Nicotto Town



南の魔女クレア6


お父様を怒鳴りつけてお母様はすっきりしたのが少し元気になられた様に見えたが其れでもがんとして夕食には降りて来なかった。

その代わりクレアとモニリスはお母さまの部屋に午後のお茶の時間に呼ばれてお茶の時間のマナーを教わりながらお母様の若い頃の話を聞いた。
お母様はお母さまのクレアからするとお婆様の若い頃の貴族の華やかな社交界の話をとても楽しそうにお話になりながら通りすがりのあいさつの仕方やドレスの裾の持ち上げ方。目上の人のあいさつの仕方も相手の身分によって違う事も身振り手振りで教えてくれた。
流石に王族へや公爵さまへのあいさつの仕方はひれ伏すと言う一番深いあいさつの仕方で其の時のドレスの扱いは慣れてないと出来ないそうでお母様も一度何かそう言う機会が在ったらと教えて頂いたそうだが実際には一度もそんな機会はなかったわと笑いながら行ったが其れでもこんな感じよと実際にやって見せてくれた。
クレアもモニリスも自分達にもそんな機会は無いだろうと思いながらも真似をしてやってみてそんなに腰を下げて頭も其処までさげると長時間其のままで居るとぐわいが悪くなって吐く人がいっぱい出るんじゃないかと心配になった。
後で其の事をお母様に言うとお母様は大笑いをなさって其れをじっと耐える事が王様への忠義だと教えられたけど自分の習った時に思ったと言った。
3人は可笑しくて本当に心から笑った。
此の週に何回かのお母様とクレアのお茶の時間を持つ事によってまたお母様が明るくなったので館全体が明るくなりクレアも食欲が出てきてまた元のほっぺぷっくりさんに戻った。
秋の収穫時期になってクレアはクレアが植えたカブの収穫をしても良いかとお母さまに許可をもらった。
お母様は其の時の一度だけなら畑に行って良いと言う許可をくれた。
クレアはセリスとモニリスの相談で決めた汚れても良い服と其の日の為に急遽買い揃えらえた赤い長靴を履いて畑に向かった。
他の畑はきれいに作物が並んで実っているのにクレアの畑は草がぼうぼうで枯葉もつもりどこに何が在るかも解らない状態だった。
其れでもクレアは土を掘って片っ端からカブをさがした。
何とか見つかったどの株も良くてクレアの親指位の大きさでほとんどは其の大きさも無かった。
其れでもやっと二つだけ何とか食べられそうなカブをクレアの畑のほとんどを掘り起こして見つける事が出来た。
何時間もすっかり硬くなった土を掘り起こす作業を夢中になってやっている姿をお父様は時々じっと見つめていて此の子は本当は外で元気に走り回って育ちたかったのではないかと自分達が引き取った事が此の子にとって幸せだったのかと思い始めていた。
だが其れをお母様に言えばまた言い争いになるだろう。
此処はクレアに犠牲になって貰って貴族令嬢として貴族の社交界に出してどこかの爵位の付いた家へ嫁がせる事になって其処でまた籠の中の着飾った鳥の様な生活をするより無いのだと思った。
クレアが何とか食べれそうな二つのカブはさっそく料理長の所に持って行かれて其の夜の夕食の料理の材料になる事になった。
お母様のクレアのカブが夕食の料理になると言うので特別にみんなと夕食を取る事になった。
4人が同じテーブルに着くのは本当に久しぶりの事でワクワクとまっていると野菜がいっぱい入ったスープが運ばれて来た。
お母様もお父様もウィルも色々な野菜をフォークでどかしながらクレアが作った野菜はどれかと探した。
遂にお母様が「クレアが作った野菜はどれなの?」とついて来た料理長に言った。
「中にカブが半分になったのがございます。其れでございます。」
クレアはとっさに顔を赤くして「あんなに種をうえたのに二つしか食べれるのが出来なかったの」言った。
ウィルがすかさず「クレアは草取りも株分けもしないで種を植えただけでほったらかして置くからそうなるんだよ」と言った。
クレアは畑に行く事を禁止されていたのだ草むしりも株分けも出来るわけがない。
クレアは涙目になってうつむいた。お父様はカブをフォークに刺して口に入れると此のカブはおいしいと言ってくれた。
お母様もとてもおいしいわと言ってくれた。
料理長が特に硬いカブを煮込んで更に味が染みる様に他とは別に煮込んで最後に他のスープの野菜と一緒に煮込んでカブが柔らかく味もしみておいしくなるようにしてくれたのだ。
落ち込んでいるクレアにウィルが言った。
「そうだ、クレアは庭に花を植えれば良いんだよ。庭しか出れないのなら庭師に花の植え方を習って花を育てれば良いじゃないか。」
お母様が「そんな土仕事なんて!」と厳しい口調で言った。
其の様子を見ていたマージが「高貴な貴族の御婦人方はご自分の庭をお持ちでございます」と言った。
お母様は「そうだけど・・・。」と言うと黙ってしまった。確かにそうではあった。
更にマージが「此のお館の庭師は大変優れているとお見受けいたしました。クレア様がご結婚なさっても立派にご自分の庭の指図と手入れが出来るようになるにはお小さい時からの其のお館の御領主夫人の裁量かと花に詳しいのも貴族のご婦人たちの教養を披露する場ですから」と言うとお母様は直ぐに「其れは必要ですわね。」と言ってあっさりと賛成してくれた。
クレアは自分の庭が出来る事に両手を頬に当てて目をキラキラさせて喜んだ。
ウィルが得意そうに其れでもいたずらっぽい目をしてクレアを見た。
ウィルなりにクレアを心配していたのだ。
そしてマージの機転が其れを後押しした。
早速来春から始める事になりお父様に庭師と相談して場所を決めて貰う事になった。
クレアは冬の間にモニリスとアギルお兄様の本棚から植物に関係する本を十数冊を持って来て二人で植物の種類や特徴や育成の仕方を学んだ。
其の時に毒をもつ植物やハーブの種類や効能も勉強した。
其れが後に思わぬところで役に立つ事になった。
春になると早速クレアは「クレアの庭」を貰った。
庭師のモーグさんは今は落ちぶれて庭師を雇う事が出来なくなった伯爵家で広い庭の長い事働いていた経験があり其の腕を此の広い館の庭で庭に関心のない夫妻に代わって一手に引き受けて立派な庭を作り上げていた。
マージが此の家に来て一番驚いたのは其の手入れの行き届いた庭だった。
此処の庭師はかなりの腕の持ち主だとマージは庭師のモーグさんを認めて丁重な対応をしていた。
モーグさんもマージの立ち振る舞いに其れなりの家で働いた経験があるのか或いは何か訳ありなのかと見て丁重な対応をマージさんにしていた。
そんなモーグさんの推測が的中する事が起きた。
マージさんに縁談が持ち上がったのだ。
何と相手は商売が成功した大きな商人の家の娘でマージの実家のタルトウール家の館と土地は既に人手に渡って家が建っていて元の土地の半分しか買う事ができなかったが屋敷と土地の半分は購入して其の館は子爵の屋敷で何と其の息子がどこかで生きていると知って探していたのだ。
其の生きている子爵家の息子と自分の娘が結婚すれば男爵の爵位を高額で買うよりも手っ取り早く子爵の爵位が自分の娘に付くのだ。
子爵はもともと生まれが貴族と言う事になり其の爵位は生涯消える事が無い。
其処で買ったマージの元実家の館を殆ど依然とそん色ない様に修復して母親も引き取って其の館で暮らすと言う条件で自分の娘との縁談を持ってきたのだ。





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