Nicotto Town



南の魔女クレア5


マージさんの縁談の相手との顔合わせにはお父様と執事長のガゼルと弁護士の人が付いて行った。

ジルドまでついて行って其処で最近商売で大成功をした結婚相手となる家のご家族と会った。
相手方はマージの美しい金髪と端正な顔つきと背の高さや洗練された動作にお父様がみても大層喜んでいる事が見て取れたそうだ。
セリスやモニリスがお父様やお母様にマージさんが結婚して此の家を出て行くのを反対してくれると思っていたのだが誰も反対せず寧ろ大賛成でみんなが喜んでいるのに驚いた。
クレアだけがマージさんが館を離れる時に嫌だと言って泣いてぐずった。
モニリスとセリスがマージを引き留めようと走り出そうとするのを察して必死に止めた。
お父様と館の一番立派な2頭立ての馬車に乗ってお父様とお父様が用意したマージさん付きの使用人と一緒にジルドまで行って其処でお父様と別れて相手側が用意した立派な二頭立ての馬車に乗り換えてトウニにある館の修復が終わるまで過ごす家に行くそうだ。
別れる時にとても丁寧にお父様に感謝の言葉を言ってお父様はマージさんの人格がすくれている事につくづく感心をしたそうだ。
生まれついた良家の血筋とはこういう物なのだと思ったとお母様に言って其の言葉がお母様の自尊心をくすぐってお父様とお母さまは仲直りをしたとセリスは教えてくれた。
其れがどういう意味かはクレアには解らなかったが館の雰囲気が何と無く変わったのは感じた。
お母様は明るく元気になられて夕食に降りて来られる様になってまた4人での夕食になりウィルとお父様も楽しそうだった。
お母様がげんきになるとまたテーラーさん(其れは職業の呼び名で本当の名前は別にあったのだがお母様はそう呼んでいる事は其の頃にクレアは解った)を呼びつけてお母様とクレアの新しい服を作る事が多くなった。
クレアは採寸をされて何着かのアイディアをデザイナーさんが絵をかいて出来上がったのを後日持って来て何度か服をとっかえひっかえ着せられて其の内の何着かをその後着せられた。
残った服はどうするのだろうとモニリスに聞くとジルドにあるテーラーさんのお店のショーウィンドーに飾られて売られるそうだ。
クレアはその服を着てないとお母様の部屋にいけないので土で洋服が汚れない様に庭の作業の時は上からすっぽりつつむエプロンをセリスとモニリスと半地下にある縫子さんがいる作業場で作って貰って其れを来て土堀も庭師に習って全部やって綺麗に咲いた花を切り取るときだけは其のドレスのままでやって直ぐにお母様の部屋に行ってモニリスとセリスとお母さま付きのメイドで飾り付けをした。
使用人たちの噂だとお母様のお茶をする部屋は美しい花で飾られて偶にお母様を訪ねて来られるジルドでご商売をして立派な館を持っている奥様達に歯の浮くようなお世辞を言われているそうだ。
クレアが10歳になってしばらくするとピーターお兄様が上級士官学校からやっとお帰りになった。
何でも首席で卒業されたが其の後の色々な行事にピーターお兄様がご出席なさるようにと貴族のご婦人たちの強い要望に色々な方がご期待に添うようにピーターお兄様に色々な役職を付けて引き留めてコウアニ地方にお帰りになられない様になさっているのだと使用人たちが噂して其れでご卒業なさってもお帰りになられなかったのだそうだ。
そしてピーターお兄様がお帰りになると同じころにウィルがバスタ地方にある士官学校に入学した。
士官学校は土日はお帰りになる事が出来るのでお母さまの強い要望で土曜日には帰って来て夕食を家族で取って日曜日にはお帰りになると言う生活を最初の頃はしていた。
だから土曜日の夕食はとても豪華でにぎやかになった。
お母様は何時も綺麗なドレスを夕食の時に着るのだが土曜日は特にきれいなドレスを着て華やいでいた。
お父様はピーターお兄様をジルドでの製粉工場での交渉やトウニへの荷物の出荷の交渉とかトウニにもご一緒につれて行って値段の交渉などの時もお兄様を列席させたり弁護士事務所や税理士さんとの話など商売の交渉の仕方などを教えた。
数か月後には経理をお兄様と話し合って帳簿を付けているのでお二人で事務部屋でお仕事をする事があり其れはクレア専用のお庭から見える窓の一つでもあったので庭仕事をしているクレアからお二人の姿が見えた。
お父様だけの時は気にはならなかったがピーターお兄様が其の部屋にいる時はなぜか其の窓に近い所で作業をする様になったクレアだった。

ある日クレアはクレアの庭以外の館の周りを見て回った。
そして名前の知らない蔦植物の蔓が館の壁にそって二階の窓の所まで伸びているのを見つけた。
業と伸ばしているのか自然と伸びたのを手入れしていないのか良く解らない。
庭師のモーグさんに聞くと其処は最初の契約の手入れの中に入ってない所で其々の館には暗黙のルールがあって庭師といえども庭のどこでもいじって良いのないのだそうだ。
此処は入っては行けないとか手を付けては行けないと言う場所がある館もあって最初に其れを言い渡されると決して其処は手を付けてはだめなのだそうだ。
其れで此の荒れ放題の所が出来て蔓植物が壁を這って二階まで蔓を伸ばしているのかと納得しながらもクレアは気に入らなかった。
其れから数日クレアはイライラしていた。
今までこんな経験はなかった様に思う。
格子てなかなか眠れないのも余程あの館の中で荒れた場所が気に入らないのだと思った。
せめてあの蔓だけでも壁から引きはがしたいと思う気持ちが日に日に強くなって更に何か解らない腹正しい感情がわいてきて急に本を投げつけたくなった。
こんな感情になるのもあの得体のしれない館の壁に張り付いている蔓のせいだとクレアは思った。
もう我慢の限界だとクレアは思った。
遂にクレアは物置から梯子を出して其の場所に運んだ。
そして鎌を持つと其の梯子を上り始めた。
そして窓の桟にまとわりついている蔓を片手で何とか引っ張ろうとした。
だが蔓はびくともしない。
其れでも何とかひっぱって少し手繰り寄せた所で「何をしているんですか!クレアお嬢様」と下の方で声がした。
此の大変な時に余計な声をかけないで欲しいとクレアはイラつきながら思った。
返事が出来る余裕は今のクレアにはない。
片方は蔓を引っ張っているがもう片方の手は鎌を持ったまま梯子を掴んでいるのだ。
何とかこの蔓をもう少し手繰り寄せて其の手ではしごを掴んで今度は鎌を持った手を梯子から外して蔓を切らなければならない。
其の内した方が何やら騒がしいが其れを気にしている余裕は無い。
其の内誰かが梯子を上ってきていた。
ふと下を見るとモーグさんだった。
更に改めて下を見ると見た事のない様な使用人も居れば顔なじみの使用人もいる。
モーグさんがクレアの鎌をもっている手を掴んで鎌を取り上げようとしている。
「えっ!?」とクレアは思った途端にクレアはバランスを崩して梯子から足を踏み外した。
片方の鎌を持った手はモーグさんががっしりと捕まえているがもう片方ぶら下がっている状態である。
悲鳴や大声が下から上がった。
蔓はクレアが片方ぶら下がっても最初はびくともしなかったがクレアの重みで次第に壁からはがれて来た。そのたびに下の方で悲鳴が上がる。
クレアは何とか片方の足を梯子に付けたもう片方は壁を伝っている蔓の隙間に入れた。
とりあえずモーグさんは鎌をクレアから取り上げる事に成功した。













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