Nicotto Town



南の魔女クレア20


クレアも足がふらついているような気が何と無くします。
ガサガサと音がして二人は突然顔に光を当てられました。「酒くせぇ~」と陰になって良く見えない誰かが言いました。「クレアじゃないか!こんな所で何をしてるんだ?」ダルニの声でした。
ボルアートとダルニはパーティの後の時間の今日の警邏当番でした。パーティ会場から少し離れた演習場の近くでお菓子の食べ後の紙屑をたどって来てクレアたちを見つけた所でした。

クレアとモニークはかなり歩いたつもりでもガレットと言うお菓子に一つなら少量の香り付けラム酒でも其れを大量に食べると結構な量になって酔っぱらっていたのです。
ダルニが直ぐに馬を二頭持って来てそれぞれに二人を乗せるとボルアートはクレアの乗せた馬にダルニはモニークを乗せた馬に乗ると二人を学校まで送ってくれました。
馬に揺られながらクレアはダルニに卒業したら其の後どうするのか聞きました。ボルアートは昨年お父様を失くされてお兄様が今領主をなさっているので自分はダルニのお父様のコネで警邏隊に入る事が決まったと教えてくれました。
モニークは送ってくれた親切に感激して二人とクレアをモニークの店の御上得意様を招待するある意味トウニでも有名なパーティでした。
トウニの大きな商店が集まって商店会を作っていてそれぞれが推薦する上得意の人達を招待するパーティですから此の国の実質の大金持ちが一年に一度顔を合わせると言う事になり其れは華やかなパーティで其処に行ける事はダルニは一生無いだろうと思われるパーティに招待すると言うのです。ダルニは酔っ払いの言っている事だろうとなだめる様に感謝の言葉を言いました。

其の後のボルアートとダルニは最悪でした。一枚でも菓子の紙屑が演習場に残っていれば持ち物検査が始まり「あんなものとかこんなもの」とかが没収されるのです。
朝までかかって思いつく所は総て回って一枚でも菓子の紙屑が残ってないかを確認しました。

クレアは学校を1番で卒業した特別な証書と士官学校からの招待状をもって意気揚々と家に帰りました。
お母様はとても喜んでくれました。

クレアは家に帰ってからまた「クレアの庭」の手入れを始めて元の生活に戻りました。お母様は夕食に出る事は無いのですが其れでもクレアが一人加わるだけで夕食が明るくなったようで館全体が明るくなりました。
クレアの事がきっかけでピェールお兄様とウィルお兄様が其れまで親交が無かった公爵家のあの白いタキシードの紳士や青年とのつながりが出来て何かとトウニに呼ばれる事もあり更にマジーのホテルはトウニで一位二位を争う立派なホテルだったので二人が呼び出されてパーティに招待された時に其処に泊まる事でも二人の評価が上がりました。

更にクレアの中が良かったモニークがトウニで一番とされる洋品店の娘で其の豪華なドレスを着た娘と士官学校の卒業パーティ会場の真ん中でダンスを踊ったダルニが此の国の警邏隊の一番トップである警邏隊庁長官と言う大臣である事も解り其れらの繋がりはリヤド農場の評価を上げたのでお父様はすっかり機嫌が良くなっていました。

お母様の具合がいよいよ悪くなったある日お母様はお父様と弁護士を呼んでお父様に遺言の書き換えを頼みました。お父様はお母さまの言ったとおりにご自分の遺言を書き替えました。
其の内容は兄弟姉妹3人が3等分にお父様の財産を別けるという事とお母さまの宝石は総てクレアにと言う物でした。ピエールお兄様は其れだとクレアが結婚した相手にリヤド農場の3分の一が其の男の物になると反対しましたがお母様がなくなった後に書き換えれば良いと言うので其れを聞いて安心しました。
勿論お父様もお母様がなくなった後にクレアを粗荒に扱うつもりはありませんでした。既にクレアの存在がトウニの上級社会では名が知れてしまってました。
更にリヤド農場が資産家である事も其れまで田舎の大きな農場と言う評価から変わっていました。
そろそろ地方からも貴族議員が一人ぐらいいても良いのではと言う話もちらほら出て其の中にリヤド農場の名も出ているとの噂もお父様の耳に入ってお父様も農場の後を継ぐピェールお兄様も悪きはしませんでした。

そんな中お母様がまるで細々と火をともしていた灯が自然と消える様に静かに息を引き取りました。
一番悲しんでショックを受けたのはクレアでした。クレアは泣き崩れて憔悴しきって夕食にも降りて来なくなりみんなを心配させました。
クレアは部屋に閉じこもって「お母様との思いで」と言う名の日記帳を作って其れを書いては読み返して泣いて過ごす日が続いてました。
其れでも庭の手入れはしていたので其処にお父様が来て何かと話しかけて次第にクレアの心も開いて行きました。
庭師のモーグさんも畑に出る事を許されたクレアに雑木林の手入れを手伝わせて暖炉の火付けの柴の借り方や細い幹を斧で切って薪を作る事で雑木林の手入れと薪が出来て一石二鳥だと教えて男の人からすれば簡単な事でも汗をかく仕事で気が紛れる事を教えてくれました。

お母様がなくなってテーラーさんが家に来る事は禁止されてテーラーさんのお店に行く事も禁止された事でクレアの喪服も急遽トウニにあるモニークの店で購入されて葬儀の日にやっと間に合うと言う状態でしたが此れがクレアを外に連れ出すきっかけに成りました。
其の後もクレアの洋服はお父様がトウニに用事がある時にクレアを一緒につれて行ってモニークの店で洋服を揃えました。
簡単な洋服はモニークの店で布地を買ってきてクレア自身が自分で縫いました。
庭仕事の服も部屋着もクレアが自分自身で買って来た布地で作るのでテーラーさんのお店に行かなくても十分に足りました。
次第にクレアも庭仕事と縫子さんと一緒に家のナプキンやテーブルクロス作りを手伝ったり其の時に料理場にも出入りして料理人から簡単な料理を習ったりして過ごしている内に明るさを取り戻して行きました。

お父様はお母さま程半地下の使用人の仕事場に出入りする事には厳しく否定しなかったのでクレアは今度は次第に料理に興味を持ちました。
更にクレアを元気付けようとお父様はクレアを乗せてジルドでの商人とのやり取りの場にも連れて行ったので傍で商人とお父様の交渉をするのを横で見て居ました。
熾烈なやり取りになるとお父様もかなり商人に脅し文句や張ったりを行ったりする駆け引きをワクワクしながら見て居ました。
更に野菜の見分け方や家の家具、暖炉の薪の値段の交渉までお父様がやっている事に驚きました。
決して使用人任せにしないで館のあらゆる事にお父様は目を配っていました。

リヤド農場への見回りも日にちや曜日を決めないで抜き打ちで小作人の農場を見て回って細かく気配りをしてどの程度の利益を得ているかをチェックしていました。此れが其の歳の借地料を決めるの交渉に役に立つのだとお父様は言ってピェールお兄様やウィルお兄様と農場に出かけて手分けして農場を回っていて夕食時に其々の回って来た所の話をして今後の方針を相談してました。
クレアにもやっと夕食時に何を話しているのかが解り3人の会話に興味を持って耳を傾ける様になりました。
積極的に話に加わる事は無かったのですが聞いているだけで夕食時も楽しく過ごせました。





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