Nicotto Town



南の魔女クレア31


館を出る前日にボルアートは馬を借りてきました。

クレアを乗せるとどんどんと森をぬけて原野を抜けて更に雑木林をぬけて更に行くと何も生えてない所に着きました。
「此処が俺の領地の端だ」とボルアートが言いました。
クレアは馬から降りるとボルアートも馬から降りて馬を休めました。
其処から先は10mくらい低くなっていて原野が続いていて其の先は氷の岩が続いています。右を見ても地平線のかなたまで左を見ても地平線のかなたまで氷の壁が続いていました。「寒いわ」とクレアが言うとボルアートは自分が来ていたマントをかけてくれました。
「あの中に北の魔女が最後の力を振り絞って出した魔法で沢山のキリアマリ兵が凍り付けになって入っているんだ」と言いました。クレアは其の圧倒される氷の壁の連なった岩々をみてゾッとしました。
遠くに凍り付けの城が見えます。モニリスと読んだ本には最後に北の魔女が死んでいるのをキリアマリ兵が氷の城を中で発見して更に剣を突き刺したと書いてありました。北の魔女とキリアマリ軍との壮絶な戦いの後が目の前に広がっていました。
死ぬ間際に氷で封印した鉱山だと言う山々も遠くの方に其れらしいのが見えました。
鶴嘴でたたき割ろうとしても斧で叩き割ろうとしても砲弾で爆破しようとしても其の氷は硬くてびくともしなかったそうです。
次の日にボルアートは馬を返しに友達の所へ寄って其のまま戦地に向かうと言うのでクレアは館の前でボルアートを見送りました。義母と義姉は出てきませんでしたのでクレアだけの見送りになりました。
クレアはボルアートが見えなくなってもしばらく其の場に立ち尽くしていました。
其れから数日はクレアは食事以外は部屋に閉じこもってぼーっと過ごしてました。
何かしなくちゃとは思いましたが此の館の歴史を記した昔の領主が書いた記録日誌はボルアートに数冊読み終わるとまた別の数冊持って来て読むと言うのを続けて総て読み終わってました。
何もすることが無いのでクレアはふと外を眺めました。そして思い立った様に外に出て館の周りを探索し始めました。
空っぽに近い大きな薪小屋を見つけました。館の裏口と思われる近くの小屋の中にきれいに整理されたなたや斧や釜や其の他の庭仕事の道具が丁寧に其々の場所に壁や棚に整理されて置いてありました。其の庭師の道具小屋の大きさも其の中の色々な道具の立派さも量も遥かにクレアの家の規模を抜いてました。
クレアは其の内のクレアが扱いやすそうな鉈を見つけると家の周りの雑木林の木の枝をどんどん切り落として行きました。ある程度切り落とすと小屋にあった縄で縛って柴の塊を作ると広い薪小屋に運びました。こうしてクレアは幾つかの柴の束を作っては薪小屋に運びました。次の日も其の次の日も更に其の次の日もクレアはそうやって過ごしました。
其れから今度は枝を切られた細い木の幹を此れもクレアが使いやすそうな斧を見つけて切り倒して更に玄関の石の段差を利用して薪を作りました。
ある程度たまると其れを紐で縛って束にするとどんどんと薪小屋に運びました。
ある日クレアは広い台所を眺めて棚が多いのに気が付きました。
其の内の一つを開けてみるとジャム用の便が所狭しとびっしりとありました。
クレアは馬小屋を既に見つけて其の隣に馬車小屋も見つけていて其の中に荷車があるのを見つけて居ました。メイドが馬を扱えると言うのを聞くと馬を借りて来させて荷車につけて荷台に更に別の納屋にあった木箱と樽と積むとメイドを馭者にして其の隣にクレアが乗って村に買い物に出かけました。
勿論義母に言っても義姉に言ってもお金は無いと言うのでクレアはお父様が忍ばせてくれたお金の中から少し持ち出しました。短い夏の風はクレアには新鮮に感じてメイドに馭者の馬の扱いを教えて貰って自分で馬を扱って村まで行きました。予想に反して村人は貧乏な感じではありませんでした。まだ青いリンゴも赤いリンゴもありましたがクレアは目もくれずにたるに入ってまとめて幾らのリンゴにいくらかと聞きました。結構な値段を言ってきました。クレアは父親について何度も市場の相場と物の値切り方を知り尽くしていました。
クレアは自分の持ってきた樽を出して新鮮なリンゴを指さしてでは此のたるいっぱいの同じ量のリンゴを詰めて其れで其の値段だという事に念を押しました。
すると果物屋は慌てて其れだともっと高くなると言うので同じ樽いっぱいなのに値段が違うのは可笑しいと言いました。では樽の中身を出してまともなリンゴだけを取り出して買うといくらかと聞くと店主はドキッとして口ごもりました。
其処でまともなのが4分の一だから値段も4分の一にしろと言いました。
クレアはどうせ此のまま樽に入れて置いたら明日はもっと腐ったリンゴが増えるだろうと言って今売らないと三日後は此のたるのリンゴを総て捨てる事になるだろうと言いました。明日は此のままだと半額にしても売れない事は知っている。リンゴの元値はだいたい此れで仕入れているのだろう。少しでも傷がついて腐りかけると次の日は他のリンゴのくさって行って売れなくなる4分の一で今売った方が売れるリンゴの原価だけでも元が取れて損をしないで済むと言いました。
其れだと手間賃も出ないと言うので手間賃を出して3分の一で今日売ってしまった方が捨てるリンゴを増やさなくて済むと言うのを何とか半額と店主が言うのでお互いに気持ちよく商売するのだからと3分の一と半額の間で手を打つことにしました。そうやって色々な夏野菜も元値を言って暴利だと言って値切って買いました。最後にメイドが小麦粉も無くなってきていると小さな声で言うので小麦粉も買って買ってその他に砂糖買いシナモンを売っている店を探しているうちに夕方になりました。短い夏を楽しもうとしているのかどの家も窓を開けて食事をしてました。どの家もクレアの館での食事より明らかにマシな生活の様にみえました。来ている服も何度も洗濯を繰り返してくたくたの義母や義姉の服より生地は真新しい様に見えました。
不思議に思いましたが早く帰ってリンゴを樽から出さないと行けないので深く考える暇は無かったので其れ程気に留めませんでした。
館の台所でリンゴを樽から出すと案の上、下の方のリンゴは所々に変色が始まっているのが多数見つかりました。だが鎖が酷くてカビが生えているわけではありませんが傷物で売れない商品だと判断されたと思われます。
どうやら村の人は本当に良いリンゴしか買わないのだとクレアは推測しました。
値切っている時に此の村の人は良い商品しか買わないのではと感じました。少しでも傷がついていると物の見事に値切りが成立したのです。
其の為にジャムに出来るリンゴやニンジンが安くで手に入りました。
メイドが急いで夕食を作っている間にクレアは手際よくリンゴの皮をむいて細かく切って大きな鍋に砂糖と入れて煮始めました。目を離せないのでクレアはメイドと一緒に台所で食事をしました。名前を聞くとダルシャと小さな声で言いました。それからクレアはメイドをダルシャと呼んで沢山のジャムをジャム用の瓶を煮沸してしっかりとジャムを詰めると蓋をして瓶を逆さにして冷ましました。




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