた施設が、言うほど大きく見えないくらいだ。
 それでもこの施設の敷地は1km四方あり、メインの本館は四角形の回廊状になっていてその1辺は100mくらいある。
 本館とは別に2階建ての各研究棟が5つ、均等に立ち並んでいる。

 その研究棟の一つに遠目からでもわかるくらい人が集まっているように見えた。
 警察の魔導車も何台か停まっている。
 いうまでもなくそこは両親がいつも研究を行っている建物だった。

「先生、あの建物がそうです」

 僕が指さした方向に目を向けた教師が魔導車をその建物に向けて動かす。





なんとなく久々に筆を走らせてみたいなと
なんとなく書いてみてる
プロット代わりに書き起こしてみたのが
そのまま文章になっちゃってたってやつで
投稿しようとしたら
2話目が4000文字越えてたんで「第2回」と「第3回」に分けました

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2022/01/05 00:29
おにいちゃんに文才があったなんて少し驚き。(*´з`)




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