秘密基地異時空間・日本 カーレーサーごっこ前編
- カテゴリ:自作小説
- 2021/10/16 13:30:12
日記で触れた部分のエピを転載してみます。
一応、「秘密基地異時空間・日本!」全体は
https://novelup.plus/story/674593987
に掲載しています。
カーレーサーごっこは、まだ書いてる途中です。書きあがったらアップします。
カーレーサーごっこ(前編)
「ウエルカム スペースタイムジャパン ゲートイン!」
小鳥遊管理官《たかなしかんりかん》に迎えられ、二人は異時空間《いじくうかん》にやってきた。
瀬名《せな》と幕太《まくた》は何もない異時空間を前に、声を重ねた。
「じゃ、レーシングスーツ」
「チェンジ!」
赤を基調《きちょう》に黒と白の差し色のレーシングスーツとフルフェイスのヘルメット。二人はカーレーサーになった互いを見た。
「かっこいいわね!」
ヘルメットに収まらない長い髪をサラサラと揺らしながら、瀬名は腕を組んでポーズを決める。
「まじ、かっこいい!」
同意しながら幕太も瀬名の横で腕を組んで、右足を一歩前に出して、同様にポーズを決めた。
フルフェイスのヘルメットのせいで顔の表情はわかりにくいが、声が弾んで気持ちは二人ともダダ洩《も》れである。
立ち姿のポーズ決めたところで、幕太は、瀬名に促《うなが》した。
「レーシングカーのすごいアイディアあるって言ってたよね?」
瀬名はヘルメットをかぶった頭をブンブン振った。
「ふっふっふ、発表するね。なんと操縦席《そうじゅうせき》が二つあるの」
幕太は一瞬、理解が追い付かなかった。
「操縦席が、二つ!?」
瀬名の驚愕《きょうがく》の発表に呼応して、赤をベースに黒と白のラインがかっこいいレーシングマシンが現れた。
操縦席が後部座席《こうぶざせき》にもついている、|二人乗り《ふたりのり》の車だったからだ。
「二人の運転操作《うんてんそうさ》が一致しないと、走行すら難しいのよ」
瀬名は難しいことを誇《ほこ》って、満足気《とくいげ》にマシンを見ているが、幕太は懸念を口にだした。
「難しいのは嫌だなぁ、スピード感をひたすら楽しみたかったから」
幕太が絶賛《ぜっさん》すると信じていた瀬名は、想定外《そうていがい》の不満に、むっと言葉を返した。
「嫌なら帰ればいいじゃん」
険悪《けんあく》な空気が二人を包んだ。
二人は押し黙って一年間ほど、固まった。
「一年間、放置《ほうち》なんて……」
二人を入異時空《にゅういじくう》させた小鳥遊管理官は絶句する。が、日野管理官《ひのかんりかん》は、静かな|微笑み《ほほえみ》を口元に浮かべ、|穏やか《おだやか》に言った。
「異時空間だから、一年だろうが十年だろうが、大丈夫《だいじょうぶ》。納得すれば歩み寄って仲直りするから待てばいいんだよ。そのための異時空間なのだから」
一年が経過して、さすがに二人とも、黙りこくっているのが辛くなってきた。
「勝手に難《むずか》しくしたのは、ごめん。設計変更《せっけいへんこう》するから」
瀬名が、ヘルメットをとって、幕太に頭を下げた。ヘルメットを外した瀬名の長い髪が下に流れ落ちる。
「あ、いや、こっちこそ、瀬名ちゃんの設計に文句《もんく》言ってごめんなさい」
幕太もヘルメットをとると、頭を下げた。幕太の髪は短すぎるので、髪は流れ落ちなかったが。
二人は話し合った。操縦方法《そうじゅうほうほう》とその難易度《なんいど》、運転の分担《ぶんたん》。話し合うことで、イメージが固まり、そのイメージがレーシングカーに瞬時《しゅんじ》に反映されていった。
成長し変化を続けるレーシングカーに、二人はアイディアをどんどん詰め込んでいった。
「そろそろ走ろう?」
幕太が言うと、瀬名が嬉《うれ》しそうにうなずき、幕太に飛びついてきた。
「うわっ」
瀬名のからだを受け止めながら、幕太は焦《あせ》った。幕太の焦った声に瀬名も、はっとする。
「嬉しくて、つい……」
二人の間に再び微妙《びみょう》な感覚《かんかく》が漂い始めた。
(この気まずさ、何? あれ、顔が熱《あつ》い!)
(焦りすぎて心臓《しんぞう》がドキドキしている。これってもしかして?)
「これは? もしや恋《こい》の始まりでしょうか?」
小鳥遊管理官が、目をキラキラさせて日野管理官に顔を向けた。日野管理官は一瞬、目に感じた謎《なぞ》の眩《まぶ》しさを、瞬《まばた》きして払《はら》いのけた。
「小鳥遊管理官、首をつっこまないように。干渉《かんしょう》しないで見守ることに徹《てっ》してください」
「はい……」
小鳥遊管理官は少し俯《うつむ》きながら、日野管理官の指示《しじ》に従《したが》う。なぜか二人の間にも微妙な空気が漂《ただよ》った。
「コース! 走るコースはどうしたい?」
瀬名は妙な感覚を振り切って、幕太に相談を始めた。いきなりコースを出現させないように気を付けながら。
「スピードは楽しみたいな」
幕太が言うと、瀬名が答えた。
「直線コースを長くしよう。でもコーナリングも楽しみたいよね」
「うんうん」
「あ、富士《ふじ》スピードウエイがいいかも!」
瀬名が言うと、高速《こうそく》テクニカルコースとして定評《ていひょう》のある富士スピードウエイが、どかっと現れた。
「コースのどこか変えた方がいいかな?」
瀬名は尚《なお》もコースを改良する相談を、幕太に投げかけた。しかし、幕太は待ちきれなくなって叫んだ。
「運転しよう、走ろうよ!」
瀬名と幕太はヘルメットを再び装着し、親指《おやゆび》を立てて互いに確認すると、レーシングカーに乗り込んだ。
二人で話し合った結果、コックピット前方に瀬名、後方に幕太が滑《すべ》り込《こ》んだ。
「頭の中で考えていたのより狭《せま》い」
瀬名が小さな悲鳴《ひめい》をあげた。幕太は設計者でもそう思うのかと心の中で少し突っ込んだが黙っていた。
二人が同時に操作して、ついにエンジンが動き出した。車から伝わる振動《しんどう》と音に、気持ちがいよいよ盛り上がる。
「レディー……」
瀬名が言い、幕太が続けて叫んだ。
「ゴウッ!!」
(「カーレーサーごっこ」後編につづく)
鷹なし(鷹がいない)から、小鳥が遊べる らしい。そんな読み方、知らなかったです。
一年ほど前、ネットで小中学生の方が、ドラマごっこをネットでやってるのを眺めていて
「小鳥遊」さんの名前がめちゃ人気だったんです。これは何と呼ぶのかな、と調べたら
面白い成り立ちに出会えました♪
2020年から2021年、またこれから余波を引きずるであろう、この時代、
思いっきり遊ぶ、それが出来難い現実の中で、お話の中では楽しく遊びたいよね、そういう
のが書くきっかけでした。
作りたい気持ちは、トシrotさんの改装と似ているかもなぁとも思います
読んで楽しいなと思ってもらえたら、本望です!
トシrotさんの改装も楽しみです。
二人でなんか作っていくお話になるんですね。こういうのリアでもすっごく楽しいですからね。二人乗りの戦闘機を塑像中です。