Nicotto Town


日記ダイアリー徒然草


卒業(後編)

桜並木を歩いていると、誰かに呼ばれたような気がした。
振り返る。空耳?
けれどそこには、幽霊でも何もなく、確かに見知った顔があった。
「高木……」
高木悠貴。
クラスメイトの男子で、人気者。
私は結構仲がいい(と、思ってる)
もしかしたら、もしかしたら私はコイツのことが好きなのかもしれない。
それにしても、彼の両親は、なんたって悠貴なんて名前にしたのだろうか。
たかき ゆうき。
あー、どうでもいい。
「偶然。花見?」
高木に聞かれて、私はうなづいた。
「まぁね。咲いてなかったけど」
そういうと、高木はそうだな、といった。
肌寒い季節。桜の開花にはまだ早い。
高木は気づいているのだろうか。
私が桜なんか見ていないことを。
「あのさー。山崎って、なんで桜井とけんかしてるわけ?」
いきなりとんでもないことを聞かれて、私は息を吸い込んだ。
「は?」
「いや、だってさ。お前らっていっつも仲良く一緒に居るじゃん?なんでだろ、ってさ」
高木はさりげなく、聞いてきた。
本当に心配そうに聞くから、私はなんて答えればいいのか分からなかった。
『そんなのあんたには関係ないじゃん』っていうべきか・
『私は本当は仲直りしたいの』とか。
でも私は、どちらも選ばなかった。
「けんかなんかしてない」
「え?」
私はもう一度、さっきより少し大きい声で言った。
「けんかなんかしてない。私が一方的に怒ってる、だけ」
私は負けず嫌い。自分が戸惑ってることなんか絶対に言わない。
そう、仲だって良かった。
なんで、あんなこと言っちゃったんだろう?
私は、仲良くしたかったのに。
でも、怒ってるって言うのも本当なんだ。
加奈が、あんな言い方をしたのを。
私はまだ許せないでいる。
それさえ、許せれば、謝れるのかもしれない。
卒業式の前、四角五個分のうちに。
「そうおもってるんだ」
高木はそういうと、桜の木を見上げた。
「でもさ」
「?」
高木が、また口を開いた。
「桜井、すごく応援してたんだ。お前が受かるの」
そんなの分かってる、応援してたのぐらい分かってるから。
じゃあ、私は、何が分からないの?
「でも、その反面さ。桜井は、学校が離れるのが寂しいっていってた。お前と、離れるのが」
「…何でそんなこと知ってんの?」
「この前、放課後に山崎が話してたから…。何であんなこと言っちゃったんだろうとか。どうしよう、とか」
高木は話し終えると、じゃあそういうことだから、と笑っていった。
高木の後姿を、歩いていく後姿を見ながら、私は心に誓った。
家に早く帰ろう。加奈に電話をしよう。
謝って、それから聞くんだ。
「加奈、中学に入ったら、何の部活に入る?」

桜並木。開花まではあと何日?
四角何個分だろうか?
五個分のうちに咲くことを祈ろう。
ひらりひらりと舞う花びら。
そうしたらどんなに寒くても、暖かくなるだろう。
加奈と一緒に、卒業証書を持って、写真でも撮ってみようか?
桜並木の下、で。

アバター
2009/10/18 12:55
どうもありがとうございます!
そういってもらえると嬉しいですww
アバター
2009/10/18 12:14
文章の構成から何までとても上手ですね!尊敬!!私もこんなふうに、書けたらいいのになぁ・・・



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