仮想劇場『否応なしに生きていくでしょ?』
- カテゴリ:自作小説
- 2021/11/20 10:04:38
「死にたい」と呟いて川面を見つめて、そっと目を閉じ悔し涙を落とした。
川底から伸びる無数の慈悲深い負け組の手に身を委ね、キミは一度だけ空を見上げそのままの姿勢でダイブした。
「なんのために」と僕が言った。「誰の所為で」とも確かに言った。
誰も答えてはくれなかったが不満に届くほど辛辣にもなれない。
僕は今でも生き残った側の人間で、キミのように真っすぐにはなれなかった。
彼女が起こした微かな波紋に気付く者などこの町には居ない。誰もかれもが利己的な理由で息をしているからだ。他人の悲劇に耳を貸すとしてもそれは優しさからじゃない。おそらくは自己満足のためのエネルギー。どこまでも軽薄、そして身勝手。
ハレンチなまでに無責任をひけらかすバカと、それを受け入れることで承認欲求を満たすバカと、すべて見て見ぬフリをして唇を歪めたバカだけの世界。
いくら他人に無関心であっても心は着実に病んでいく。
真っすぐに生きたキミの決断は確かに正しい。
それでも僕はまた同じ質問をするだろう。
「なんのために」
そして
「誰の所為で」
キミも最期まで答えてはくれなかった。
だから僕は生きている。
この町で、否応なしに居直りながらね。
Radwimps・・・今度聴いてみます。
曲をつけるには語呂が悪いかなと思うけど、歌になるのなら是非僕も聴いてみたいです。