南の魔女クレア22
- カテゴリ:自作小説
- 2021/11/27 14:04:18
ピェールお兄様がお父様に頼まれてまた公爵子息のイドエルにクレアの社交界デビューのダンスの相手を頼むために尋ねました。
イドエルに椅子を勧められて座ろうとした時にピェールお兄様が腰に一瞬手を当てて顔をしかめたのをイドエルが見逃さずどうしたのかと聞きました。ピェールお兄様がイドエルに自分が背が高いために背の高さの落差がある妹にダンスの指導をしているとどうしてもかがんでいる時間が長いために腰に来るんだとこぼし自分と背の高さがあっている人と背筋を伸ばしてきれいなダンスを踊りたいと言うのが若い時からの切実な悩みだったと上端の様にこぼしました。しかしイドエルは其の話を聞き逃しませんでした。ピェールの頼みをイドエルは直ぐに承知してくれましたが条件を付けました。此れは「貸し」でいずれ自分の頼みも聞いてくれるかと言う事でした。ピェールお兄様は話の内容にもよるが勿論検討させてもらうよと其の時は自分の一生を左右する話だとは思わず承知しました。
クレアの「社交界デビューのパーティ」の前々日からマジーのホテルに泊まっているクレアはマジーのお母様から高貴な令嬢のふるまいをみっちり教えられました。その中に子爵令嬢の女学校でも良く起きる田舎から来た子をからかう質の悪い女達が居て明らかに田舎から来たクレアは標的になるだろうからと其の対処の仕方も習いました。
マジーのアイディアで其の時は庭の話をすると良いだろうという事になりました。クレアの館の庭はマジーが腕の良い庭師だと感心したと言う正式な高貴な家の庭の作り方をしてありました。
其の正式な庭の方式の一つに蔓植物を一切植えないと言うのと後は緑の木と草で花は花壇で区切りを作るために置き、季節の花は花壇で堪能すると言う方式があって其れを採用していました。
更にお母様が伯爵家のバラ園に招待されて有名な薔薇園のすばらしさを語っていた事も大抵は公爵家や伯爵家の令嬢を中心に話の輪が出来るので其れを言うのも良いだろうと其れとクレアの自分の庭の話をするのも良いだろうと色々な策をマージの話を聞きながらマージのお母様が教えてくれました。
お父様は「社交界デビューのパーティ」の儀式の順番を書いた紙を見ながら何度かマージと緊張して練習を繰り返してました。
やがて当日になりマージが用意してくれた豪華な馬車でパーティ会場に行きました。会場は色々な馬車がひしめき合ってましたがマージのホテルからも会場の運営のお手伝いとして何人かを出してましたので其の中の一人がクレア達が乗っていた馬車を見つけてとても良い馬車に馬車を案内してくれたのですぐに会場に入れました。
会場では付いた順番に番号札が出て待合室で待っていると其の番号を呼ばれて大きな階段を更に上がると大きな扉が開いて会場に入ります。
会場には番号順に最初のダンスの相手が並んで待っていて二階席からも白いタキシードを着た公爵子息のイドエルが目立っていて誰がダンスを踊るのかと大勢の人が注目していました。
お父様の腕にリードされながらクレアが其のイドエルの前に立つと少し場内があの子は誰?と言う様にざわつきました。
殆どの人が子爵令嬢が通っている学校の生徒の誰かだと予測して知った顔ぶれの誰が踊るのかと見て居たら全く見知らぬ女の子が前に立ったので驚きの表情を多くの人がしました。そんな中これがクレアとの二度目の再会になるイドエルはお父様からクレアを託されるとにっこりと笑ってクレアの手を取りました。
クレアも今度はイドエルの顔を見て教えられたとおりに優雅な手つきでイドエルの手の上に自分の手を添えました。
やがて二人はゆっくりと歩くとダンスを踊る場所に移動して行きました。
今年の「社交界デビュー」の全員がそろうとダンスの音楽が始まりました。イドエルのリードでクレアは軽やかにダンスを踊り始めました。イドエルはクレアがダンスが踊れる様に成った事を悟るとターンを繰り返しました。クレアは其れに合わせて軽やかにステップを踏んで二人は中心で華やかに踊って見せて周りを魅了しました。
やがてダンスの音楽が一度止まり多くの人がそぞろに色々な席に散らばりました。
イドエルは直ぐに知った顔の大人達に呼ばれて戦争の成り行きについての話の和に加わりました。
クレアはお父様の座っている椅子の近くに立ってマージのホテルから手伝いに駆り出されたボーイが勧めた飲み物を飲んで乾いた喉を癒しました。
早速子爵令嬢学校仲間だった女子の集団がクレアの品定めを始めました。確かにドレスはモニークの店の最高級品だけど頭の髪飾りは田舎の出だと一人が推理してクレアに出身はどこかと声をかけてきました。
クレアはコウアニ地方から来たことを告げると数人で囲んで自分達と楽しくおしゃべりをしましょうとクレアを華やかなドレスの集団の集まっている所に促しました。
其処は子爵令嬢学校でも多くの女子生徒の取り囲みの中心に居た伯爵令嬢が仕切っている仲間の集まりでした。
クレアを連れて来た女のこの一人がクレアを顎で指しながら「この子はコウアニ地方から来たのですって」と馬鹿にした言い方をしました。「まあ、珍しい道理でお見掛けしない顔だと思っていたわ」「「あまり見かけない髪飾りで驚きましたの。田舎ではそう言うのが流行ってますの?なんて珍しい形です事?」「何で出来てますの?雑草がモチーフ?」と色々言ってきます。クレアは矢継ぎ早の質問にドギマギしながらマージのお母様が行っていた対処方法を頭の中で色々思い出そうとしてますがなかなか思いつきません。
今まで味わった事のない冷たい汗と孤独感をクレアは感じながら落ち着け落ち着けと自分に言い聞かせながらマージのお母さんの言葉一つ一つを思い出そうとしました。常にほほえみを絶やさず、だがへらへらと愛想笑いはだめ、姿勢は何時もピンとしている。やがてモニークの洋品店の服は初めて来たのかと言い出した。「洋品店は此の店以外は入った事が無いので正直に後はどんな店があるのか存じません。ごめんなさい」と言ってからしまったと思った。簡単に誤ってはだめだと言われていた。後は矢継ぎ早に誤らされるような事が続くと言われていたのだ。「商店会のパーティに呼ばれた時も此の店からの招待だったので他の店には行きづらいと言うか解らないと言うか・・・」と言うとあのパーティに招待される程の家柄なのかと誤解したのか一瞬だが空気が変わりました。マージのお母様から商店会のパーティに呼ばれた事は強いカードになるから話が洋服に触れた時は入れる事とアドバイズを受けて居ました。
誰か其の中心になっている聞き覚えのある伯爵令嬢の名字を呼んだ時やっとクレアは糸口を見つけて其の伯爵家の「バラ園」の素晴らしさを母に聞いていた事を言えました。「祖母のバラ園を御存じなの!?」と言うので「母が子供の頃ご招待を受けたそうで其のすばらしさを時々懐かしそうに話してくれましたの。そして嫁ぎ先に先祖代々引き継いだ特別な庭があって何時管理を引き継がされても出来るようにと私も専用の庭を貰って花を植えてましたの」「バラを植えていたの?」と彼女が話に乗ってきたので良かったマージのお母様が教えてくれた貴族上流社会の通例の話題の一つが出来たと思い此の話題は上流社会になればなるほど通用すると言う事が本当だと思いました。